銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

はなれ瞽女おりん

2013年10月30日 | 見かけだおしNのつぶやき
年に2回、春と秋に行われる竹人形劇
会場は、小説家・故水上勉さん主催の『若州一滴文庫』です

若者のために、寄贈された図書館、そこで立ち上げられた
劇団「若州人形座」の公演です

銀ステでは、会員さまにご紹介いただき、毎回大変な反響のもと
ご案内してまいりました

このワタクシメさえ、まさかの「鬼の目に涙」ごとく?
号泣で、観劇したものです

この秋は、残念ながら諸事情で現地での公演はないと聞いていました・・・
が、なんと(なぜか)守口市内のホールで公演されると、
これまた会員さまより情報提供があり、
早速、サロン会として、数名のお客様とご一緒してまいりました  

■瞽女(ごぜ)とは・・・
女性の盲人芸能人で、新潟県を中心に北陸地方などを転々としながら
三味線、ときには胡弓を弾き唄い、
巡業を生業にした旅芸人のことです

今回の公演は、その瞽女・おりんのイキザマを語るものでした

公演は【箱】も大事です
毎回観劇する場所は、
日本海の暗い湿った風が吹き付ける、若狭の地にある小さな劇場
まさに水上勉ワールドを語るに、演ずるに、ふさわしい場所です

でも今回は、いわゆる市内の街角にあるオオバコホールです

正直、まあ、まあ、ね、そんな気持ちで観劇しました

ところが・・・ところ変われど
プロですね、
語り部さんの、どこにあっても
想像力かきたてるその話芸

無機質なコンクリートホールにあって、
「ここは、海風吹き付けるわびしい日本海の港町」

あれま、結局泣きました

困る、ハンカチを忘れたし、眼鏡が曇る
このあとお客様と会わないといけないし、
化粧が崩れる、困る
でも、泣ける
涙がぽろぽろ、意に反してこぼれてくるし・・・

彼女、おりんの言葉に泣けました

~大好きな人、兄(あに)さんの悪事を警察で追及され放つ言葉~

憲兵:「お前の見たものを白状しろ!」
 
おりん:「だって、私は、何も見えないんですよ、もうずっと昔むかしから」
    「だから、私の見えるものなんて何もないのです、本当に」
    「でも、この私にもはっきり見えるのものもあります、それは、人の心です」
    「兄(あに)さんは良い人です、心の優しい人です、私には見えます」

視角に見えるものを全てとする、そのことへの警鐘でしょうか
見えないからこそ見える・・・それは「人の心」だというではないですか
では私たちが日常見ているものは、見えるから安心してしまっているものは、

本当は・・・

目をつむってこそ、見えてくる真実もあるのでしょうか


見えることで見失っている、
多くのことが私たちにはあるのかもしれません

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高野山御礼参り

2013年10月28日 | Hの生きる喜び、それは
こうも添乗が続くと、
ふと、むなしい気持ちにおそわれることがあります

果たして自分の仕事は誰かの為になっているのか
今日の旅は、意味ある旅だったのか

けれども、高野山の御礼参りの時に、
ひとつの答え(らしきもの)が見つかりました

1年半続いた四国八十八ヶ所巡礼
最初の回から全てご参加いただいた方にとっては全15回にもなります
毎月一度、1年半、欠かさず銀のステッキにお越しいただいたのです
コレって、すごいことです
感謝以外のなにものでもありません
一年半、その方々の生活の一部に、銀のステッキがなっていた、ということです

そう考えれば、
この仕事が誰かの為に・・・とか
意味ある旅・・・とか、そんなことが如何にうじうじしたことか
気付かされます

満願を迎えたお客様の中に、
特に、強い信念でご参加いただいた方がおられました

第1回目から
「コレだけは、最後まで頑張ってお参りしたいねん。
絶対あきらめへんよ。だから、世話かけるけど最後まで面倒見てな」
そう宣言されておられました
最初は笑顔でお参りをしておられましたが、
回が進むにつれ、余裕がなくなり、修行のように
ただ一心不乱にお経を唱えておられるような時もありました

