ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

2001年宇宙の旅

2013-07-28 11:40:40 | 映画のレビュー

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衛星放送で、映画「2001年宇宙の旅」を観る。これまで幾度も観ているのだが、何度観ても素晴らしい傑作! 原作のアーサー・C・クラークも映画監督のスタンリー・キューブリックもどちらも天才。この二人の天才がタッグを組んだ時、このような映画史上に残る作品が生まれたという訳。

ストーリーは今更言うまでもなく、有名だしある意味でとても抽象的なので、ここでは映画のディテールに関する部分のみを言った方がいいかもしれない。月の上で発見されたモノリスという黒い不思議な石板。地球上の物質でできてはいず、つるつると滑らかな鉱物でできているらしく、まるでオニキスを思わせるような輝きがある。この石板は、どうやら地球外文明の遺産らしいのだが、だれがいつ何のために、設置したのだろう?  

その謎を求めて、ディビッド・ボーマン始め数人の乗組員を乗せた宇宙船が木星へ旅立つ。人口冬眠で眠っている乗組員をのぞいて、船内で活動しているのは、ボーマンの他、デイブという同僚、ハルというスーパーコンピューターのみ。このハルというコンピューター、マニアの間ではすっかり有名になったけれど、ボーマンと交わす会話など人間臭く茶目っけたっぷりで、愛嬌がありすごく可愛い! ずうっと先の未来には、ほんとにこんなコンピューターができるんだろうか?

でも、現実は可愛いなどと言っていられず、彼が変調をきたし、反乱を起こしたせいでボーマン以外の乗り組員はみな死んでしまう。船長としての決断を自らに下したボーマンは、ハルの心臓部に入り、彼の回路を切断していくのだが、この時ハルの歌う「デイジー」の歌声が心に沁み入って、いつまでも離れない人は多いだろう。

そして、ひとりぽっちになってしまったボーマン一人を乗せて、木星をめざし、広大な宇宙空間を超えてゆくのだが、この時の映像が素晴らしい! 宇宙の美しい映像に「美しく青きドナウ」の音楽をぶつけてくるキューブリックのセンスも凄いとしかいいようがないけど。

最後、アメリカ東部の高級ホテルのスートルームを思わせる不思議な部屋にたどり着き、老人に化した自分の姿を見るボーマン。それはやがて死の床に横たわるボーマン自身の姿となり、彼は巨大な赤ん坊--スターチャイルドとなって青く輝く地球を見降ろしている。この謎に満ちた有名なラスト・・・これは本当に一度見たら忘れられない映画だ。多くの人が「難解でわからない」といったこのラストシーン・・・私はクラークのSFは名作「幼年期の終わり」を含め、幾つも読んでいるので、クラークがこの作品にこめたかったメッセージは何となくわかる。

今まで、映画を観た人も観なかった人もぜひ「2001年宇宙の旅」を読んでほしい。クラーク節としかいいようのない名文とともに、新鮮で広大な宇宙観が開けてくるはず。


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