傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

原発事故:水素爆発の危険性を現場も対策本部も認識しなかったことも問題(追記)

2011-12-20 16:02:01 | 社会

野田首相(原子力災害対策本部長)は、16日、「原子炉が冷温停止状態にある」として、「発電所の事故そのものは収束に至った」と表明したが、何ら爆発事故の検証されておらず、事故収束表明は疑問ですね。
最近、検証委員会の中間報告の事前報道、東京電力の中間報告で、現場のベント操作が適切だったか問題視されていますが、水素爆発の危険性を現場も対策本部も認識していなかったことも問題ですね。

福島原発事故の考察については、大前研一氏のコラム『「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」プロジェクト』、山口栄一氏(同志社大学 教授)のコラム『メルトダウンを防げなかった本当の理由──福島第一原子力発電所事故の核心』らが発表しております。

NHKは、2日 4時2分 ニュース『原発 原子炉にも窒素注入開始』で、
”「東京電力は、福島第一原子力発電所で、新たな水素爆発を防ぐために、不活性なガス、窒素を原子炉に直接入れて、水素の濃度を下げる作業を始めました。・・・・・・」”
で、水素爆発の回避に、窒素を投入したと、

2日 4時31分 ニュース『非常用冷却装置 稼働と誤認識』で、
”「東京電力がみずから行った、福島第一原子力発電所の事故調査の中間報告で、事故発生日の夕方、1号機で唯一稼働できる非常用の冷却装置を、運転員の判断で停止したのに、所長らは、深夜まで、冷却装置が動いていると誤って認識していたことが分かりました。安全上重要な情報を共有できなかったことが、事故対応の遅れにつながった可能性があり、詳しい解明が求められます。・・・・・・」”
と、東電の中間報告を不十分とし、

2日 15時17分 ニュース『東電事故調 中間報告を公表』で、
”「東京電力は、2日、みずから行っていた福島第一原子力発電所の事故調査の中間報告を公表し、事故に至った原因を検証するとともに原子炉の冷却手段の確保など事故を防ぐための対策をまとめました。しかし、大量の放射性物質が放出された原因や経路などは明らかになっておらず、事故から8か月以上がたっても数多くの疑問が残されています。・・・・・・」”
でも、東電の中間報告に疑問を掲げ、

3日 6時43分 ニュース『非常用冷却装置の仕組み検証へ』 で、
”「12月東京電力は、みずから行った福島第一原子力発電所の事故調査の中間報告で、最も早く深刻な事態に陥った1号機で、唯一稼働できる非常用の冷却装置が、バッテリーを失うと弁が閉まって冷却できなくなる仕組みになっていたとして、設計が適切だったか検証する考えを明らかにしました。・・・・・・」”
で、非常用冷却装置の操作を問題視し、

3日 7時18分 ニュース『原発事故 なお残る未解明部分』で、
”「東京電力が行った事故調査の中間報告では、1号機から4号機でメルトダウンや水素爆発に至った原因や経緯が検証されていますが、大量の放射性物質が放出された原因や経路などは明らかになっておらず、解明されていない点も多く残されています。・・・・・・」”
でも、東電の中間報告に疑問を掲げ、

3日 7時18分 ニュース『東電元幹部 事故の背景を証言』で、
”「福島第一原子力発電所の事故を引き起こした背景について、東京電力で原発の安全対策を担当していた元幹部がNHKの取材に応じ、「コストを下げることに目を奪われ、深刻な事故への対策や危機感が薄れていった」などと証言しました。・・・・・・」”
で、東電は、安全対策より経済性優先だったと報道。

NHKは、東電の中間報告に疑問を提起し、18日 NHKスペシャル番組『メルトダウン~福島第一原発 あのとき何が~』で、全電源喪失の環境下でも、原子炉を沈静化できる可能性があったと報道。

番組紹介を転載すると、
”「レベル7、世界最悪規模の放射能汚染を引き起こした東京電力・福島第一原発事故。発災から8ヶ月経つが事故の全容解明は未だ道半ばだ。NHKでは福島第一原発であの時いったい何が起きていたのか、独自の取材をもとに徹底解明する。

まず、原発の命綱ともいえる電源を奪った津波はどのように発電所を襲ったのか。専門家による新知見を踏まえてCGで再現、思わぬ経路から海水が進入した事実を明らかにする。
続いて、核燃料のメルトダウンはどのように進んだのか。原子炉の水位や圧力、放射線量の記録など膨大なデータを改めて検証。最新の解析ソフトでシミュレーションを実施し、全電源喪失から、燃料のメルトダウン、水素爆発にいたるまでの詳細なメカニズムを明らかにする。

