虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自分の気持ちを簡単に捨てられてしまう 6

2017-07-21 13:07:11 | 日々思うこと 雑感

説得作戦、歌作戦、

10円玉で誘いだす?

100円玉で誘いだす?踊り作戦と、

名案、愚案がいろいろ試される中で、

みなが足止めされ、効率的な日常の流れから切り離されたまんま、

それを見守る大人たちは常識と非常識の際

日常と非日常の境界線上に立たされていました。

 

他者に迷惑をかけるということに気にかけたり、

互いに迷惑をかけあいながら生きる自分を意識したり、

待つことや見守ることが困難な世界で暮らしているということを

感じ取ったりしながら。

 

そうやって、ひとりの子の存在に待ったをかけられて、進むのを

やめたとたん、他のひとりひとりの子についても、

その時々の断片的な姿ではない「その子」というのが浮き上がってきました。

 

最初に、両手を腰に当てて、鼻息荒く、

「みんなの使うものなのに、ほかの人が入れないようにしてしまうなんて、

本当に悪いよ。」「自分たちだけの部屋じゃないのに、自分たちだけで使うなんて、

悪い人たちだよねー。ねー」と訴えてきた

年長のEちゃんFちゃんの女の子ふたり組は、昨日初めて顔を合わせたばかりでした。

どこに行くのも連れだって行動し、

「ねー」「ねー」と言いながら顔を見合わせていた仲良しふたり組ですが、

親しくなったきっかけは、Eちゃんの

「わたしのプリンセスのかばんを触っている子がいるから嫌だ」

という苦情でした。

「どれどれ?どれを触っている子がいるの?」とEちゃんの後ろをついていって、

かわいいプリンセスの絵柄のキャリーバックを見せてもらいました。

「このキャリーバックを触っていた子がいるの?」

「そう」

「Eちゃんの大事なかばんだから、触られたくないな~って

思ったの?」

Eちゃんは、「そうだよ。だって、嫌だもん!」と怒りに震えながら

口をとがらせていました。「ふーん、かわいいキャリーバックだもんねぇ。

かわいいから、ちょっと触ってみたいな、って思ったのかな?」

「そうじゃない?嫌になっちゃう」

「へぇ~。大事なキャリーバックだから触られたくなかったのね。

Eちゃんだけが、自分でファスナー開けて、中に入れてるものを出したり、

片付けたりしたかったのね。」

「そうそう」

「へぇ~」と聞きながら、「どの子が触ったの?」とたずねました。

「この子!」と言いながら、Fちゃんを指さします。

「Fちゃん、このキャリーバック、かわいいなぁって触ったの?」とたずねると、

Fちゃんは顔を引きつらせた状態でこっくりしました。

「かわいい絵がついているから、ちょっと見ようかなって思ったの?」

「そう」と言います。

「ふぅ~ん」と何度かうなずいてから、

「Eちゃんも、Fちゃんも、こんなかわいいカバンが好きなのね」というと、

ふたりともこっくりしました。

「いっしょのものがかわいいなぁって思ったり、同じものが好きだったりするのね。」

と言ってから、

「Eちゃんも、Fちゃんも同じ年長さんね。同じものが大好きだから

とっても仲良しになれるかもね」と言いました。

 

すると、たったその一言で、

ふたりはもじもじしながらも、しっかりと手をつなぎあいました。

そして、心底うれしそうな笑顔を浮かべて、互いにキラキラ光る目で

見つめあってから、

どこかへ行ってしまいました。

EちゃんとFちゃんの、どこへいくのも連れだって、「ねー」「ねー」と言いながら

顔を見合わせる仲良しぶりは、そこから始まっています。

 子どもが誰かに不満を抱いたり、文句を言ったりする時にしても、

その背後には、もやもやした気になるという気持ち、

相手への興味、親しくなりたい気持ちなど、さまざまな思いが

潜んでいるのだと思います。

それを身近な大人が、いつもいつも、

子どもの代わりに成敗しておしまいという

流れを作ってはいけない、と感じました。

 

このEちゃんFちゃんは、ユースで出会ったお姉さんたちに

とてもかわいがってもらっていました。

わがままも甘えも許容してもらって遊ぶうちに、

だんだんテンションが上がって、お姉さんたちの頭に

おもちゃを乗せる悪ふざけをしている姿がありました。

 

そういえば、EちゃんFちゃんの責められてたじたじとなっていた

Bくんは、2年前まではうれしすぎて興奮して、相手が嫌がるような

ちょっかいをだしてしまいがちでした。

でも、今年はすっかりそうした面は卒業し、責任感や自制心が

芽生えつつあるのです。でも、そうしたがんばりの一方で、

ひとつくじけると、今回のように自分の殻に閉じこもってしまう

こともあります。

 

EちゃんとFちゃんは、常識的な善悪が見えだして、

「これは悪いことだよ」と他の人には厳しいけど、

自分自身には甘いという時期でしょうか。

Bくんの周りに集まっている子たちの心はみなBくんの心の延長上にあって

互いに溶けあって、

いっしょに自分の内面や外で起こる出来事と会話をしながら、

心を耕しているんだな、と感じました。

 


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