世の中、まったく予期せぬ出来事というのが起こるものである。
上の写真がそれ。
空き時間を使ってPENデジだけをもって、モードはiAUTOにし、以前一度だけ訪れた前橋市総社町界隈をぶらぶらしていたときのこと。
電車が近づいてくる轟音が、遠くから聞こえはじめた。
「ん？ なにがやってくるんだろう」
SL特有のあの機械音が耳にとどいたのは、SL出現の数秒前。
「わぉ！ SLだぞ！」
PENデジの液晶ファインダーにそれをとらえたのはいいが、大あわて。
こいつが現れるとわかっていたら、もっといい撮影ポイントをあらかじめ探しただろうし、モードを連写にしていただろう。そいつはわたしの予測より、はるかにスピードが出ていた。たぶん、時速60km・・・くらいは。
カメラ散歩をしていると、世界は偶然や、予測できない事象に満ちていることがよくわかる。出会いというけれど、むしろ「遭遇」というべきだろう。
このスピードを予測できなかったのは、わたしばかりではなく、カメラだって。
ISO：200
シャッタースピード1/100
絞り：F5.6
焦点距離：29mm
雨模様の薄暗い夕刻だったので、ISO400以上にすべきである。SLがブレすぎ(^^;)
そのつぎに写した客車のショットではスポーツモードに切り替わっていて、ISO640、F4.8、シャッタースピード1/500となっている。
この付近は、以前にもいっぺんだけ歩いている。だけど、時間がなくて、途中で切り上げてしまった。わたしにとっては、その続編となる。
すぐ西側に「大屋敷遺跡」という縄文・弥生時代の住居跡があり、高低差の大きい、とても複雑な地形をしている。
その下は幅10mほどの水路が流れている。両側は5～6ｍの切り岸。江戸末期に開削された農業用水らしいが、前回きたときには、ここが水路だということに頭が回らなかった。
「ずいぶんと複雑な、おもしろい地形だなあ」
水路は暗渠になっているから、うっかりしていると、ここが川の上だとは気が付かない。
タイムスリップしてしまったような光景。
付近を南北にこの大きな水路が貫流し、その上を東西に小さな水路が横断している。何本かの道路が交差し、上越線が通っている。SLはこの上越線を、南に向かって走ってきた。
郊外といえるような地域ではないが、おそらくは昭和40年代、50年代に、徐々に人家がふえたものだろう。いたるところに、そういった面影がある。
江戸期からの橋があるという標識があったので、通りがかりのおじいさんにお尋ねすると、「えーと、どこかな、橋は。おれが子どものころはあったんですよ。この下は川だから」
そのひとことで、謎は氷解した（笑）。水は利根川からやってきたもの。本流からは2kmははなれているだろう。
なかばタイムスリップしながら、じつに興味深い地形が、よくのこっているものであると、感無量の三毛ネコさんであった(^^;)
ところで・・・。
昨日帰りがけに本屋さんへ立ち寄って、ロベール・ドアノー（Robert Doisneau）の写真集（株式会社クレヴィス刊 2000円＋税）を買ってきた。
ドアノーの写真集は、リブロポートから刊行されている写真集のうち「パリ」「子どもたち」の2冊をもっているから、これが3冊目。
詳しくリサーチしているわけではないけれど、写真の中には「パリ写真」というジャンルが、いつのまにか出来上がっているようである。
アボットが発見したウジェーヌ・アジェを草分けとして、21世紀の今日まで、脈々と生き続ける「パリ写真」の伝統。日本人のものでは、わたしは最近、市橋織江さんのパリや、藤田一咲さんのパリ、田中長徳さんのパリを手に入れている。
パリ写真といえば、ブラッサイの「やさしいパリ」「夜のパリ」があるし、アンリ・カルチェ=ブレッソンや、エド・ヴァン・デル・エルスケンのパリなどがよく知られている。
若いころからそれらの写真に接し、あこがれてきたわたしは、つぎの一枚がどうしても、ほしくてたまらなくなったのである。
キャプションには、こう書いてある。
「初めて買ったローライ・フレックスで撮ったセルフポートレイト 1932年」と。
ローライフレックス・オリジナルがフランツ・ウント・ハイデッケ社から発売になったのが、1929年。1932年には、ローライスタンダードが誕生する。若き日のドアノーがかまえているのは、後者の機種のように見える。
このとき、ドアノー、弱冠20才！
現在45万枚のネガが遺族のもとにのこされているという。
☆mixiアルバム「Beautiful Wind（上州風）Part3」に、新作29枚をアップしました（友人の友人まで公開）。
http://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000061425874&owner_id=4279073
