二草庵摘録

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迷走の生物進化論 ~池田清彦「進化論の最前線」を読む

2022年09月26日 | エッセイ(国内)
■池田清彦「進化論の最前線」インターナショナル新書(集英社) 2017年刊

池田清彦さんの本はいくつか持っていて、これまで読みかけたことがあるけど、なぜか最後のページまでお料理をおいしくいただいた覚えがない。
ファーブルの「昆虫記」の新訳をお出しになっている。それはそれで、2-3冊は手許にあったはず。養老孟司さんとの対談だか座談会もあったなあ(´Д`)
この人のお書きになるものは、牽引力が少し弱いという気がする。独断と偏見を交え、もっとずばずば切り込んで欲しいのに、ブレーキをかける。反語的にはとても良心的。

池田清彦さんと福岡伸一さんは、生物学に興味をもつ読者にとっては、意識しないではいられない物書きさん。肩書では生物学者、評論家と名乗っておられる。
参考までにWikipediaをみると、
《「構造主義」を生物学に当てはめた構造主義生物学の支持者のひとりとして知られている。また、科学全体に構造主義を当てはめた「構造主義科学論」も唱えており、その視点を用いつつ科学論、社会評論等も多数行っている。
昆虫採集マニアでもあり、昆虫についての著作も多い。》
とある。

そういえばこのあいだ「メスの流儀オスの流儀」(静山社文庫)というのを買ったけど、積読のまま(^^; 何だか戯作っぽいので、キラクに読み流せると思っているのだが。
本書「進化論の最前線」は、タイトルからしても真っ向勝負で力が入った著作とお見受けした。

《誰も言わなかった「進化論の大問題」!
ファーブルのダーウィン進化論批判から、iPS細胞・ゲノム編集など最先端研究までを論じる。
養老孟司氏(東京大学名誉教授)推薦!
「進化をわかった気でいる人たちにぜひお勧め」
現代進化論の主流派であるネオダーウィニストたちは19世紀のファーブルの批判を、いまだ論破できていない。果たして我々は本当に進化について理解しているのか。進化論と生物学の最先端を解説する。》BOOKデータベースより

ついでに目次も引用させていただく。

第1章:ダーウィンとファーブル
ファーブルの進化論批判/アラメジガバチの狩り/ファーブルとダーウィンの交流……
第2章:進化論の歴史
ダーウィンとウォレスの共通点/『種の起源』は、どのような本か/自然選択説の大前提……
第3章:STAP細胞は何が問題だったのか
iPS細胞は何がすごいのか/ES細胞はそれほど驚くべき技術ではない/STAP細胞はまったくの荒唐無稽な話ではない……
第4章:ゲノム編集とは何か
医学に革命を起こす「ゲノム編集」/画期的な遺伝子改変技術「CRISPR/Cas9」/ゲノム編集の問題点……
第5章:生物のボディプラン
哺乳類は爬虫類から生まれた/哺乳類はシステムの枠内で様々な変更を行ってきた/人類がさらに進化する可能性……
第6章:DNAを失うことでヒトの脳は大きくなった
人類の脳が大きくなった原因/遺伝子の発現を調節するマイクロRNA/人類が言葉を獲得したのはいつか……
第7章:人類の進化
ネアンデルタール人と現生人類は交配していた?/言語の遺伝子と言われる「FOXP2遺伝子」/人類はほとんどクローンに近い……

本書の紹介としてはこれだけで十分だろう、わたしの出る幕はほぼない(。-ω-)
ただ、良心的なだけに、素人から見れば歯切れが悪いのは否めない。“わかっていること”より“わかっていない”ことの方を見極めることに力をそそいでおられる。
わたしが知りたかったのは、ES細胞、iPS細胞研究の“いま”。
あれほどマスコミで大騒ぎされた研究成果が、座礁しかかっていることを、本書において思い知らされた。遺伝子組み換え、ゲノム編集をふくめ、生命現象の内奥を自由自在にコントロールできるはずがないと、本書は告げている。

そのことを知り得ただけでも、本書の一般読者にあたえる影響力は無視しえない。
あと一歩踏み込んでくれたら・・・という願いは、50年100年のときの経過を必要とするのだろう。
ネオダーウィニズムの現在。一見迷走しているようにも素人目には見えるが、それを検証してくれたという意味で、本書「進化論の最前線」は価値ある一冊になった。
決してつまらなくはなく、おもしかったです♪



評価:☆☆☆☆

※ 本稿を書いたとき、奥本大三郎と池田さんをごっちゃにしていた。
ファーブル「昆虫記」の翻訳で令名が高いのは、池田清彦先生ではなく、奥本大三郎先生。
まだボケる歳にはなっていないのですが・・・。
こちらがウィキペディア↓

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%A5%E6%9C%AC%E5%A4%A7%E4%B8%89%E9%83%8E

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