考える方法 と 行き詰った時の解決法 1
考える方法 と 行き詰った時の解決法 2
考える方法 と 行き詰った時の解決法 3
の続きです。
小2の女の子たちのグループレッスンの話。
このグループのメンバーのほとんどは、想像力豊かで創作活動が大好きな子らで、
これまではいろいろなアイデアを実現するのに、一致団結して取り組んできました。
それが最近になって、「今回、何がやりたいか」の意見が割れたまま
話し合いが長引いて、ようやく活動し始めたと思ったら、
「勉強の時間がきてしまったから終了~!」という不完全燃焼状態が何度かありました。
年齢が上がるにつれて、興味の違いや得意なことややりたいことの能力差などが
はっきりしてくる上、積極的に自分の意見を主張するようになるので、
こういうことはよく起こるのです。
先日も、こんなことがありました。
Aちゃんは、「家に持って帰れるようなものを作りたい。工作がしたい」と言い、
Bちゃんは、「他のグループがしたという部屋を真っ暗にして影絵をしたり
実験をしたりする活動がしたい」と言い、
Cちゃんは、「わたしは昨日の晩から、明日のレッスンで何をしようかと考えていて、
どうしてもピンとくるのがないからお母さんに相談したら、マラソンはどう?って
アドバイスされて、それ面白いなって思ってたのよ。
箱で街の中を走るマラソンのコースを作って、ぜっけんをつけた人形も作って、
下から棒で動かすか、上からひもで吊って動かすか、どっちかにするの」と
言いました。
Cちゃんの「マラソン」というアイデアの今の時期にマッチした感じは、
他の子らの心を動かしたようで、
とりあえず、「マラソン大会」をテーマにすることで意見がまとまりだし、
「マラソンでいいのはいいけど、部屋を暗くするのは今日したいから、
部屋を真っ暗にしてマラソン選手が走るところを
ライトを当てて見せたらどう?」とBちゃんが言い、Aちゃん、
Cちゃんがそれに賛同しました。
そこでわたしは、「以前、ひとつだけの人形に360度違う方向から光を当てることで、
影が壁面を動いていくアイデアでマリオのゲームを作った子らがいたよ」と言って
それを実演してみせましたが、ちょっぴり不評……。
「ブロックで壁を作るのは箱でするより大きくできるからいいけど、影じゃ嫌。
ひもで人形を吊ってコースを回らせたい」とのことでした。
さあ、何から作ろうかという段になって、それまで黙っていたDちゃんが、
「今日はゲームがしたい」と言いました。
これがおふざけ好きでいつも言いたい放題の他の子の言葉だったら、
わたしも、「そろそろ決めないと活動時間がなくなっちゃうから、
今日のところは妥協して、ゲームは次回ということにしたら?」と
諭していたはずです。
でも、いつも自分を抑え気味で、
友だちの考えに同調しがちなDちゃんの主張だったので、
話し合いをもう少し見守ることにしました。
Dちゃんは、他の誰も味方がいない中、「絶対、ゲーム」と言い張って
折れる気配がありませんでした。
そこでわたしが助け舟を出して、
「工作だけなら、さっさと終わらせてゲームをするという手もあるけど、
部屋を真っ暗にして作ったマラソン大会の様子を演出するとなると、
大がかりすぎて、とてもゲームまでは手が回らないわ。
どうしてもゲームがしたいなら、真っ暗な部屋でできるゲームを考えなくちゃ。
それなら、マラソンを演出するついでに遊べるだろうから」と言いました。
すると、あれっという展開になりました。
みんなで暗闇でゲームを楽しむ方法を真剣に考えだしたのです。
かるたやトランプでする遊びをライトで探すのはどうか、
色水ボトルにライトを当てて長い光の筋を作ることを利用してゲームができないか、
目隠しなしで目隠しが必要なゲームができるのではないか等々……。
ただ適当に意見を言うというのではなく、
Dちゃんも他の3人も納得できて、かつ、これまでに誰もやったことがないような
面白いことを考え出してやろう、という高揚した気分で、考えることに
集中していました。
結局、その日はアイデアを練るのに時間が取られてしまい、
慌てで制作に入ったものの、作業が波に乗りだしたところで
学習時間になってしまいました。
帰り際に、「話し合いばかりで完成にこぎつけない状態が続いたら、
つまんないでしょう?
