のすたる爺や

文明の果てなる地からのメッセージ

土用と鰻

2014年06月03日 | 日記・エッセイ・コラム

 私はウナギを食べないのであまり興味がなかったのですが、スパーにウナギのかば焼きが並び始めました。この夏の土用丑の日は7月29日、まだ二か月近く先ですが、これほど急に暑くなるとそんな気分にもなるのでしょうか?

 最近は手ごろな値段でてに入るようになった鰻ですが、安価なものはほとんど中国から来ています。昭和の終わりごろの輸入養殖鰻は台湾から来ていたものですが、NICS・NIESなどと呼ばれた東アジアの新興工業国(地域)の仲間入りをした台湾は、鰻の養殖を大陸のほうに移転し始めます。

 

 気候変動でウナギの稚魚の水揚げが減っている問題が起きていますが、中国で養殖されているウナギはヨーロッパ品種のウナギだそうで、日本の品種のウナギは環境的に大陸では育ちにくいみたいです。

 

 安価と、高級品の中間に位置してしまい、いつのまにか台湾の鰻養殖は衰退し、大陸ものが大手を振ってまかり通っています。日本で安売りされている鰻の蒲焼は中国で加工までされてきたものです。有名な浜松の鰻など一般庶民にはなかなか手が出ないことでしょうが、工業より早く中国の脅威にさらされた業種です。

 

 中国でも鰻を食べますが、日本人ほど好んで食べませんし、独特の臭みがあるので調理も難しいため普及はしませんでした。日本のように鰻を開いて焼く調理方法がなく、例のごとくあの大きな四角い庖丁でぶつ切りにして調理するのが中国流です。

 

 蒲焼のタレは偉大なる日本の発明ですが、そのうち「ウリナラが」なんて言い出す国が出てきそうです。

 

 土用丑の日に鰻を食べるというのも日本独自の風習で、巷に知れ渡っている話では、江戸時代の天保の時代に鰻料理屋の主がエレキテルで有名な平賀源内に「どうしたら鰻が売れるでしょうか?」と相談したところ「土用の丑の日にウナギを食べると薬になります」と看板を出しましょうとアドバイスされたそうです。

 

 物知りで有名な源内先生が言うならと庶民がこぞって鰻を食べたそうですが、今で言うならコピーライター。また、一歩間違えば薬事法に抵触するかもしれません。うなぎの主成分は、ビタミンA、B1、B2だそうで、その他にも、良質のたんぱく質、脂肪、カルシウム、リン、鉄、ナトリウムなどを含んでいます。暑さで体力を消耗しやすい夏にうなぎを食べるというのは、栄養学的にも理にかなっていることになりますから、厚生労働省も大目に見てくれるでしょうか?

 

 現代ならバレンタインデーにチョコレートのように、販売戦略が庶民に受け入れられた前例でしょう。

 

 丑の日には「う」のつく食べ物を食べると縁起が良いといういわれがあったようで、「梅」や「瓜」などを食べる風習が当時の庶民にはあったようです。そこに「鰻」ですから上手くはまりました。

 

 土用の丑の日といいますが、実は年に4回あります。春夏秋冬それぞれの季節の最後の18-19日を土用といい、土用の明けの次の日はそれぞれ立夏、立秋、立冬、立春になります。丑の日は12日に一度来るので、各季節に土用丑の日はあるので、鰻を食べるのは夏の土用丑の日ということになります。

 

 中国の五行思想で春夏秋冬の”四季”に木・火・土・金・水の“五行”を当てはめたかったようですが、数理的に無理があるために各季節の変わり目に土用を入れました。

 

 光があれば陰がある陰陽と五行の組み合わせでさまざまな「易」に用いられてきました。私たちが良く出会う言葉にもここから用いられたものがあります。

 

季節 土用
五行
(青春) (朱夏) 黄色 (白秋)
方角 西 中央
(青龍) 孔雀(朱雀) 黄帝(黄龍) (白虎) (玄武)
歳星 螢惑 填星 太白 辰星
五味 酸っぱい 苦い 甘い 辛い しょっぱい
五臓 肝臓 心臓 脾臓 腎臓

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