銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

激しい雨

2009年07月26日 | のほほん同志Aの日常
朝からの激しい雨。

のんびり音楽を聴きながら家で過ごす1日なら、雨もまたいいものですが、
旅先では、やはり晴れてほしいもの。

足元も悪くなるし、景色もよく見えない。
何より気分が晴れない。

そんななか、「雨よ降れ」 と強く願ったツアーがありました。
それは、“the finest walk”
日本では「世界で一番美しい散歩道」 として紹介されるハイキングコース、
ニュージーランドのミルフォードトラックです。
1日50名という入山制限のもと、山小屋に泊まり歩きながら、
3泊4日で54kmを縦走するという、なかなか歩きごたえのあるコース。

日本でいうと三重県尾鷲のようなところ。
ニュージーランド屈指の豪雨地帯に位置しますが、
その雨こそが、シダと苔のじゅうたんに覆われた巨木の森を育むのです。

ハイカーなら一生に一度は歩きたいというミルフォード、
添乗員としてこれまでに4回歩きましたが、
微妙な天気や季節の違いで、毎回まるでちがった風景に出会えます。

3回目のミルフォード添乗ではこの地方にしては珍しく、晴天の1週間がつづきました。
お客さまは大喜びでしたが、
私ひとり、「ミルフォードで雨に降られないなんて、もったいない…」と不満顔。

このミルフォード、地元ニュージーランドの運営会社が作成したポスターも、
雨ガッパ姿のハイカーが土砂降りの雨のなかを歩いているところ、という具合。
何といっても雨こそがミルフォードの魅力なのです。

そうお客さまに力説しましたが、あまり理解は得られず、最終日も目覚めれば快晴…。

この日はゴールの船着場まで、1日で21kmを歩く長丁場。
お昼すぎ、ぽつりときました。
――雨です!

やがて、これまでの分を取り戻すかのようなザーザー降りに。
両側にそびえる岩肌のてっぺんからは、みるみるうちに無数の滝が現れました。

不思議だったのは、雨が降りはじめると、森が少しずつ明るくなったこと。
カラカラに乾いて茶味がかっていた苔が、
どんどん水を含んで、蛍光色のようにあざやかな黄みどり色に。
やさしく足元を照らしはじめたのです。

よかったよかった、
これで「世界で一番美しい散歩道」 ミルフォード本来の姿も見てもらえた…と、
最後の数キロ、雨明かりのハイキングを満喫し、
まる4日かけたトータル54キロの道のりを全員でゴール。

「ね、雨降りも良かったでしょ? 私の言うことに嘘はなかったでしょう?」

はしゃぐ私に疲労困憊のお客さま、「いいや」 と首をふり、ひとこと。
「いったい、これのどこが散歩道よー・・・」

…たしかに。
ちょっと意訳に飛躍があったかもしれません。

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