虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

『好き』なことを一生懸命すること

2013-12-01 18:30:08 | 日々思うこと 雑感




ずいぶん前のことですが、
毎日新聞の『女の気持ち』という読者の投稿欄に
小学生の娘とのやりとりを載せていただいたことがあります。

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ある時、娘が真顔で
「わたし、マンガ家になりたいんだけど、どうすればいい?」
とたずねてきた。

これは確かな答えを出してやらねばと思い、
少し考えをめぐらせてから、おもむろに答えた。

「それには、たくさんマンガを読むことでしょ。
それから、たくさん描くことでしょう。」

言った先から、自分の答えにふきだした。

というのも、娘がマンガばかり読んでいる姿を見ては
読書量が少ないのを心配し、
教科書もノートもマンガの落書きばかりで きちんと勉強しているのかしらと
ため息をついていたからだ。

「マンガを読むことと、描くことを生活の中心に据えなさい」

という私の勧めに従った娘は、
不思議なことにマンガ以外の本もよく読むようになり、
勉強やほかでの活動に精を出すようになった。

娘が言った。
「お母さん、わたし将来マンガ家になれるかどうかはわからない。
でも、ひとつの夢をかなえるには、いらなさそうなことも
必要だもん」
娘なりに、自分の質問への答えを見つけたのだった。

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この記事のことを急に思い出したのは、
先日 購入した『働く理由』(戸田智弘 ディスカバー・トゥエンティワン)
という著書で、養老孟司氏のこんな言葉に出会ったからです。

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自分が好きなこと、それしかやらない。
そう決めるのは自分である。そう決めてちっとも差し支えない。
ただ現実には、好きなことをするために、
ほかのいろいろなことをしなくてはならない。
それも好きになればいい。
それ以外に、好きなことはじつはありはしない。
好きなことはただ頭のなかにあるだけのものではないからである。(中略)
本当に好きなら苦労はいとわない。
苦労が苦労ではないからである。
苦労したくないなら、結局それほど
「好きではない」のである

養老孟司 (日本経済新聞社「世相ひとひねり」)
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娘が、ひとつの夢をかなえるには、いらなさそうなことも
必要だ……と気づいたのは、もちろん、養老氏の文章を目にして反省したからなどではありません。
実際に好きなことにしっかりコミットメントしようとすると、
即座に、
「好きなことをするために、
ほかのいろいろなことをしなくてはならない。」
という現実にぶつかるものなのでしょう。

だから……子どもが先々困らないようにと、
「将来役立ちそうな
あれやこれやの訓練を早いうちから仕込んでおく」より、
まずは「好きなこと存分にやらせてみる」方が、
子どもが精神的に自立しやすいな~と感じています。

虹色教室の生徒の小1の★ちゃんの親御さんから次のようなコメントをいただきました。
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わが娘たちは、なかなか工作に入れ込むことがないようでしたが、少しずつアウトプットの芽が出てきたかもしれないです。

てっきり、絵画や工作だけかと思っていましたが、そうでもないですね。

小1の長女は作文(物語創作)で、目を輝かせるようになりました。
4月から年少の次女は、まだまだ目移り多く、親を頼ることばかりですが、
下手だったハサミを(親に頼まず自分で)長時間持つようになりました。

瞳をキラキラさせているのを見ると、
こんなことが好きだったのか、
と驚くほどです。
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★ちゃんが教室に通い始めたとき、何をするのも乗り気でなく
退屈そうにする姿がありました。
それが何回か通ううちに、キラキラするスパンコールを使った工作や
毛糸を使ったお人形の制作に夢中になるようになりました。
そうして、教室に着くやいなや「今日は○○が作りたい」と意思表示し、
一分一秒を惜しむくらい熱心にものづくりに励むようになっていました。
そうしていろいろ作って遊んだあとで、★ちゃんは自分が物語りを作ることが大好きなことに気づいたようなのです。

まず『好き』なことを一生懸命してみること

その先には思いもかけない発見がたくさんあるものですね。


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