パウダースノーを巻き上げて滑走する。スキーマニアにはたまらない快感でしょうが、実はこうした条件に会う気象や雪の状態はほんの僅かで、踏まれていない雪の上など簡単にスキーで滑れるものではありません。
標高の高い低温の雪は確かに軽い粉雪ですが、軽すぎでスキーが埋まります。通常新雪の滑り方はやや後方に体重をかけてスキーが浮き上がって来るのを待ってターンに入りますが、沈む一方で浮き上がってこない。動けるのはひざの高さくらいが限界で、それ以上埋まると簡単には抜け出せない。周りの雪を手で撥ね退けてスキーをはずしたとたん、ズボリと埋まり背丈より高い雪の壁が目の前に広がります。
かっこよく新雪の中に飛び込んだものの、このまま胸の高さまで埋まり、身動きが取れなくなる直前の勇姿。
圧雪されていてスキーで滑れればものの2-30秒で滑り降りることができる最大斜度33度の急傾斜も、背丈ほどある粉雪の中をラッセルして降りると30分かかります。しかも、雪崩の危険を察知しながら。
立春を過ぎて雪が閉まってこなければ快適な山スキーには早い。
気の根元に首まで埋まっている後続者。私がラッセルした後を滑ってくれば多少は違ったのでしょうが、一歩新雪の中に踏み入れた途端に囚われの身になっていました。
周囲一面真っ白で登っているのか下っているのかもわからない。
深い雪に埋まらないように、スキーはリュックにくくりつけ、両手にカンジキを持って、ヒザから足首を使って四足になって惨めな姿で雪の中を下ってきました。