次回はどんなことがやりたいのか先に考えていらっしゃい。
それと、いつまでも決まらないようなら最悪の場合、じゃんけんかくじびきで
決めるわよ」と釘をさしました。
すると、未完成のまま作業を中断したことがよほど堪えたのか、
これまで一度として、じゃんけんやくじびきで物事を決めたことなどない
このグループの子ら全員が、「次はくじびきで決めたい!」と言いました。
やれやれ……。
自由に自分たちで意見を言って、何をしたいのか決められる状況は、
それぞれの意見が噛み合わなければ、何も決まらず活動に移せない
不自由につながるリスクがあります。
そんなふうに何回かに一度は、こうした『失敗』に思える日があっても、
最初から私が何をするのか決める形は避けたいし、
じゃんけんやくじびきは最終手段で、時間が許す限り、話し合いでの
解決をめざしています。
この頃の子には、たくさん自由があるようで、自分がやってみたいことを
言葉にする場もそれを実行に移せる時間も皆無に等しいですから。
それにしっかり耳を傾ける姿勢を保ちたいのです。
そうはいっても、教室に来る日を心待ちにしていた子らが、
それぞれ手がけたことを完成までこぎつける十分な力とエネルギーを持っているのに、
「最後までやりたかった」と残念そうに帰宅するのを見ると、
もやもやする思いが残ります。
でも、実際には、そんな不完全燃焼に終わった日こそ、後から
「あれは非常に貴重な時間だった」と振り返ることが多いのです。
この日、「さぁ、作ろう!」という段になって、振り出しに戻って、
「何をするか」から話を蒸し返すことになったことで、
大きな時間のロスをしてしまったのは確かです。
話し合いが長引き、なかなか作業に入れないことにも、結局、
未完成に終わったことにも、みんないささかうんざりしたことでしょう。
その「うんざり」の正体は、工作上の難局のような遊びの一部ではなく、
問題集にあるような教師が作った課題でもない
子どもたちにとって「現実の何とかしなくちゃいけない問題」です。
現実の問題だからこそ、予定通りに物事が進まなくてうんざりするような
停滞を生むのですが、そこでぐずぐずと時間を無駄にすることは、
ある意味でとても大事なことじゃないかな、と感じているのです。
現実の障害物は、必要は発明の母じゃないですが、
「それまで考えたこともないような議題で本気の知恵を絞る」という経験の
きっかけになりますから。
この日の出来事を思い返しても、子どもたちは
暗闇でゲームをする方法を考えている時に一番本気モードになっていたし、
考える楽しみに浸ってもいたのです。
この日、子どもたちに、
「2ひきの恐竜にとっくみあいをさせるにはどうすればいいでしょう?」
という問いを投げかけたのですが、このグループの子らは、
この問いに対して他のどのグループの子らより強い関心を示し、
いろいろな意見を出していました。
また、家に帰ってからもこの問題を探り続ける子がいたそうです。
わたしたちは、目で見える作品や完成度のようなものだけで
時間や経験を評価してしまいがちですが、
うまくいかない状態でしっかり知恵を絞ることや、
知的な探究心に動かされて、頭を使う見えない時間も大切にしたいと思いました。
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『めばえ』の付録の自動販売機。
ボタンを押すとジュースが出てくるしかけが面白くて、
小さい子も大きい子も繰り返しボタンを押しています。
大人だって、「どうしてでてくるんだろう?」と不思議な心地になる
このおもちゃ。
種明かしをすると、押しボタンの先にスポンジがついています。
スポンジは押すと縮むし、押すのをやめると戻ってくる
誰もがよく知っている弾力性のある素材。
それに穴の泣いたスイットボタンをつけることで、
押してスポンジが縮むとジュースが落ちる穴ができて、
押すのをやめると、スポンジに邪魔されてジュースが出てこない。
それにしてもプニプニした触感ってどうしてこう何度も
押してみたくなるんでしょうね。
年中のAくんと自動販売機作り。
ヨーグルトの空きパックで作ったスイッチボタンを押すと、
ジュースが出てくるしかけ。
スイッチを押す前は、スポンジで穴がふさがれています。
となりにゴミ箱もつけて、完成です。