書評をアップしようとして、レビュー欄をのぞいたが、バルザックの「ウジェニー・グランデ」がない。この作品を読もうとしたら、古い文学全集を買ってくるか、高価な「バルザック全集」を手に入れるしかないのか・・・と思ったら角川文庫で見つかった。「純愛」という、口当たりのいいタイトルになっているけれど、売るためには仕方ない戦略なのだろう。
「赤と黒」スタンダール 1830年
「ウジェニー・グランデ」バル . . . 本文を読む
「ゴリオ」につづいて「毬打つ猫の店」を読みおえたので、感想をまとめておこう。
本書は「ゴプセック」「毬打つ猫の店」の二編が収められ、「ゴプセック」のほうは、数週間まえに、読んであった。
「ゴプセック」
高利貸しゴプセックは、バルザックが生み出した、もっとも酷烈かつダークなキャラクターのひとりだろう。読みおえてから、この男が頭の隅に乗り移ってきたかのような不気味さを感じた。金銭に対する非情 . . . 本文を読む
はじめは集英社の世界文学全集(高山鉄男訳)で読みはじめた。
年末年始休暇なので、リビングでごろごろしたり、夜はベッドのなかで読み続けた。
ところが、寝そべって読むには、こういった本は、重いし、大きい。
たしか、・・・と思って、年末に本棚のあちこちを探したが、見つからなくて、またこの新潮文庫版を買い直した。
本書は過去に二度、挫折した経験がある。
最初は二十歳前後で、数ページめ、つぎはそ . . . 本文を読む
「私は、『ホーキング、宇宙を語る』が、これほどの成功をおさめるとは予想していませんでした。しかし、それを書いた後で、もっと理解しやすい異なったタイプの本を書く可能性が残されていることに気づきました。そこで、本書では長い文章を書くかわりに、イラストや図版を多くし、その説明を丁寧に詳しくするようにしました。私は読者の皆さんと、これまでなされた数々の発見と描きだされた宇宙の姿への驚嘆を共に味わいたいと考 . . . 本文を読む
ずっと以前から気になっているのに、なかなか取りかかれない小説家がいる。
フランス文学では、わたしの場合、バルザックがその代表格である。
はじめて本を買ったのは、たぶん高校生のころ。河出書房のグリーン版世界文学全集で「幻滅」を、中央公論「新集世界の文学」で「従妹ベット」を、あるいは岩波文庫で、バルザックの短編集などを何冊か買って、書棚にならべてあった。
手に入れてしまうと「自分のものになった」 . . . 本文を読む
内田さんの本は、知り合いにすすめられて小林秀雄賞を受賞した『私家版・ユダヤ文化論』を読みはじめたが、わたしの関心の方向とずいぶんずれているがわかって、途中でやめてしまった。
にもかかわらず、こちらは一気呵成に読みおえることができた。
ユニークな論点が提出されているわけではない。わたしが内田さんの「世界」に慣れていないからかもしれないが、ユダヤ人論や、教育論、武道論などが混在し、読後の印象はつ . . . 本文を読む
本書は単発で各雑誌に発表されたエッセイを一冊にまとめたもの。単行本は1993年、筑摩書房刊とある。
このところ、たてつづけに鹿島さんの本を読んでいるけれど、本書もなかなかの出来映え。ゴーゴリ、ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフあたりを通じて、あるいはシャーロック・ホームズを通じて、19世紀のロシア、イギリスには関心をもちつづけてきたけれど、鹿島さんのおもしろさを発見したことで、フランス文学 . . . 本文を読む
12月後半に入って、仏文学者、エッセイスト鹿島茂さんの書物をずいぶん買った。
大型書店で手にできるものはそろえたが、品切れもあった。そのほとんどは、近所のBOOK OFFの棚にならんでいた。
わたしの場合、フランス語は話せないし、フランスやフランス文学を意識したことすら、ほとんどなかった。
けれど、それで本書のおもしろさがそこなわれることはない。
60のイラストと、それに添えられたコラム . . . 本文を読む
ウォルター・ベンヤミンをまったく読んでいないわたしが、本書のレビューを書くなど、無謀なくわだてもいいところだが、やっぱり書かずにはいられない。
いくらか変わった本書のタイトルは、つぎのような文節からとられている。
「弁証法的思想家にとって肝要なのは、世界史の風を帆に受けることである。思考するとは、こうした弁証法的思想家にとっては帆を張ることを意味する。どのようにその帆を張るかが問題なのだ」( . . . 本文を読む
今世紀にはいってから、論創社、藤原書店の2つの出版社からエミール・ゾラの作品集が刊行された。本国フランスの文学事情は知らないけれども、わが国でゾラの文学の見直しがすすんだのだろう。ゾラ=自然主義という、なかば公式化した文学史上の見解にひびが入り、読み応え十分、・・・果汁と香りに満ちあふれた小説群が飛び出してきた。
本書の主人公はフロランという共和主義を掲げる政治的青年。
1851年、ルイ・ナ . . . 本文を読む