二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ドリトル先生シリーズを全作品読了する ~岩波少年文庫の12作ほか

2022年12月11日 | ファンタジー・メルヘン
このところレビューのUPが億劫になっている。モチベーションが下がっているのだ。
mixiでいえば“マイミクさん”をふやす努力をしたり、gooのブログも相互リンクをやったりした方がいいのかもね(現在は相互リンク0)。
さもないと、このままFade-outもありうる(´・ω・)?
そのときがいずれやってくるけど、遅かれ早かれ。

それはともかく、本3冊の簡単なレビュー(印象記)を、飽きもせず書いておくこととする。




■ヒュー・ロフティング「ドリトル先生の楽しい家」岩波少年文庫(井伏鱒二訳)1979年刊

これが最後の1冊である。もう岩波少年文庫でこのシリーズは読むことができない。
全12作(13冊)を営々と読んできた。
もちろんおもしろかったから読んでいる時間は、普段より奥行きを増していた・・・とおもう。
「ドリトル先生の楽しい家」には短篇が8篇収録されているが、いずれも期待以上の出来映え。じっくり腰を据えたつもりで、惜しみおしみ読み了えた。
岩波少年文庫をぞくぞくと買い足して、すでに20冊はとうに超えている。わたしを夢中にさせてくれる児童文学がほかにもあるはずだという思いにかられて(´Д`;)

岩波少年文庫が、リビングにいくつもころがっている。つぎはどれを読もうか?
あれこれと迷っているあいだに、ロアルド・ダールの本も、子供向け(評論社)と大人向け(ハヤカワ文庫)と、併せて10冊ばかりやってきている。
この冬も、撮影ではなく、読書三昧のシーズンになること、間違いない。

本編には、冒頭に「ドリトル先生とその家族」という、ヒュー・ロフティングの義妹でアシスタントを務めたオルガ・マイクルのエッセイがある。
このシリーズが、ドリトル先生をめぐる動物家族の物語であることを、オルガ・マイクルはその側面から雄弁に語っている。

女性はつねに脇役で、ロフティングはうまく女性を・・・人間の女性を描くことはできなかった。しかし、考えてみれば、ピピネラやポリネシアは雌だし、家政婦役のアヒルのダブダブも雌。
ほかにスズメのチープサイドの妻、ベッキーがいる。
人間では先生の妹のサラ、マシューの妻のテオドシアは存在感のある役どころである。
女性性でいえば、なんといってもピピネラは「ドリトル先生と緑のカナリア」でヒロイン、つまり見事に主役を演じきったけど^ωヽ*

本編「ドリトル先生の楽しい家」では、「犬の救急車」「迷子の男の子」が秀作である。
とくに「犬の救急車」ではお腹を抱えて、何度も笑わせられた。雑種犬ホームの犬たちが善意からめくらめっぽうやっているからおもしろいのである。生来の喜劇役者、ブタのジップがそこにからむ。
短篇としては短めの部類に属するけれど、ロフティングの腕はたしかである。

あーあ、とうとうドリトル先生シリーズが終わってしまったなあ、残念至極(^^;
これと比肩するつぎの作品を、児童文学から探さないとねぇ。





評価:☆☆☆☆☆





■陳舜臣対談集「三国志と中国」文春文庫 1995年刊

本書は100円の棚にあった。
陳舜臣さんの本は、今年の春、「紙の道 ペーパーロード」を買ったが未読で、寝室のベッドの脇に置いてある。ちょっと検索してみたら、集英社文庫に収録されていたので、読むとしたらこっちを手に入れた方がいいかなあ。

「三国志」といえば、中学・高校時代にポピュラーな吉川英治のものを二度読みして影響を受けた。
陳さんには「秘本三国志」があるけど、これまで視野に入ってこなかった。
文春文庫はBOOK OFFでよく見かける。しかし、文字が小さいのが高齢者のわたしには難点。中公文庫版は本屋にはなかったので、取り寄せしないと読むことができない。

本編には尾崎秀樹さんとの対談「三国志の魅力とは何か」をはじめ、9篇の対談(一つだけ鼎談)が収められている。

「文人が政治家になる条件」貝塚茂樹
「同文同種というけれど」武田泰淳

この2篇は傑出した内容を備えている・・・とおもわれた。
巻末に三国志要図、三国志人物本籍地別分布の図版がある。本籍地別分布にはやや虚を衝かれた。
「三国志」は現代でも、あまたの作家にリライトされて、多くのファンの支持がある。
「秘本三国志」を、全巻揃えようか、どうしよう(^^? )


評価:☆☆☆☆





■ゴールズワージー「りんごの木・人生の小春日和」岩波文庫(河野一郎訳) 1986年刊

「りんごの木」(The Apple Tree)は、ノーベル文学賞を受賞した、イギリスのジョン・ゴールズワージーが1916年に発表した中編小説。
いつ買ったのか覚えていないが、乙女チックな女性向けロマンだとかんがえて敬遠していた。角川文庫、新潮文庫には「りんごの木」だけが収録され、「人生の小春日和」は見送られている。

昨夜「りんごの木」につづいて「人生の小春日和」を読みはじめた。
しかしなあ。
人間関係が錯綜していて、添付された家系図もうまく頭に入らない。後日あらためてチャレンジすることにして、さて岩波文庫「りんごの木」である。

もっとべたべたした感傷的な物語だと予想していたが、そうではない。女性にとっては残酷極まりないお話ではある。
むしろ、男性にとって都合のいい、センチメンタルな中編というべき。
筋書きはネット検索にまかせるが、ゴールズワージーは自然描写がとてもうまいので感心した。

17歳の田舎娘を自殺に追いやったのは、主人公アシャーストなのだが、その事件は26年も昔のことなのである。
わたしは伊藤左千夫の「野菊の墓」を連想したけど、見当違いかなあ。

女性読者は、本編をどう読むのだろう。
男のナルシシズムを感じ取って、美化するのもいい加減にしてほしいと嫌悪する人もいるだろう。アシャーストはミーガン(河野一郎訳ではメガン)を捨て、その結果彼女が自殺してしまったことを、26年後に知る。
最後に近く登場する老人にはリアリティーがあり、道端にある小さな塚のいわれを語ることころは、涙をさそわれる。
メガンの純愛とアシャーストのうぬぼれ。

枝もたわわに
黄金の実をつけた
歌姫たちの守る
楽園のりんごの木

悲惨な結末を、この詩に仮託して想像力の中で飛翔させたゴールズワージーの手腕は、なかなかのものであった。


評価:☆☆☆☆

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「やわらかな生命」と「フォ... | トップ | 長いあいだの懸案だった本を... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ファンタジー・メルヘン」カテゴリの最新記事