さらに、メルトダウンが進む原発で発電所員らはどう事故に向き合ったのか。事故想定をはるかに超える長時間の全電源喪失。通信装置が壊れ連絡が取れない建屋内部。照明が消えた制御室に迫る放射性物質。取材を通して、壮絶な現場の状況も明らかになってきた。
事故直後から独自取材で集めた証言をもとに中央制御室を再現。最新のデータ分析と証言を重ねて「あの日」の“真実”に迫り、人類はこの巨大な原子力エネルギーにどう向き合うべきなのか、根源的な問いを投げかける
。」”
と、事故当初の中央制御室での11名の運用を再現ドラマとし、問題にしたのは、非常時のマニアル不備、非常手段の訓練不足、水位計の盲信で非常時対応せず、幹部が全体像把握不足らを取り上げ、その後の圧力計の数値に驚愕し、ベント開口操作に挑む内容です。

番組では、事故時に、中央制御室に11名の運転員がおり、
3月11日、2時46分、地震で中央制御室も揺れ、原子炉自動停止を確認。
外部電源喪失、非常電源作動、マニアルに準拠し冷温停止作業、非常用複水器(イソコン)を確認作業に、ただ、非常用複水器については、未経験であったと。
51分後、津波来襲、地下の非常発電機・バッテリー水没、全電源喪失へ、中央制御室は真っ暗に、原子炉の水位確認できず。
一方、NHKが準備したシミュレーションプログラムでは、全電源喪失 4時間39分後に、原子炉は空焚き、メルトダウンが開始し、10時間32分後に、メルトスルーになると。

電源なしでも作動する非常用複水器(イソコン)はバッテリー電力がなくなると弁は閉まり、弁を開ける手動操作が必要となる。
5時間19分後、運転員が現場に目視確認に行くが、放射線量が高く、中央制御室に戻る。
中央制御室では、非常用複水器(イソコン)が停止しているのが気がつかず、時間が経過。現実は、核燃料が高熱で溶融中。
この事態を、対策本部の幹部は非常用複水器が稼動中と誤認のままで。

非常用複水器は一時的に復活し、11日の18時25分、運転員が非常用複水器のカラ焚きで破損し、放射性物質の放出を懸念し、停止に。
番組では、専門家が非常用複水器はカラ焚きでも壊れない、非常用複水器が稼動していれば、7時間メルトダウンが延びたとという意見を紹介していたが、中央制御室は、非常用複水器の停止を報告したが、対策本部、認識せずと。

中央制御室では、電源喪失後、通勤バス用バッテリーで、水位計を動かし、水位計が誤表示に気がつかず、水位が核燃料棒の上にあると誤認状態に。
問題は、福島原発で採用している水位計は、熱で基準水位が誤作動し、現実は水位が燃料棒に下にあるのに、表示は燃料棒の上にあると誤表示することで、スリーマイル島の事故も同様な要因による人的事故であったが、日本は、何ら水位計を検証をせずに現在に至っていたと。

電源喪失 7時間後、中央制御室では、水位計の異状を疑い始め、8時間後、新たにバッテリーを確保し、圧力計を作動させたら、600?キロパスカルの表示に、中央制御室は驚愕し、ベント作業着手に。

という内容でした。

当方は、原子力分野にはド素人であるが、NHKスペシャル番組を視聴し、全電源喪失の非常事態時を想定したマニアルもなく、電源なしで作動する非常用複水器の仕組みを学習しておらず、誤動作する水位計も改善されずに今日、10?機の原発で作動しており、ストレステストの云々以前の問題であり、まして、野田首相が事故収束を表明できる環境ではないと思いますね。

この度のNHK番組を視聴しても、圧力容器、格納容器の破損回避に、ベント開口の操作が問題になっており、早期にベント開口操作し、海水注入すれば、水素爆発は回避できたと、いかにも、現場の責任を問題視する雰囲気に違和感をもっています。

朝日新聞の4月25日の記事『第一原発の水素爆発「想定せず」 細野氏、不備認める』で、
”「東電福島第一原発の事故への対応について、細野豪志首相補佐官は25日の統合本部の会見で「(地震発生直後)水素爆発が起きることはだれも想定していなかった」と述べ、事前に水素爆発の予測に基づく対応がまったく取られていなかったことを公式に認めた。

 同原発では地震発生翌日の3月12日に1号機、14日に3号機、15日に2号機で水素が原因とみられる爆発が起きた。統合本部自体は15日に発足したため、1、3号機の水素爆発が起きた当時はまだなかった。

 細野首相補佐官は、統合本部発足当時の状況やこれまでの情報などをもとに当時を振り返り、原子炉建屋に地震翌日という早い段階から、もれた水素がたまって爆発するという事態はまったく想定していなかった、とした。(竹石涼子
)」”

と報道していました。

要は、原子力安全委員会も、対策本部も、事故現場の当事者も、水素爆発を想定しなかったことは、日本の原子力分野の底の浅さを思い知らされ、その程度の実力なのに、何が原発の輸出だと笑止千万では済まされないです。

NHKの8月14日、ETV特集『アメリカから見た福島原発事故』で、ゼネラル・エレクトリック社(GE)が手がけた商業用原子炉「マークⅠ」の構造上の問題、福島原発も関わった技術者が、電源が喪失するとマークⅠはどうなるのか、炉心溶融に至るプロセスは・・・、重大事故について具体的なシミュレーションも行われていたと報道しており、その技術者は、福島原発事故を知った後、数時間で水素爆発がおこるだろうと語った10分後に、水素爆発が発生したと、予想通りだったと。

