傍観者の独り言

団塊世代で、民間企業で「チンタラ・グウタラ」に過ごした人間の手前勝手な気儘な戯言・放言。

野口悠紀雄教授と三村明夫会長の景気観について

2009-02-22 10:29:16 | 国家の計

文藝春秋(2009.03)に、野口悠紀雄教授(早稲田大学大学院)の寄稿の『GDP10%減 大津波が来る』」と三村明夫会長(新日本製鉄・経団連副会長)のインタビュー記事の『「良い赤字」で日本を復活させよ』で、「学者」と「経営者」の違いの景気観・景気対策が記載されております。
野口悠紀雄教授は、前代未聞の危機で大型の財政出動の必要性を提起され、三村明夫会長は、景気は循環するもので悲観せず技術開発をと発言されています。

現場人間であった当方には、野口悠紀雄教授も三村明夫会長も未知な人物でしたが、両者の意見には見識の高さは感じましたね。

野口教授は、この不況は日本の超低金利も要因とし、日本のGDPがマイナス10%となれば経済規模は数年~10年前の水準に戻るとし、新たに120万の失業が試算される非常時で、金融緩和では需要は増えず、ケインズ政策が必要としている。
具体的には、20~30兆規模の日銀引受け国債発行し、都市インフラなどへの公共投資を提言しています。
そして日本経済の再生には産業構造の転換が必要とするが、「具体的にはわからない」とし、政府は余計な事をせず、試行錯誤しながら新しい日本を作ってゆくのみと書いています。

三村会長は、サブタイトルが「不況は必ず終わる。根拠なき悲観論からは何も生まれない」とあるように、BRICsの新興国の経済成長と資源国の金余りが世界経済を急激な高成長させたが、経済(金融システム)が自ら発した警戒信号と高成長の帰結をもたらす景気循環による不況とみています。
そして、企業は赤字決算でも短期間に在庫調整し、景気が回復局面まで体質改善が肝要と発言しています。
内需拡大については、日本はエネルギー、食料の26兆円の輸入国であり、26兆は輸出でかせぐ必要性があり、エネルギー、食料の海外依存度を抑えるための産業振興としての内需拡大は必要とし、農業振興による自給率UPは必要としています。
経済危機への政治の役割を、国民への政策説明と将来への方向性の明示と語っています。

両者の記事を読むと、経済規模の縮小による不況には、財政出動による新たな事業での雇用創出は共通していますが、経済成長については野口教授は外需モデルから産業構造の転換の必要性を提起し、三村会長は技術力と日本型経営の良さの更なる挑戦ですね。



当方は、堺屋太一氏の「救国維新」の記事をよみ、日本が「老化体質」「自閉気質」の二流国に陥っていることをより痛感し、政治や経済に関心を持つようになり、別ブログ(Doblog:現在障害中)に、「成長ゼロでも、国民が安心・安全に暮らせる社会を望む」で、

”「経済規模が縮小したならば、非正規社員に限らず、正規社員も雇用問題が現実化するのは、時間の問題であり、従来の経済・経営手法で雇用は解決できず、企業も官庁も万人が血を流す覚悟で、緊縮経済に対処せざるを得ないと思われます。」”

”「国民が安心・安全で暮らせる社会は、まずは、第一次産業が国の基幹と思っております。
温暖化で環境破壊が進行しても、石油が枯渇するエネルギー問題が深刻化しても、食糧危機が最悪の事態になろうとも、自給自足で最低の生活ができることことが第一で、第二は、社会保障制度の充実での安心さで、その上での自由競争社会”という国造りが必要で、人材育成が肝要と思っております。」”

”「この危機を契機に、新たな国家100年の計を策定し、自給自足で国民が最低の生活ができることことが第一で、第一次産業を再生させ、第二は、社会保障制度の充実での安心さで、その上での自由競争社会という低成長路線で外的要因に左右されにくい安定経済の新しい国造りをすべきと思っています。」”

を書いてきました。

当方の考えは、三村会長とは、近いと思いますが、三村会長は、「景気回復に備えて、企業は在庫調整し、単年度で赤字決算しても体質改善すべき」と語っていますが、バブル経済崩壊後に、企業努力し財務体質を改善できた企業だけが出来る話ではないかと思いますね。
「失われた10年か、15年」では、企業は体質改善できたが、下々の庶民は可処分所得は増えず、低預金金利で銀行を再生させ、企業を延命させてきたという思いがありますね。

三村会長は、この不況は世界景気の循環であり、金融システムが安定すれば、必ず好転するといわれるが、体力のある企業は海外生産などで対処できると思えるが、金融システムが安定しても、世界経済は様変わりしているかも知れず、一般企業が対処できるかどうかも不透明ですね。
野口教授の言われる大きく経済規模が縮小すれば、景気回復に時間がかかり、大量の失業者が発生事態になるかも知れず、三村会長の言われる「良い赤字決算」して好景気を迎えるまで捲土重来を期して、企業は体質改善に努めよとは企業論理ですね。

当方は、斎藤 精一郎氏のコラム「日本経済は新たな『5年不況』に入った!?――"過剰"問題の重圧を直視せよ」、桐原涼氏のコラム「三つの過剰再び」の企業にとっての「設備過剰」、「雇用過剰」+「債務過剰」での生産調整、在庫調整により経済規模の縮小による不況という見解に共感しており、三村会長の「良い赤字」での不況対策は、企業における不況対策の一面性と思えます。
ただ、三村会長という内需拡大策への農業振興による自給率UPは賛同しますね。

野村教授は従来の景気対策手法には通用しないと悲観的で、三村会長は景気回復に備えて企業は体質改善努力をと楽観的ですが、当方は国民資産が1500兆もあるうちに、新たな第2、第3の世界不況に耐えられる国造りをすべきと思っています。

本ブログ「エコノミスト下村 治氏について」で書いた、下村治氏の「ゼロ成長論」に、関心があります。


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