参加者の中では最高齢
少しずつですが、確実に体はしんどくなってきます
階段の一段、一段が体にこたえるようになり
歩くのも辛くなられた時もありました

それでも、決してあきらめず、
「何があっても、お参りだけは最後まで行く」と、自分に言い聞かせ
最初の宣言通り、満願を無事に迎えられました
この方にとっては、満願を迎えるということが
いかに大変だったか、そして意味あることだったか
はかり知れません

そして、高野山への御礼参りを迎え
それはそれは、嬉しかったのでしょう
最初から最後まで、満面の笑みです

夕食前にお部屋にお邪魔すると
「コレ、皆さんにお接待持ってきたんよ
皆さんのおかげで今日を迎えられたから
こんなんでは足りないくらいやけど、私の気持ち」
と、可愛らしくラッピングした今治タオルが参加者分用意されていました

聞けば・・半年前から準備されていた、と
この日が来ることを信じて、ずっと大切に保管されていた、と

「良かった・・・こうやって無事に渡せる日が来て」

安堵しきったお客様は、この上ない充足感に満たされておられました

けれども私はそれ以上に、幸せでした

こんなに、喜んでくださって
もしかしたら、命を削りながらご参加いただいてたのかも
人生最後の目標を叶えるために・・・!

そう思えるだけで、私はこれ以上なく幸せでした

夕食の席で、皆さんと最後の晩餐を賑やかに終えて
最後、私と、お客様が残りました
「ありがとう、ありがとう、ほんまにありがとう」
何度も何度も仰いました

御礼参り、とは、無事にお参りできたことを
お大師様に報告し、感謝の気持ちを表すこと、ですが

この日は、感謝の気持ちが皆さんの間で網の目のように交差し
深い絆となって、皆さんの心に残った一日でした

私は、この日のことをずっと忘れません
この仕事の意味を含めて大事なことを教えてくれたのです

こちらこそ、ありがとうございました!

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2週間の記録

2013年10月20日 | Hの生きる喜び、それは
恐る恐る、根なし草を開いてみると
なんと2週間ぶり・・・でした!
忙しさにかまけて放置していたことをまずは謝らなければ
スミマセン・・・

今日、久しぶりにホッとひと息つきました

いつから?なのか、添乗ロード→原稿ウィーク→添乗ロードに突入し、
未だ出口が見えない状況ですが、
ずっと外に出ていたので、報告もたくさんあるんです

まずは、10/9~10「奥山田温泉 満山荘」
皆さん、期待に胸をふくらませながら
そして、私も自信満々で話を盛りながら向かったのですが、

驚いたのは、満山荘自体の「質」の高さ!
聞いていた話に偽りなく、全てにおいて素晴らしいの一言
素朴な田舎風のご夫婦が、何の気取りもなく
ごくごく自然に迎えてくれて心地よく、
しかし、お部屋のセンス、デザイン性、湯、供される料理は
ここが標高1500m近い山の中とは思えないレベル

皆さんも、大満足のご様子でした

次回は、春、桜の頃にまた来ましょう!と別れました

続いて、これは私用ですが、毎年挑戦し続けている試験・・・
言い訳から言うのもかっこわるいですが、
今年は、本当に勉強せず、解説書を見たのは前日夜のみ
つまり。。。撃沈。

続いて、この頃やってきた台風26号
事務所に巻き起こった台風前夜の大型台風に関しては、
先のブログで紹介されていた通りです

中止やら、延期やら、色々ありましたが、
何とか事なきを得てこの事態を乗り切りました

続いては、西国巡礼
久しぶりに、大好きなお参りです
朱印を集めるのも、押していただくのも、
何やら楽しく、勝手に一人で充実感に浸っていました

良い機会にも恵まれました
正法寺において、ちょうど年に2回のぼけ封じ祈願会に
巡り会え、貴重な『御幣』を全員いただけました

台風一過の秋晴れの中、良いお参りができました!