要は、原子力安全委員会も、対策本部も、事故現場の当事者も、水素爆発を想定しなかったことは、日本の原子力分野の底の浅さを思い知らされ、その程度の実力なのに、何が原発の輸出だと笑止千万では済まされないです。

「参考」

日本原子力安全基盤機構(JNES)で原発検査員を務めていた藤原節男氏の意見
福島原発3号機“核爆発”を起こした!専門家が断言
データ改ざんを拒否したらクビ!“原子力村”の腐った体質

当方は、本ブログ「朝日新聞記事:震災10日後「炉心再溶融」・・・個人ブログが先行して提起」で、
”「(8月)8日の朝日新聞の記事『震災10日後、二度目の溶融か 福島3号機、専門家指摘』で、福島第一原発3号機が大震災の10日後に「再溶融」が発生していたと報道。
この現象は、6月25日に、市井の岡田直樹様の個人ブログ「Space of ishtarist 」のエントリー『2011年3月20日、隠蔽された3号機格納容器内爆発
で指摘していました
。」”
と、市井の岡田直樹様の個人ブログが先行して指摘していたと書きました。
この岡田直樹様の意見が気になっております。

また、前述した山口栄一氏については、本ブログ「福島原発事故:沈静化初期作業の問題もあるが
で、山口栄一氏の日経ビジネスオンラインに寄稿の『見逃されている原発事故の本質 東電は「制御可能」と「制御不能」の違いをなぜ理解できなかったのか』を取り上げました。

当時は、山口栄一氏の意見に接して、構造的にそういう仕組みかと思いましたが、何故、現場は非常用複水器(IC)を短時間で停止したのか疑問でした。
この度、NHKの番組を視聴し、非常時のマニアルも訓練もされておらず、水位計が誤動作することも学習しておらず、全電源喪失で、真っ暗闇で全機能停止の中央制御室の人間は、放射線量の高い環境下で、何をすべきだったかは問われるが、中央制御室の人間が主因という論調には違和感を持っています。

「追記」

本ブログで、現場も水素爆発を想定しなかったが問題と書いたが、後日(2012年01月01日)のブログ「院長の独り言」様のエントリー『ブローアウトパネルの補強でフクシマは、爆発した?』で、建屋の水素爆発回避のブローアウトパネルについての問題を書いており、コメントに、

”「はじめまして。 私の家族は福島第一で働いてる東電社員です。
事故直後に留まった50人(実際は70人位)の一人です。
s​a​f​*​*​c​u​l​t​u​r​*​さんのおっしゃる通り、ブローアウトパネルが開かなかったために起こった水素爆発により放射性物質の大量飛散という大事故につながったと福島第一の社員の多くは思っているそうです。このブローアウトパネルですが、中越地震の際に地震の揺れで柏崎・刈羽原発のブローアウトパネルが開いてしまったことを重く見て保安院が開かないように改修することを東電に指示したため、中越地震後、東電管轄内の原発のブローアウトパネルは溶接等で閉じられたのです。3.11地震後、現場の社員達が危険を顧みず開かなくなったブローアウトパネルの代わりの穴をあけに向かいましたが作業が間に合わずにとうとう爆発してしまったのです…。国から抹殺されるのが怖くてこの事実を国民に伝えたくても声を上げることも出来ません。このまま事故の真実が隠さ
」”

とあり、もしこれが事実であれば、現場は、ブローアウトパネルの開放作業を着手したことになり、現場は水素爆発の危険性を認識していたことになり、本ブログを訂正しなければなりませんね。

想定外起因で原発事故が発生したとし、格納容器爆発回避の非常時現場操作が問題があったとしても、ベント作業と注水冷却作業が必須とした場合、建屋爆発を回避できていれば、爆発による瓦礫なく、自衛隊・消防隊による注水作業も、電源車による外部電源の確保もより容易にでき収束も軽減されたと思われます。
ブログ「院長の独り言」様のコメントにあるブローアウトパネルが溶接されていたことが事実であれば、保安院の責任は重大であり、「院長の独り言」様のブログのコメントにある”「国から抹殺されるのが怖くてこの事実を国民に伝えたくても声を上げることも出来ません。」”は、政府と東電の隠蔽としか思えないのです。

当方は、議事録もなく、録音もなく、時間が経過し、「想定できなかった」という当該関係者の弁明に、疑問視しているのです。
組織責任は責任分散化で責任者不在になり、現場だけが責任を取らされることは、郵便不正事件で、政治家案件をノンキャリアの1係長の実行責任で結審する不条理・理不尽な世界と同質であり、この硬直化した社会は破壊しかないのです。

「ごめんさい!で済めば警察は要らない」という喧嘩の口上があるが、「知らなかった!で済めば責任者は要らない」ですね。




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