二草庵摘録

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戦争論2    小林よしのり

2010年02月21日 | 対談集・マンガその他
戦争論」がおもしろかったので、この「2」を買ってきて、読むことになった。
マンガ=サブカル=エンタメというわたしの偏見を、またしても、見事に吹き払ってくれた一冊として、高い評価をあたえたい。
「第1章 同時多発テロはアイデンティティー・ウォーである」というところを読んだだけで、小林さんの主張の方向性がはっきりする。その方向性とは、乱暴ないい方をすれば、「日本人よ、ジャーナリズムを席巻しているサヨク売国の徒がたれ流す自虐史観から脱して、みずからのアイデンティティーの在処を見つめ直せ」ということにつきる。

彼はじつに精力的に本を書いている。「靖国論」「平成攘夷論」「天皇論」などをじっくり読んでからでないと、うっかり評価はしないほうがいいかな・・・というためらいも、わたしの中に、ないとはいえない。
あるいは、この声は、林房雄の「大東亜戦争肯定論」にどこか通底するものがある、と考えることもできる。
『「肯定論」の中心をなす主張は、幕末のペリー来航以来の日本近代史を、アジアを植民地化していた欧米諸国に対する反撃の歴史、「東亜百年戦争」と把握している点にある』(ウィキペディア「林房雄」)
林さんは、日本軍が満州や朝鮮でおこなった行為にはかなり否定的であったようだが、小林さんの歴史認識は、もっと徹底している。

全18章は、どれも力作で、読み応え十分。緊張感、いや緊迫感が、最初から最後まで途切れることなく持続しているからである。わたしがとくに共感したのは「第7章 『世論』を作るテレビ・新聞の善良主義の正体」「第15章 日本はなぜ戦争をしたのか?」「第16章 パールハーバー」「第17章 過去を裁く現代人の驕り」あたり。資料はよく調べてあるし、主張に一貫性が感じられる。前著「戦争論」から、3年半かかったのは、こういった基礎作業をおろそかにしなかったからだろう。

パールハーバーへの奇襲によって、日米戦争がはじまる。
「リメンバー・パールハーバー」は、いまだアメリカ的ナショナリズムの合い言葉で、ニューヨーク・テロのときにも囁かれていたはず。しかし、「ニイタカヤマノボレ 一二〇八」の暗号電を事前にキャッチしていたとしたら、あの戦争に対する見方は180度変わってしまう。経済封鎖やハル・ノートで日本を追い込み、「さきに手を出したのはそっちではないか。われわれはそれに応戦せざるを得ない」という大義を手に入れ、アメリカの世論を味方につけたうえで、日本を木っ端微塵にたたき、アメリカのアジアにおける覇権を確立する。

つまり「正義はアメリカ(政府)にあり」と、自国民や西洋諸国に信じ込ませる巧妙な戦略があったのだ、・・・ということになる。現代では、アメリカの正義は、テロ撲滅と、グローバル化=世界標準という理念にとって換ったとはいえ、構造的には同じように、先進国の広域で機能しているのである。小林さんは、そういった欺瞞と、大国のエゴイズムを執拗に衝いて、批判している。

mixiのレビューを眺めていると、小林さんの支持者がたいへん多く、高い評価をえているのがわかる。

『戦争論2も必読です。大東亜戦争について、無知すぎた。中国や韓国にあーだこーだ言われ情報操作された教科書の知識なんか捨てて、日本人としての誇りを取り戻そう。 戦争論を歴史の教科書にするべき。』
『小林よりのりの信者として、全面大賛成です。 これは小・中学校の歴史教科書に指定すべきではないでしょうか? 今日は、終戦記念日でもあり、お盆でもあるので、祖父の霊と共に読む気持ちで、残った後半を読破しました。』

既成の右翼、左翼の上に安易にのっかるのではなく、歴史資料を取捨選択し、説得力ある独自の論を展開している。マンガだから、・・・なのかも知れないが、単純化は、訴求力パワーとなり、読者を巻き込んでいく。

すごいな、勇気がある、とわたしは思う。どう考えても極右(ウルトラ・ナショナリズム)と判断せざるをえない主張も多く、これでは外国と今後どうつきあっていったらいいのか、いささか心配にもなる。
また「いまでも日本は明治維新と同じような思想課題に直面しているのだなぁ」という感慨がわく。小林さんのこの姿勢は、幕末の尊皇攘夷の志士に、驚くほどよくにているからである。
大義なき時代の混迷に対する警世の書。
しかし、こういった歴史認識には、社会科学的な意味での客観性は存在しない。
「自分はどんな生き方を選ぶのか」という倫理的な問題と不可分なのだ。そのことを忘れないほうがいいだろう。


評価:★★★★☆(4.5)

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