続いて・・・ワンコインウォーク中山寺奥の院へ
こちらも、久しぶりのウォークで
足が少々ぷるぷるしましたが、
それを必死に隠して、皆さんで無事登頂 達成感

続いては 京都へ貸切バス旅行
ユニークな行程が進み、お昼には老舗料亭で
舞妓・芸妓とのお座敷遊びも
大盛り上がりの中、終了

そして今日、添乗と添乗の間に唯一の休日
・・・のはずだったのですが、実家からお呼びがかかり、
「あんた、稲刈り手伝わんかったから、
臼挽き手伝いに帰ってきてや~」と召集メール

どうやら、父が負傷したらしく人出が足りない、と言われれば
帰らないわけにはいかず昨夜遅く帰郷

さぁ、やるぞ!
と張り切って今朝早く起きたのですが
一日、土砂降りの雨により臼挽きは中止

何しに帰ったのやら・・・と思いつつも、早々に切り上げて西宮に帰ってきました

明日からは、御一行様のスケッチ旅行、吟行、そして高野山御礼参りと続き
来週は西国巡礼、屋久島、と続きます

再び向かってきてる台風により、心穏やかではありませんが、
ひとつずつ、ひとつずつ
と自分に言い聞かせながら見えない?ゴールを目指します

では、再び添乗ロードに行ってきます!

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もってのほか!

2013年10月18日 | のほほん同志Aの日常
こちらの日々の根なし草、
スタッフが交代で書いているわけですが、
とくに分担を決めているわけではなく、
なんとなく、フィーリングでやりくりしています。

とはいっても、互いの今の状況は互いにわかっているので、
なんとなく、今日は私の番かな…と無言の圧力がかかる、というのが実情。

たぶん、今日は私の番です、

なぜなら、ひとりはすでに昨日から
真夏のタイガース並みの「添乗ロード」に出ており、
もうひとりはきっと…今ごろ酔っぱらっているであろうから。

私はというと、9月の南米からつづいた添乗ロードが一息つき、
今週はすこうし余裕があるのです。

どれぐらい余裕があるかというと、
毎晩、菊の花をむしっておひたしにするぐらい、なのです。

この写真の菊、名前を「もってのほか」といいます。

先週たずねた山形で買ってきました。
山形県は食用菊の生産日本一で、
とくにこの「もってのほか」は菊の王様と言われているのだそうです。

皇室の御紋である菊を食べるなんて
「もってのほか!」
というのが語源だとか。

一袋350円という安さと、物珍しさで買ったのですが、
これがとてもおいしい。そして、けっこうな分量。

そこで今週は、月火水木金…と、毎晩、
菊の香りにむせながら、がくをとってゆでて食べる…
ということを日課のように続けています。

そのうち体から、かぐわしい香りがしてきそう。


さて、そうやって菊の花をむしゃむしゃ食べながら乗り切った1週間、
遅ればせながら本日、「旅サロン便り」10月号を発送いたしました。

行楽シーズンの10月ゆえ、いつもより発送が1週間ほど遅れ、
お客様からは、たくさんのお問い合わせとブーイング(!)をいただきました。

「来月は忙しいから、旅サロン便りはお休みします」

いつか、そう言ってみたいけど、言えないだろうなぁ。

もってのほか!と怒られそうで。



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チーズと、風呂焚き女

2013年10月16日 | 見かけだおしNのつぶやき
パッチワークの趣味の会の皆様に同行して、西脇のバス旅行へ
西脇と聞けば・・・・観光協会的には「日本のへそ」?

