「二十日鼠と人間」

2015-05-16 01:02:46 | シアターライヴ
地味に良かった…。

最初はあくびが出るくらいつまらないな~と思ってたけど、実はめちゃくちゃ深い内容でラストはウルッときた。

ということで、ナショナル・シアター・ライヴを観てきました。

本当に地味に良かった。

たまたまだけど、たまたまだとは思うけど、今テレビで放送中の山P主演の「アルジャーノンに花束を」と内容が似ていて、まさに咲人とアルジャーノンの関係性が、白痴のレニーと相棒のジョージとかぶる。

ほんのちっぽけな夢すらも叶えられない現実の中で、問題ばかり起こすレニーを邪魔だと思いつつも、置き去りにできないジョージの優しさと最後の決断にウルッときました。

レニーは手術前の咲人と同じで疑うことを知らない純粋な人間なんよね。ただ感情をコントロールできない、それが唯一且つ最大の欠点。動物に対する愛情やジョージに対する信頼性は人一倍なんだけど、刃向かってくるモノに対しての凶暴性も人一倍なんよね。それが大切な仔犬であっても…。

この作品を観ながら、ついつい自分自身と重なって見ていたんですが、私は自称孤独大好き人間だけど、本当に孤独が好きだったらブログなんて書かないよな…とついつい思ってしまった。というか今更だけど気付かされた。

ジョージとレニーはいつでもどこでも一緒。四六時中一緒いる訳ではないけど、レニーが職場で問題を起こしてクビになったら、一緒に次の仕事を探す間柄。

今ならセクシャリティなものとして勘違いされそうな間柄ではあるけど、逆に言えば、今では失いつつある思いやりの心や信頼性がこの二人の関係にはある。

ぶっちゃけ書くと、登場人物にジョージが好きになる女性が現れたらもっとリアルな展開&内容になったとは思うけど、残念ながら、ここに登場する女性は、本当に髪の毛一本もレニーが触れてはいけない相手だった。この女性は、一見、性的魅力のある女性として観客に映るけど、実は、レニーやジョージ、手を失ったおじいちゃんや黒人と同じように、夢を持った孤独な人間なんよね。

登場人物皆、時代背景的に孤独な人間だとは思うけど、ちっぽけな夢すら叶わない現実の中で、まるで夢を持つことが禁止されているかのように常に現実と向き合って生きている。辛いことにも我慢しないといけないし、ささやかな幸せすら、誰か(立場的に強い者)の許可が必要。

とても不条理な世の中を映し出しつつも、本当の幸せとは何なのか?をテーマにした作品だと思いました。

ジョージとレニーの関係は、本当に咲人とアルジャーノンの関係に似てるんよね。

今は、人間同士でも、他人同士ならいざ知らず、血縁関係においてめちゃくちゃ希薄さが目立つ世の中だよね。バカにする訳じゃないけど、悲しいことにペットの方が人間より信頼出来る時代になってるね。

だからこそ余計、ジョージとレニーの関係は特殊に映るけど、ジョージみたいな思いやりのある人間はまだまだ日本にはたくさんいると思ってる。ま、私はそこは希薄だけどね…(汗)

ジョージの最後の決断は、レニーに対する最上の思いやりだと解釈してるので、本当にウルッときました。老犬と同じように遅かれ早かれ同じ道を辿るんよね…。だったら…。逆にジョージは大丈夫なのかと心配になった。

ほんと、ごく当たり前のことを幸せだと思える気持ちが大切なんだと、改めて感じさせてくれる作品でもありました。

ジョージを演じたジェームス・フランコが良くも悪くもオッサンになっていてビックリしましたが、とてもいい味を出してました。

白痴のレニーを演じたクリス・オダウドの、白痴過ぎずわざとらしくもない絶妙なさじ加減が素晴らしかった。

タイトルの「二十日鼠と人間」。パンフレットを読むと深い意味があるね。「アルジャーノン~」同様、お利口さんになることが幸せじゃなく、思い通りにならない世の中だからこそ、ささやかな幸せを見つけたり、思いやりの気持ちを持つことが、結果的には自分に戻ってくる幸せなんだと私は思う。

昔、同じスタインベック原作の「怒りの葡萄」の舞台を観たことを思い出したんですが、こちらも社会の不条理を描きつつ、ラストは女神様のような現実ではあり得ない思いやり、というか決断をした女性が描かれていたのを思い出しました。ある意味衝撃的内容だった。

今日のまとめ:今回のNTL、イギリスの劇場作品じゃなくてアメリカなんやね。アメリカ作品もあり得ることにビックリした。

そうそう、今回単発でパンフレットが販売されていてビックリ。ひょっとして、「欲望~」も単発でパンフレットを販売してたのかな…?

あ、実は、同じスタインベック原作の「エデンの東」は映画すら未だに観たことないんよね。っていうか、ジェームス・ディーンの映画そのもの観たことない(汗)ちょっと「エデンの東」が気になった。あ、真矢みきさん主演の宝塚版の実況CDを持ってたの忘れてた…(汗)改めて聴きます。