この夏、初めてとなる花火ツアー、
新潟の「海の花火」、ぎおん柏崎まつりに行ってまいりました。
早速ですが皆さん、花火にお土産は不要です。
同様に、花火に写真も不要です。
プロならともかく、素人はスマホやデジカメなんて置いて、自分の目でしっかり見たほうがいい。
そう信じているので、写真は例によってないのですが、
今回の花火ツアーでは意外なお土産ができました。
2日めに訪ねた金物の町で知られる燕三条。
夏風にそよぐ緑の稲のじゅうたんが美しい田圃の奥に、その工場はありました。
創業90年を迎える諏訪田製作所さんです。
黒いシャープな印象の建物。
エントランスを開けた途端、銀色のライオンやら、金色のヒツジやら。
何やら美術館か、アートギャラリーに迷い込んだようです。
「実は、これ全部、廃材でつくったんですよ」 と、案内役の好青年が教えてくれました。
「今日は仕事が早く終わったなぁ、とか、職人の気分がのってるときなんかに、
構想を練って、ちょっとずつ、作っていくんです」
(鉄の盆栽。こちらも遊び心から生まれたものでしたが、欲しいという人が現れて、商品化したとか)
諏訪田製作所の主力商品は、爪切り。
戦前は、寺社の大工道具を作っていたのですが、戦後、原料の鉄が不足するなかで、
より少量の鉄でも作れるもの、そして「人間、誰でも爪は伸びる」ということから、
爪切りに移行したのだそうです。
製造工程を見せていただきました。
一番、興味深かったのが、「鍛造」という行程。
いわゆる「鍛冶屋」さんの仕事です。
鉄を1000度に熱し、400トンの重さをかけ叩く。そうすることで、
右端の鉄の棒が、右から左へと段階を追って、爪切りの一部へと形作られていきます。
「鍛造には二つの意味があって、ひとつは見たまま、圧力をかけることで、鉄の形を変えていくこと。
もうひとつは、鉄の性質を変えることです」
性質を変える、とは、簡単にいうと、鉄を強くすること。
400トンの力で、幾度も幾度も叩くことで、固くて、しかも粘り気のある鉄になるのだと教えてくれました。
(ちなみに、400トンというのは、一般的な工場の、約4倍の重さにあたるそうです)
そうして引き伸ばされた鉄のうち、粘り気のある良い部分は、真ん中に集中し、
周辺部分はいわゆる「飛沫」なので、もろいのだとか。
なので、真ん中の強い部分だけをくりぬいて、周辺部は廃材となってしまう。
その廃材で作ったのが、銀のライオンであり、金のヒツジであり、さらにはこんなところにも!
大まかな形になった爪切りは、幾種類ものサンドペーパーで、
ぴかぴかに磨き上げられます。
「金属という素材は、もともとが、冷たい、固いものですから
たとえば木に比べて、人の手になじみにくいものなんですね。
その鉄を、なるべく温かみのあるもの、柔らかさを感じてもらえるものに仕上げて、
手に取っていただきたい、という思いがあります」
諏訪田製作所さんが爪切りを作り始めたのが、戦後の1948年。
その当時の爪切りが、70年後の今年、工場に戻ってきたのだそうです。
「修理してください」との手紙が添えられて。
「亡くなった方の机から出てきたのかなぁ、といろいろ工場で想像するんです。
確実に、世代を超えて使ってもらっている。
作って終わりではなく、作った爪切りは、お渡ししてからが本番ですから」
最後には、一画のアウトレットショップコーナーで、爪の試し切り。
わ、何これ? ぜんぜん違う。
ほしい。
迷わず買ってました。皆さん。
ということで、今回の花火ツアー、
全員が全員、爪切りもって帰途についたのでした。
もちろん、私も。
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