銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

あのオーラをもう一度

2009年07月25日 | のほほん同志Aの日常
「自分の行きたいところを企画にしろ」

そんな幸せな教えが、前の職場にありました。
なぜなら、企画者の「行きたい」気持ちが強ければ強いほど、そのツアーは売れるから。

世界遺産や寺社仏閣など、いわゆる観光地をめぐるだけが旅ではありません。
私の場合はいつも、「○○へ行きたい」 ではなく、「●●を見たい」 からスタートします。

芝居、絵画、落語や狂言。
音楽、文学、スポーツ…。
それぞれのジャンルにおける卓越した「人の技」 を鑑賞し、
じっくり味わう旅も、いいものです。

…といえば聞こえはいいですが、実体は単なる超ミーハー。

玉三郎を見たい。
ピカソを見たい。
ベンチャーズを見たい。

「ひかりごけ」を見たい。
清原の引退試合を見たい。
小米朝の襲名披露を見たい。

「この公演、絶対に見逃したらダメですよ。一緒に見に行きましょうよ!」
そんな気持ちの強さが企画に表れたのか、
とくに芝居では、大勢のお客さまと憧れの舞台をご一緒させていただきました。

そんななか、個人的な思い入れの強さと相反して、勝率が悪かったのが文学シリーズ。

太宰治と津軽。
金子みすゞと長門。
藤沢周平と鶴岡。

なんといい企画なんだと惚れ惚れしながら発表するのですが、いつも惨敗。ツアー中止。

ただひとつ催行できたのが、武田泰淳と北海道。…意外ですね。
アイヌ民族の悲哀を描いた『森と湖のまつり』 の世界を道東に訪ねるツアーでした。
阿寒湖畔でおこなわれるアイヌの祭り「まりも祭り」、そしてひかりごけを見学。
個人的には大満足でしたが、総勢5人の極小ツアーでは、
行く先々で「ご家族ですか?」 と聞かれる始末。

私の結論。
「やっぱり皆さん、生きてる人を見たいんだ」
そう、亡くなった作家の足跡を訪ね、思いを馳せる旅よりも、
いま、現役できらきら輝いている人の、技とオーラをこの目に焼きつけたい。
それが、人情というものです。

となると惜しまれてならないのが、ここわずか3ヶ月のうちに
第一線のまま、相次いで他界してしまった各界のスーパースター達。

ロックシンガーの忌野清志郎さん。
プロレスラーの三沢光晴さん。
そしてポップの帝王、マイケル・ジャクソンさん。

誰しもそうでしょうが、ぜんぜん、まったく、心の準備ができていませんでした。

キヨシローを見たい。ミサワを見たい。マイケルを見たい。
その夢は、もう叶いません。
せめて彼らの足跡をたどり、思いを馳せる追悼ツアーを企画するとしたら
行く先は、ネバーランドか、多摩蘭坂か――。

「行きたい」気持ちは強いけれど…、惨敗の予感。

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