子どもとの間で生じる『力のゲーム』から抜けるには? 2 の続きです。
前回の記事でAくんとわたしとのやり取りでわかるように
Aくんは衝動的で自己中心的な性質ではありません。
周囲の空気を読んで慎重に自分の出方を決める自分を抑えがちな子です。
絵が上手なAくんは、園のお友だちから「○○の絵を描いて」と
頼まれることがよくあって、
もう絵を描くのをやめて遊びたいのだけれど、
絵を描いてって言われるから描いていたら
あんまり遊べなかったとがっかりした様子で口にすることがあるそうです。
そんなふうに自分を抑えがちな子が、ある時には手がつけられないほど
大泣きしてみたり、あれもだめこれもだめと駄々をこね続けることは
よくあることです。
普段ストレスを溜め気味なので、神経が疲れきってしまうことも
あるでしょうし、もともと過敏な性質だから、周囲の空気に気にして
慎重に振舞っているとも言えるでしょう。
また、こうしたタイプの子の中には、ちょっとしたきっかけで、
過去の嫌な出来事をどっと思いだしてしまう子もいます。
ですからAくんが寝しなにわざわざけんかをふっかけるような真似をして
それをエスカレートさせていくのは、
身体に溜めこんでしまったネガティブなものを吐きだす必要があって
そうしているのかもしれません。
ただ、そうとばかりも言えません。
Aくんは内気で他人に対して遠慮がちな子で、
頼まれごとでは相手にあわすことが多いですが、
その一方で、「自分はこうしたい」というイメージが非常に
はっきりしている子でもあります。
毎回、教室では、多少の反対には屈せず、どんなに手間をかけて説得してでも、
自分の意見を通そうとするAくん姿があります。
Aくんは、「これにする?あれにする?」といった選択肢を提示されることを
好まず、自分の中の「こういうことがしたい」を口にするし、
それはとても独創的で、新しさが感じられるものです。
以前、教室で部屋を暗くして影絵や光の実験をするのが流行った際も、
一番最初に「こういうことがしてみたい」とアイデアの火を灯したのはAくんでした。
日常の中で、Aくんの感受性に「これは面白い!」と響いたものを、
どのようにしたいのか、何が必要なのか、どんな手順でできそうか、
誰に何を頼めばいいのかをじっくり練っていて、
今なら口にしても大丈夫そうだという時に、こんなに物静かな子の中に
よくこれだけ言葉が詰まっていたものだと驚くほど、
ああだこうだと事細かに解説し始めるのです。
次回に続きます。