恵子は、鉄一の急死で、もめた事もあり、純子と話し合い、製薬会社の多くは幸之助と知子が相続し、純子は一部を持ち、逆に紡績、商会、鉄鋼は純子がかなりの出資名義を相続していた。安倍不動産は三分の一つづ分けた。料理店は、鉄一の部分も引き取っていたので純子と幸之助と知子が各店単位で相続するようになった。現金の多くは幸之助と知子が受け取っていた。純子は恵子が持っていた鉄平の郊外の屋敷と農園も相続した。安倍鉄鋼は、鉄一の死後、相続問題で、他の会社の名義を恵子や純子に書き換えて、安倍製薬がグループの中核になり、今度は安倍紡績もそれに加わる形になった。
純子は、休みをよく取るようになった。
洋介「純子、会社は忙しいのじゃないの。こんなに休み取って大丈夫か?」
純子「私も随分働いてきたし、みんなちゃんとやってるしね。それにもう私の会社というより、みんなの会社だ。みんながやっていく方が良いんだよ。」
洋介「私も真弓さんや妙子に任せる事が多いよ。妙子は、お前のように、やる事が好きだけど、外科医としては、今一番脂が乗っている所だろう。父がやりたがっていた手術も出来るようになった。」
純子「堅い竹内の家で、大丈夫かなと思っていたら、ついに諦められた。宏さんも忙しいのに、朝の光の中でやった。良かった。朝やるのも楽しいと言っているよ。」
洋介「でもここに良く来てるけど。」
純子「私は家にいる事が増えたし。私とは同類だから話しやすいんだよ。時々子どもと宏さんつれて、泊まり込むだろう。私、妙子と真弓さんで話すと、何でも言える。よそでこんな話できないと言ってるよ。」
洋介「あれは凄いね。私も近づきにくい。玲子や慶子は、お前や妙子みたいになると心配しているよ。」
純子「私と暮らして、不満だったの。」
洋介「そんな事はない。私は十分楽しんで来たよ。ただ子どもの前で、舐め方や舌の使い方だ、体位や腰の使い方なんか話している母親や祖母はいないよ。」
純子「良いじゃないの。妙子も真弓さんも医者なんだし、変な所で間違った事を知るよりも。」
洋介「美子さんや知子さんも来てるでしょう。幸之助くん、ぼやいていたよ。変な知恵つけるから、美子さんが迫るようになったと。」
純子「幸之助は努力が足りないよ。あれも仕事も。」
洋介「洋一はどうしてるの。あんまり家には、こないけど。」
純子「あの子は、私が苦手みたいだよ。仕事してる時の私は、話しやすいけど、家ではやりたいだけの馬鹿女の顔をしていると思ってるみたい。どちらも私なのに。ここの家に、京子さんつれてくると大変と逃げているのさ。仕事はちゃんとやっているようよ。鉄造さんや鉄二郎さんも、少し変わってきたし。」
洋介「洋一には、お前の裸をみせたから、怖がっているじゅないの。」
純子「それは妙子だよ。あいつ平気で、洋一や洋次郎の前でも、平気で裸になる女だから。着替えするのに、洋一や洋次郎に、そこの帯取ってとか、裸で言ってたし。」
洋介「洋一は、本当に日本人形みたいなお淑やかな京子さんと結婚して、子どもも女の子が二人だから、ここは化け物屋敷で、教育に悪いと思っているのかもしれないね。」
純子「化け物とは何よ。でも京子さんは、おとなしい人だから、無理に連れてくる事はないよ。京子さんは、時々電話くれるし、真智子や清美とも、会ってもいるのよ。私は、結構京子さんと話している。洋一がね。京子さんに変な事言わないでと言うの。女を喜ばして綺麗にするのが、男の甲斐性。女房愛せない男が、仕事できるものか。お前はもう少し京子さんとやらないと、お前も大きくなれないと言ってやった。」
洋介「凄い姑だね。」
純子「まだたつでしょう。しゃぶってあげるから。」
洋介「私も年だから」
純子「大きくなったでしょう。いくつになってもやっていこうね。」
洋介は思っていた。
こいつは本当に化け物だと洋介は思っていた。こいつは年取らないし、まだこんなに綺麗。こんな化け物に出会って、私は幸せだった。