でも私は、真っ先に横尾忠則のY字路、そして
ウルフルズのトータス松本の出身地、となるのですが・・・

実は、特産品として『播州織』が知られており、
先付織物の生産では国内の70%をも占めるのだとか
NHKの「龍馬伝」で、袴に利用されたことで、話題になったそうです

地方の町並みは、私には見慣れた風景です
だいたい、こんな感じの空気感で生まれ育ちました
でも、懐かしさは皆無
まあ日本のどこにでもある郊外の町、
その程度の知識、気持ちで訪ねました

ましてや播州織の存在も知らない私でした
(故郷のお隣の国なのに・・・)

地場産業を盛りたてようと、新たな息吹が地域の活性に
ひと肌も、ふた肌も・・・
若い職人・芸術家が播州織の次なる展開を進めていました

訪ねた工房には、ここは北欧?と思うような
カラフルでポップな巻き糸が整列、ちょっとしたアート作品です
そんな洒落た、今風の感覚、そして個性的な若者が働く、
素敵な工房で、ふと目にとまったのです

それは、糸を巻きつける芯になる部分

糸を全て消耗した後の姿
段ボール地の厚い紙で、とんがり帽子の形をしています
それらが、ロケットのように幾重にも重ねられ天井高く突き出ていました

「あ~、懐かしい」

子供の頃、私の遊び場は工場でした
こうじょうではなく、工場(コウバ)ね

ジャングルジムほどの夢がありました

高く積まれた、巨大な段ボール
秘密基地のごとく、隠れ家であれこれ想像したものです
何を想像したかはすっかり忘れましたが・・・

そしてその基地にいつもあったもの
それは・・・・


工房の、赤髪のベリーロールの、ピンクの丸ほほ紅の
可愛いスタッフに尋ねました

「これって通常何て呼んでますか?」

業界知らずがわかるのかな?そんな顔で彼女はいいました

「ちーず」

え?やっぱり!!

じんわり、実家のことを、あのころを急激に思い出しました

両親は、メリヤス工場を営んでいました

工場(コウバ)には、いつも大人たちが発する
珍しい用語が飛び交っていました
その中で、特に忘れず記憶されていたのが

「チーズ」

食べ物の名前と同じってこともありますが、
そんな浮かれたことではなく
それ以上に・・・

子供の頃、私の日課は・・・「風呂焚き」でした
なんだか夏のキャンプみたいに楽しそうですが、

違います!

おしん時代の子ではない、一応、
平成もそこそこ近い時代の子供だったはずの私

でも父は、恐ろしく昔堅気の人でした
意味なく(そう今は思う)
たき火で焚く風呂が一番良いと思っていました

いくら田舎でも、すでにほとんどの家庭が
湯沸かし器なる文明の利器を享受していました!

多分、当時、特技を聞かれていたら
私は迷わず「風呂焚き」と、
いや違うな
「火をおこす速さ」そう答えていたでしょう

父は、最悪の人でした
自分が風呂に入りたい、そう思ったら、もう今なのです
待てない、いらっちの典型
そして、ものぐさなのです
(あ~私はこの血を受け継いだのね、いやだいやだ!)

だから、どんなに雪のちらつく冬の寒い日でも、
友人が来て部屋で談話していても、
ましてや明日試験がある日でも、
「勉強なんかすんな、はよ風呂沸かせ!」
「勉強したら死ぬぞ」
嘘ではありません、そんな人でした

忘れていました
本当に今日まで、実家のこと
私が、妙に風呂焚きがうまかったこと、を

風呂焚きの必需品
それが、そうなんです、専門用語でいう「チーズ」
糸を巻きつけていた芯だったのです
(実際は、ロール糸そのものの名称のようです)
父の工場には、これが溢れていました

これに火をつけてしまえばあとは楽勝
空気が通る空間を確保して、しばしの我慢
じわじわ
・・・・・
ぶぉっ!
はい、この音が聞こえたらもう安心
あとは薪をくべて、
お風呂が沸くのを待つばかり


当時、実家でも、そして今回訪ねた、
洒落た雑誌に載っているような工房でもあいかわらず、
子供の図工作品のロケットの素材に使われるような
円錐三角形の芯を、
「チーズ」とそう、呼んでいた



アート雑誌の載るような、こじゃれた雰囲気の中に
山積みしていたもの

早く出たくて、逃げたくて、そんな田舎の工場に
山積みしていたもの

同じ、意味不明の
「チーズ」の山でした

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