ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

高村薫という作家

2013-10-24 20:01:23 | 本のレビュー

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一週間ばかり前、買ってきたこの本・・・高村薫の「晴子 情歌」。 読み始めたのだけれど、何とも体力のいる本だなあ。 東北の寒村やら、漁船の作業風景、海をわたる風の描写など、いちいちが克明で、読むのが正直しんどい。 凄い物語世界だとは思うけれど、「面白い」とは正直、思わないし。 おまけに、これは上巻が始まったばかり--これが全2巻にわたって、えんえんと書きつづられるのかと思うと、ちょっと・・・。

でも、書いたのが、あの高村薫だからこそ、長編小説が苦手の私でも、読むのである。高村薫・・・日本が生んだ世界的な才能あふれる、社会派ミステリー作家と言っていいと思う。 他の作家は皆、好き嫌いがあるはずなのに、この高村薫という人には、誰しも深いリスペクトを抱いているらしい。 「マークスの山」から始まった合田警部シリーズが熱狂的ファンを持つことを視野においたとしても。

そして、私ももちろん、この作家に深い尊敬の念を感じている。 日本の現存する作家で、これほど尊敬を感じる作家は、他にいない。 最初、「マークスの山」で、ブレイクした彼女を、「リヴィエラを撃て」、「神の火」などと続けざまに読んでいくうち、その薫という名前を見、作品を読み、顔写真を見て「男性」だと思っていたのも事実(当時、友人も同じことを言っていた)。 細面の顔にメガネをかけた中性的な面立ちは、何かの研究者のようで、とてもこんな巨大なスケールの作品を書く、エネルギッシュな感じは受けないし。

しかし、私としては、やはり初期の頃の高村薫の方が、ずっと面白いと思う。だから、先ごろ評判になった「冷血」もまだ読んでいない。 残酷な殺人事件を加害者と被害者の両方から語らせるという手法も、重い感じがしたし。 でも、この作家についていくなら、いずれは読まなければならないだろう。 とりあえず、「晴子 情歌」だ。 

 


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