二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

バラが咲きバラが散る(ポエムNO.2-35)

2014年05月25日 | 俳句・短歌・詩集
バラが咲きバラが散る。
通勤途上の道端で あの人の瞳の奥で。
いやおうなしに時間の波間をはこばれていく。
子どもたちの甲高い声が聞こえる。
もうとっくに黄ばんでしまったキャンバスの中で
あの人はいつまでも微笑んでいる。
モナリザなんかには少しも似ていないけれど
ぼくはいつだって あの日の可愛い笑顔を思い出すことができる。

夢のようだね。
夢のようさ。
痛かったね。
痛かったさ。
あのときの数百万で
ぼくは世界中を旅して歩けた。
鳥の巣を抱いたケヤキの老木が
風にあおられてさわさわ揺れ ことばにならない会話をしている。

田んぼの畔に腰を下ろし
ぼくはそれを見ていた。
まだ若かった父親があきもせず 農機具を運転し
代掻きをしているのを。
まぶたの裏に焼き付いたさまざまな光景が
色とりどりの小型機のように空に舞い上がる。
秋には秋の 春には春の
そうさ ぼくらは歳時記の中の小さな登場人物。

そのことにいまごろ気がつくなんて。

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