傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

家電の苦境は経営者の責任ではあるが?(雑感)(追記)

2012-11-02 12:56:48 | ビジネス

パナソニックが今年度通期で7650億の赤字への下方修正、シャープは通期で4500億赤字見通し、ソニーもエレクトロニクス分野の中間決算は大幅な赤字で、日本の家電は内外の大苦戦で存亡の危機に直面していますね。
日本の家電メーカーが韓国勢力の後塵を拝している現下は、経営者の責任であることは否定はしないが外的要因も大きいことは事実ですね。

10月27日、28日放送のNHKスペシャル「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」(第1回 岐路に立つ"日の丸家電"、第2回 復活への新戦略)を視聴したが、当方に言わせれば時代の変化・環境変化に追随できなかった経営責任であり、過去の成功遺産の拘りが先鋭的な取り組みを軽視してきたに過ぎないのです。

個人的に興味を持ったのは、第2回の「復活への新戦略」の内容ですが、第1回の「岐路に立つ"日の丸家電"」では、アップルと相対するソニーの家電分野での復活への取り組みとサムソンにシャープの敗戦の考察でした。
アップルとソニーとの比較については、本ブログ「ソニーがアップルになれなかった理由・・・ソニーの再生には?(追記)」でも書きましたが、アナログのハード世界からデジタルのソフト世界への環境変化に大胆な事業構造の変革に遅れたのが主因であり、番組ではソニーの再生に社内風土が云々と解説していたが、家電の不振は自前技術重視による弊害と「集中と選択」への構造改革の遅れと構造改革による人材流失の副作用の経営の問題につきます。

また、番組でシャープの苦戦とサムソンの躍進を取り上げており、シャープの技術のブラックボックス化路線とサムソンの外部技術の導入のオープン化路線の経営戦略の相違が低価格の商品化のスピードの差となり、今日の圧倒的な差となったと紹介していました。
当方が興味を持った場面は、2005年から5年間 日本サムソンの元顧問の石田賢氏の話です。

番組では、サムソンが日本の優れた技術の発掘に注力し、日本の技術をサムソンに紹介を従事した石田氏の、
”「この会社は凄いとか口コミの段階でスクリーニングする
新聞、マスコミに出る前に、その企業とコンタクトする
」”
の話を紹介し、シャープは技術で圧倒せよと堺工場に巨額を投資し、60型以上の大型液晶パネルの量産を開始するが、リーマンショックの影響で販売振るわず巨額の赤字に陥ったと。
一方、サムソンは新しい市場開発に新興国シフトを進め、通貨ウオン安,低い法人税率が追い風となる。
石田氏は、
”「「投資」と「売る」という両輪がまったくかみ合っていなかったシャープ
だからこれは勝てるかもしれない
物を作るというだけでなく、そこで作ったものをどういう風にどういうルートでグローバルな流通マーケテイングですよね
そこでの戦略は亀田から堺に移すところで強く感じることはなかった
」”
と語っている場面です。
この場面には、苦戦中の日本企業の諸々の要因が包含されています。
自前技術ありきの体質、円安為替のハンディ、販売より技術重視の弱点、成長市場への出遅れなどあります。

当方が現役時代の10年前に、知人からサムソンがビジネスパートナーを探していると紹介され渋谷にあったサムソンの事務所を訪問し、サムソンからプレゼンを受け資料を本社の企画部門に提供した事があります。
当方からの報告に、本社からは、韓国でのビジネスで苦い経験をしており、けんもほろほろに聞く耳など持たないと拒絶されましたね。
当時は、韓国製品には日本製品の不正コピー商品が多く、半導体分野は躍進していたが国内でのサムソン白物家電製品は皆無で、日本の大企業は韓国企業とは生理的に距離を置いていた雰囲気で、本社の拒絶は納得できましたね。

今日の家電メーカーの苦境は、アナログのハード世界からデジタルのソフト世界への環境変化に大胆な事業構造の変革に遅れたのが主因で、技術の陳腐化、コモディティ化(汎用化)による低価格化に追随出来なかったことで、外部要因の円安は大きなハンディであることは事実ですね。

