二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

二匹と一匹のキツネ(ポエムNO.37)

2011年07月31日 | 俳句・短歌・詩集

一編の詩と一枚の写真は恒星とその惑星のような関係にある。
・・・という考えにとりつかれたことがあった。
つい数日前のこと 
仕事のあいまによく冷えたおれんじジュースを飲みながら。
恒星が詩で惑星が写真であるのか
その逆であるのかはたぶんどうでもいい。
詩と写真のあいだには まだ発見されていない
あるいは永久に発見されることのない非現実的な物理的法則がある。
・・・ような気がする。

ぼくが作りだす詩と写真のあいだに
細長い稲妻型のすきまができてそこにいろんなものがひっかかり
ボロ雑巾のように折からの風にはためく。
小説家によって書きとめられたマルメラードフの末路であり
飼い主にすてられたあわれな犬の影であり
踏みつぶされほとんど原形をとどめぬクロヤマアリであり
それらのいずれでもないものが 風にはためく。

新たにうまれた仮想空間の景観を好む人びとが
近ごろずいぶんとふえている。
そこは気象条件がきびしいので
人びとはたくさんの上着のようなもの
あるいは下着のようなものを持ち歩く。
ただしそこでは食事ができずタバコが吸えない。
排尿排便はむろんのこと。
たまにヤブ蚊が飛んでいて
血を吸われるものが続出する。

ぼくが一編の詩 あるいは一枚の写真をそこに置くと
大勢の人がやってくる 足音や気配はないのに
管理画面のカウンター数字がそれをつげる。
上を見て 下を読む。
左を見て 右を読む。
これほど現実的な非現実はないし
また これほど非現実的な現実はない。
発生した世界をことにする二者のあいだに
議論がたたかわされたり 親密感がうまれたり。
帰り道をかえりかけて ぼくはもう
長いあいだ道草をくっている。
だれにもひとしく訪れるあの冬が近づいている
・・・というのに。

これほど現実的な非現実はないし
また これほど非現実的な現実はない。
ぼくの詩や写真は そういう世界のほうからやってきた。
「さて ぼくたちもそろそろキツネにもどろうか」
ぼくは詩や写真に明るく声をかける。
すると彼らは被り物をぬぎすて
そのページから抜けだし
真っ青な空の下 イラクサが生い茂る荒野へと疾走していく。




※いつものことながら、詩「二匹と一匹のキツネ」と写真「男をつれた犬」のあいだには直接的な関係はありません。

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