妙子は、思っていた。
お祖父さんの言ってた、心臓の手術は、まだ難しい。でも多くの臓器では、かなりやれるようになってきた。いくつかの症例を詰め重ねていけば、もっと多くの事ができるだろう。お祖父さんのやった手術は、偶然と決死の覚悟そして神のような医者が必要だった。やがては、心臓の手術も安全にやれるようになるかもしれない。それは玲子や宏一の時代かも知れないし、もっと先かも知れないが、いつかはきっとやれるだろう。 真弓さんは綺麗になった。どこか醒めた疲れたような影はなくなった。患者にも優しく接している。洋次郎は何の取り柄もない子だと思っていたら、あんなに女を変える事が出来た。
宏は大変だった。
仕事は順調だし、やりがいもある。大学を離れるのは、不安だったが、お義母さんの援助や協力で、銀行も大きくなった。でも妙子は化け物だ。私と洋次郎くんとは、年も離れているのに、競争されられる。この間なんて、朝からやらされた。確かに朝の光の中で、あえいでいる裸の妙子は綺麗だった。妙子とやるのは楽しい。しかし回数が多すぎる。あいつは何回してもすっきりしたと元気よく出かける。翌日休暇を取って、あいつが朝、腰をふらついて病院へ出勤させようと、念入りに準備して3回もやった。指でも何回も逝かした。痙攣するまでついてやった。それでも凄かったといいながら、寝て、朝になったら、今朝はお腹空くのよといいながら、ご飯を一杯食べて、足取り軽く出勤した。私は腰が重かった。帰ってきたら、今日も頑張ってくれるのと聞く。お義父さんが大変と言っていた意味がよく分かった。真弓さんが、綺麗で、輝くような人になった。洋次郎くんは頑張りすぎている。でも私も妙子は好きだ。妙子を愛し、もっと綺麗で輝く人にするのだ。
真弓は幸せだった。
洋次郎は優しい。私が変態だと言っても、去っていかなかった。私の中に精を入れてくれた。私は洋次郎の純粋さで蘇る事ができた。由美子のままでは、本当にどぶの中であえいで、身も心も汚れて、くだらない男たちに愛される事もなく、殴られたり、引き付き回されたりしながら、あえぎ、感じて、そしてやがて、愛のない暴力に疲れ、また違う男の玩具となり、枕のような女になっていただろう。それが私の人生だと諦めていた。私の中の由美子も最近出てこない。例え出てきても洋次郎の愛があれば、私は守られる。由美子は残念そうに、去っていくしかない。慶子は大丈夫だろうか。私の血は、洋次郎の血で浄化したのだ。大丈夫だきっと。それにお義母さんや妙子さんは、自由にどんな話もしてくれる。私も自由になんでも言える。愛されて、洋次郎の精を入れて貰える。お義母さんも妙子さんも、それを喜んでくれている。
洋次郎は楽しかった。
由美子さんは、私の憧れだった。敵わぬ夢と諦めようとしても、見てるだけでも思いながら、酒場にも後を追った。今は私の妻だ。どんなに疲れていても、私の求めを受けてくれる。子どもを作らないようにしていた時は、悲しかった。ただ私は、由美子さんがいればいいと思って、諦めようとしていた。
それでも由美子さんいや真弓を愛し続けた。いつしか真弓は、私の精を身体の奥で、受けてくれるようになり、三人も子どもができた。父は、長男に伝説の医者と言われる次平の名前を付けてくれた。功一おじさんやみどりおばさんにも、新しい次平がきっと出来ると口説いたらしい。大切に育てよう。慶子も可愛い。真弓は、自分の血を恐れている。少し虐められて喜ぶ所はあるが、みどりおばさんにも聞いたら、みどりおばさんは、笑っていた。
それは、献身的な人が、愛情不足になった時に起きやすい。洋介も少しは分かっているのよ。お前は、大きな可能性を育てているのよ。私のお父さんの次平そして、鉄平おじさんや香さん、恵子さん、純子さんそして真弓さん。そうした人たちの思いがお前の子供たちの中に宿っている。お前の子どもたちは、きっと素晴らしい人になるわ。お前は、真弓さんと三人の子どもたちに、愛情を注ぎなさい。それがお前に出来る事よと言ってくれた。