本ブログ「J-CAST:パナソニック採用の8割外国人 大学生就職深刻になる一方だ・・・企業も死活問題?」で、パナソニックの大坪文雄・前社長が『文藝春秋』(2010.07)に寄稿した『なぜ海外に打って出るのか わが「打倒サムソン」の秘策』を取り上げ、
”「大坪社長は、『文藝春秋』で、現地主導の商品づくりを重視の生活密着の土着性とシステムソリューション型の環境革新企業を目指すと述べていますね。
また、企業活動の「五重苦」として、
1)法人税の軽減を・・・手かせ足かせのハンディ
2)円高問題・・・海外移転を増長
3)雇用問題・・・労働力の流動性を
4)FTA・EPA・・・ヒト・モノ・カネの交流拡充を
5)資源問題・・・1企業対応では限界
と述べていますが、「如何なる局面においても企業を成長させることは他の誰でもなく企業自身の責務」とし、企業の成長継続には、自己変革が使命で、それに担う人材育成「教育」こそが「国力」の指標となると述べています。」”
と書きました。

日本の製造業は、製造原価が高い体質に、円高のハンディがあり、この企業活動の「五重苦」を軽減させることが日本の成長戦略の要であり、野田首相が新たな経済再生に日銀と連携し金融緩和策を得意げに国会で答弁しているが、企業自身の経営努力は不可欠であるが、金融緩和程度で製造業が活性化など出来ないのは明白です。
そこに、消費税増税であり、日本の製造業は疲弊するだけですね。

ソニーの事業部主導の閉鎖性や、シャープの技術偏重性や、パナソニックのプラズマへの固執など個々の問題はあるが、経営環境のハンディは大きな要因であることは明白ですね。
日本社会は赤字体質に陥っており、生成発展には現体制を破壊し、環境変化に追随できる新たな社会体制の創造が不可避なのです。

「追記」

[家電不況は為替不況?]

高橋 洋一氏が「現代ビジネス」に寄稿のコラム『家電業界は売り上げ増減の8割が為替で決まる。1ドル=80円を放置して、経営者ばかりを責めるのは「木を見て森を見ず」だ』で、家電業界は為替で8割も売上高に影響するとし、為替を適正水準で安定させることは政府・日銀の責務を論評しています。
10月27日放送のNHKスペシャル「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」(第1回 岐路に立つ"日の丸家電)でもシャープの不振要因に円相場が高騰し続けてきた外部環境を取り上げていました。

家電不況は為替問題を放任してきた政府・日銀の責任は大きいことは事実であろうが、企業は社員の雇用を守り存続が使命です。
家電不況には各社個有の要因として、ソニーはアナログ時代の負遺産の清算で技術者の自由度を抑制したとか、シャープは技術ブラックボックス路線が低価格市場で敗因とか、パナソニックはプラズマ固執と成長商材不在とかあるが、アナログからデジタルへの技術陳腐化と外部環境の変化に追随できず早期希望退職を導入しリストラを実施してき、今日の家電3社の苦境は、想定外の円高であろうと経営不振の経営責任は免れませんね。

大坪パナソニック前社長が企業活動の「五重苦」として、
1)法人税の軽減を・・・手かせ足かせのハンディ
2)円高問題・・・海外移転を増長
3)雇用問題・・・労働力の流動性を
4)FTA・EPA・・・ヒト・モノ・カネの交流拡充を
5)資源問題・・・1企業対応では限界
とし、「如何なる局面においても企業を成長させることは他の誰でもなく企業自身の責務」とし、企業の成長継続には、自己変革が使命で、それに担う人材育成「教育」こそが「国力」の指標となると述べていましたが、パナソニックであろうがソニー、シャープであろうが問題意識を持った社員はいたはずであり、それらの異端者(変わり者社員)を冷遇し企業が変革できなかった経営責任はありますね。

家電不況を考えると、2011年2月に書いた本ブログ「国家経営は神様にお願いしかない?(雑感)」になりますね。
為替問題もNHKスペシャルが取り上げた家電不振も想定されており、何を今更という思いと、企業であろうと個人であろうと如何なる想定外の環境変化になろうとも「自立と共生」を意識することが賢明と思う次第です。



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