二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

事実は小説よりも奇なり

2012年06月24日 | Blog & Photo

いつかも書いたことがあったが、不動産業をしていると、仕事柄じつにいろいろな人種・人物と出くわす。いちいちそのエピソードを書きとめていたら、キリがないので、めったに書かない。
笑える話より、困った話が多いから、読まされるほうは、おもしろくもなんともないだろう。
1ヶ月ほどまえにわたしが入居させた女性の居所を確認しに、刑事がやってきた。小学一年生の男の子と、三歳の女の子をつれた母子家庭。仕事は派遣業で、収入は低いが、家賃保証会社の保証がついたので、入居を許可した(=_=)

いったいどんな犯罪の容疑なのか?

過去にもこういったことは数回あったし、入管事務所の捜査官十人ばかりが、あるフィリピン人の身柄確保のため、一日中張り込みをしていたのに、本人は逃亡して、騒いだだけで終わったということがあった。
あるいはまた――いってみたら、家族が夜逃げをして、行方不明となっている。
部屋の中は、ゴミや放置された家具・調度が散乱し、足の踏み場もない・・・といったありさま。
さらに、ある物件では、自殺者が出た。
さいわいな(?)ことに、室内でやったのではなく、外で死んでくれたので、貸主も管理会社も、ホッと胸をなで下ろしたものである。

「事実は小説より奇なり」ということばがあるけれど、一年のうち、二回や三回こういった出来事に直面する(^^;) 新聞の紙面と同じで、明るいニュースより、暗いニュースが多い。

なぜ事実は、映画や小説より奇なのだろう?

いろいろな理由はあるが、その中のひとつに、事件はそこで起こっているのに、起承転結はきちんとしていないし、ジグソーパズルの大切ないくつかのピースがないから、真相の全容解明ができないというところがある。
「ああではないか、こうではないか?」
頭をしぼって、想像してみるのだが、所詮は推測・推定の域を出ない。

この春は福島県から突如、着のみ着のままでやってきた、クルマももっていない家族が、わずか三ヶ月で、旦那も奥さんもろくな仕事をした形跡はないにもかかわらず、立派な中古車を手に入れ、キャンセル料金まで支払って、喜々として福島へ帰っていった。
「補助金でももらったのかな? いったいどんな名目で? いくら?」
またつい一週間ばかりまえ、茨城県古河市から、つぎのような“お客様”が、飛び込みでやってきた。

Kさんということにしておこう、21歳、無職。
両親は離婚。母親は精神障害のため、病院に長期入院中。父親は行方不明。
1歳下の妹がいて仕事をし、収入があるからからそれを連帯保証人にする。
仕事は前橋へきてからさがすというのである。
「無職では、審査が通らないですよ」
「百万円の預金がある」
「念のためそれを見せてくれますか」
「通帳はなくしたので、キャッシュカードしかない」
「運転免許証はありますか?」
「免許証はもっていない。ただし、健康保険証がある」
そういって彼は、バッグからそれを出して見せた。
なぜ、前橋を選んだのですかとお訊ねすると、二つの理由をあげた。
1.S高校には定時制がある。働きながらそこへ通いたい。
2.インターネットでさがしたら月額18,000円のこの物件がいちばん安かったから。

家賃の安いアパートには底辺の暮らしをしている人びとがいる。
このKさんの場合は、父親が行方不明となってから、家賃の滞納がはじまり、強制退去をせまられているのである。そんな人物を拾いこんだら、厄介事を抱え込むようなもの。
結局はいまだ、お渡しした審査書類も、残高証明書も送られてこない(~o~)

「不動産屋へくるのではなく、市の福祉課の窓口へ相談にいったらどう?」
わたしはクルマの助手席にKさんを乗せ、前橋駅まで送りながら、そういった。
生活困窮者が年々ふえている。かと思うと、ウソをついて、生活保護費をせしめ、のうのうと人並みの暮らしをしている家族もめずらしくはない。
日本はまちがいなく、衰退の坂を転げ落ちているのが、これらのエピソードからあぶり出されてくる。いつどんな形で、どのあたりに踏みとどまるのか? この日本!
カッカしたり、苛立ったりしても、わたしひとりの力ではどうなるものでもない。

日記=blogにはめったに書かないけれど、わたしが身をおいている不動産業者は、こういった現実を相手に商売をしている。

さてさて――。
トップにあげたのは、前橋の中心地散歩で見かけたカフェの入口。
これは、えーと、童話ピーター・ラビットの背景画かな? ん、違うか?
すばらしい色と造作なのだが、周辺の景観とはまったくそぐわない(笑)。
中をのぞこうとしたが、あいにく定休日。ドアノブに掛けられた札を読むと、「ご連絡は○○町の本店のほうへ」と書いてあった。





ところでこれは、数日前、中之条でお遇いしたKさん、熊谷でお遇いしたIさんから届いた礼状で、上がKさん、下がIさん。
わたしはネット社会の住人だけれど、このお二人はそうではないというので、プリントアウトしたお写真に礼状をそえて郵送したのである。それに対する型通りの返礼だが、なぜか人間味があふれていて、あらためてホッとして頬がゆるんだ(^_^)/~

文字は自己流。だけど、その“自己流”が、なんと、なんと温かい書体をかもし出すことだろう。
「わたしの写真も、これと同じ“自己流”だな」
アハハハ~。
はがきを拝見しながら、そんな思いにしばらく浸っていた。

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