私は、お母さんや姉や兄とは違い、それほどの才もない気がして、悲しい気持ちになる時もあった。しかし私は真弓を手に入れた。私の宝物だ。お母さんは、「お前は、純粋な気持ちで人に接する事が出来る。賢く立ち回ろうとしたら、駄目だよ。お前の良さがなくなる。純粋な気持ちで努力し、人の意見を聞き、自分の出来る範囲で人を助けなさい。お前は真弓さんと一緒になれた。それはお前が、純粋に真弓さんを愛したからでしょう。お前はいつまでもその気持ちを持ち続けなさい。そうすれば道は自ずと開ける。慢心したり、一時の大儲けを夢みたら、やがてすべてを失うわ。真弓さんは、お前には幸運の女神だったのよ。いつまでも愛し続けなさい。」と言ってくれた。私にはそれしか生きる道がない。今日は真弓が早く帰ると言っていた。家に帰るのが、楽しい。
純子は、商会では、才能溢れる人や純粋な人そして熱心で正直な人たちをそれぞれ副社長として、多くの事を任せた。自分が作った複雑な規則も変更してもいいと言った。純子個人の資産と会社の資産も分離していくようにした。純子の個人資産で、行っていた社員への貸付も、会社シートして行うように変更した。今まで貸付を行っていた個人資産の一部を商会に寄贈して、多くの資産は引き上げた。商会ではみんな高給だったし、純子の資産から借りる事に抵抗もあり、それほど貸付もなかった。
一方、紡績では、純子の紡績で得た個人資産と会社資産は、帳簿では別れているが、実際には一体化していた。純子の個人資産は増えていたし、裁縫や織物などの働いている人もよく利用していた。純子は紡績の母とも神様とも思われていた。神様からお金を借りると全て順調に行った。家を建てる時も純子からお金を借りると全て順調に進むと云う伝説まであった。借りたお金も直ぐに返せた。借すお金も多かったが、返してもらうお金も多かった。神様からのお金は直ぐに返せるのも不思議だった。
それでも、毎年積み上げていた純子の資産は大きくなって、まったく使用していない個人資産が半分以上あったので、半分だけ引き上げた。紡績では、準備金での操作で、賃金の変動は少ないものの、会社の挙げた利益は、出資金、働いている人、留保に等分に分けていたので、賃金は多少変動していた。純子は、ここでは、自分が死ぬまで、このやり方を通すつもりだった。長時間の労働は嫌っていたし、自分も含めて自分の時間が必要だと思っていた。そして才能溢れる人も重視したが、熱心で純粋な人も必ず加えていた。
そして、純粋な洋次郎が、人の意見を聞きながらも運営を助けていた。洋次郎には、常にいっていた。才能や天分溢れる人を見付け、可能性を引き出しなさい。一方、正直な人や熱心な人なども、同じように重用しなさい。常に議論していくようにしなさい。大儲けは不治の病の始まりよ。儲けは程々がいいのよ。ここの会社は、働く機会を人に与え、世の中に役に立つ為に作った会社なのよ。利益は、会社が続けていくためには、必要だけど、それが目的ではないよ。今は宏さんが、経済の動向などを研究して教えてくれる。人の意見を聞きなさい。細かい事には目をつぶり、人に任せなさい。人を信用しない人は、人には信用されないわよ。法律家など多様な人の意見を聞きなさい。人を助けない人は、助けられる事はないのよ。不正な事したり、ずる賢く立ち回ると、お前は、何の取り柄もない男になるよ。
洋次郎は、頑固なまでにそれを守っていた。商売や会社の運営は、純子の育てた人が各部門に散らばっていた。洋次郎はそうした人たちの意見を素直に聞いた。洋次郎の才能は、人を信じ、人を愛する事だ、信じられ愛された人がお前を助けてくれると純子に言われ、洋次郎はそれを信じていた。