18日のETV特集の「シリーズ 原発事故への道程 前編 置き去りにされた慎重論 」を視聴し、福島原発事故の根源的な起因要因は、戦後の経済成長時の副作用であり、それを放置・黙認・容認してきたツケが東日本大震災(地震・津波)で顕在化したと思いました。
菅前総理が「情報がなかった」、「東電が撤退する事は許されない」と自己弁明めいた話題をメディアがとりあげ、福島原発事故を現場作業に責任問題を矮小化する風潮に違和感を感じ、本ブログ「福島原発事故:沈静化初期作業の問題もあるが?」で、
”「最近、福島原発事故の沈静化の初期現場作業の問題が問われているが、現場作業の問題もあったが、原発の導入した根源的な問題があり、責任を現場作業だけに押し付けるのは疑問を感じますね。
東電には主体的な責任があることは事実であるが、政府・政府関係機関・学識者およびメディアも責任の一端があることは事実であり、現場に責任を負わせる風潮は違和感を感じますね。」”
と書き、18日22:00に、ETV特集の続編 シリーズ 原発事故への道程(前編)『置き去りされた慎重論』を視聴する予定で、責任問題を改めてブログする予定と書きました。
ETV特集『置き去りにされた慎重論 』の番組紹介を転載すると、
”「広大な大地を不毛の地に変え、人々を放射能被ばくの恐怖に陥れている福島第一原発事故。世界で初めての多重炉心溶融事故だった。原子力発電の安全性神話は、たった一度の“想定外”の地震・津波によりもろくも崩れ去った。なぜ福島原発事故は起きてしまったのか。事故原因の直接的な究明とともに今必要なのは、歴史的な視点で安全神話形成の過程を見直すことである。
私たちはある資料を入手した。『原子力政策研究会』の録音テープ。1980年代から90年代にかけて、我が国の原子力発電を支えてきた研究者、官僚、電力業界の重鎮たちが内輪だけの会合を重ね、原発政策の過去と行く末の議論をしていたのだ。議事は非公開と決めていたため、当事者たちの本音が語られている。さらに、生存する関係者も福島原発事故の反省を込めて、今その内幕を率直に証言し始めた。
この資料と証言をもとに、福島原発事故までの歩みを2回シリーズで徹底的に振り返る。前編は、原子力発電所の我が国への導入を決めた1950~70年代前半のれい明期をみる。当初は安全性の不確かな未知のテクノロジーを地震大国に立地することへの疑問など慎重論が主流であった。
しかし米ソ冷戦の論理、そして戦後の経済復興の原理によって強引に原発導入が決まっていった。太平洋戦争に石油などの資源不足で敗北した過去や、世界で唯一の被爆国という過去を背負った日本が、原発建設に至るまでの道のりで「経済性追求」と「安全性確保」の矛盾を抱えていった過程を検証する。」
とあり、番組は、会員制『原子力政策研究会』の非公開の録音テープを基軸に構成されています。
『原子力政策研究会』は、元通産省官僚で総理府 原子力局長らを歴任した島村武久氏が主催者で、85年から94年まで、月1回開催され、元通産省官僚で退官後、原子力委員会の委員に従事した伊原義徳氏が、政治家、官僚、研究者、電力会社、メーカーOBらの100時間の肉声を録音したテープを保管していました。
番組では、伊原義徳氏が、『原子力政策研究会』は、
”「原子力政策に関わった様々の立場の人物を招き、当事者のみが知る事実や本音を後世に残す意図で、表向けは立派な本で記録になっているが、事実は何だったかが散失するのが惜しいという思い」”
があったと語っており、第一回は、講師に、85年7月、東京大学名誉教授 茅誠司氏を招いており、戦後の原子力政策の縮図を垣間見できましたね。
当方の印象では、日本の原子力の導入は、紆余曲折はあったが、戦後の成長過程のエネルギー政策の一理としても必然性があったという印象で、福島原発事故の主要因は、経済性からGEの「マーク1」をターンキー契約で導入したことであるが、それを放置し、繕ってきたことであり、福島原発事故を東電の「マーク1」導入の経営判断が悪かったと決めるけるのは酷だと思いましたね。
戦後の混乱・混迷から経済成長時の副作用と位置づけるべきでしょうね。
当方が、番組で、印象的であったのは、GEとのターンキー契約で「マーク1」の原子炉を導入した部分ですね。
電力不足が経済成長の障害の時期、電力会社・メーカーには技術力が皆無の時期に、政府の原子力政策は将来の使用済み核燃料を指向し、増殖炉、重水炉の核燃料サイクルに重点となり、電力会社は経済性第一の原発導入せざる経営環境下で、GEとのターンキー契約での原子炉「マーク1」が魅力になり、東電は、福島原発に「マーク1」を導入決定する。
福島原発の導入場所は、35メートルの崖の台地であったが、それを固い地盤に設置するという名目で10メートルまで崖の台地を掘り下げたが、事実は、GEとのターンキー契約の制約だったということです。
GEのターンキー契約では、35メートルまで海水をくみ上げるポンプの能力がなかったことであり、海側のタービン建屋の地下に非常電源装置も仕様となっており、地震国の日本の安全性に不適合であったが、日本側には仕様変更する能力もなく、経済性の観点から仕様変更で追加費用を許容できる環境下になかったということです。
そして、安全性向上の非常電源装置の増設も海側のタービン建屋の地下に設置し、今日まで、それを「是認」してきたということです。
番組では、安全面については、話題にならず、安全軽視について、”「今更言うと怒られるからと誰も言い出さない」”という録音された会話があり、経済性第一での導入は「一理」ではあるが、問題は、問題提起を顕在化させない雰囲気を原子力分野に醸成してきたことが「人災」といえることですね。
一方、当方は、ETV特集の『アメリカから見た福島原発事故』を視聴し、GEの元幹部が福島原発に導入された原子炉「マーク1」のビジネスはアメリカで赤字であったが、日本とのターンキー契約ビジネスは黒字の美味しい商売であったという話が印象に残っていました。
当時の日本の研究・技術力の貧弱な環境と電力会社の経営環境など鑑みすれば、政治主導のイギリス製の原子炉導入を拒絶し、GEの「マーク1」をターンキー契約し導入したことを全否定できず、問題は、ターンキー契約し導入した原子炉「マーク1」の副作用をそのまま放置・黙認・容認し続け、安全神話を形成してきたことです。
やはり、世の中、「破壊と創造」の新陳代謝が不可避で、前例偏重、実績で評価する社会は成長の支障となりますね。
NHKの政治報道には、「中立・公正」は疑問があるが、NHK特集は「啓発・触発」される内容ですね。
私が痛切にかんじていること。日本は原発技術にかんして今でも昔よりすすんでいない。GEやWESTIN ・・・・のマニュアルを翻訳したものを金科玉条にしているように見えます。GE の原発はあくまでアメリカのものでアメリカでつかう事が前提になっている。日本とアメリカの最大の違いは日本の自然災害の激しさです。GEのものを日本にもってくるのはであれば日本の風土に合うように必要な改造をすべきです。それに
本当の原因を追及できなくて、原発継続はありません。しかしそれは政官業マスコミの強固なタッグを打ち壊さないでは無理です。中国の高速鉄道事故を大いに揶揄した我が国ですが、その体制になんらかわりはありません。