「紙の月」

2014-12-02 02:40:36 | 映画
う~ん…、

ぶっちゃけ書くと、原作や作者の角田さんに対するリスペクトがない作品は嫌い。

ということで、わたくし、既に原作を読んだ上で鑑賞しましたが、私が一番嫌いなパターンの作品ですね。

タイトルと部分的要素だけ取り入れて、原作と180度違う仕上がりの作品は嫌いなので、りえちゃんは確かに良かったけど、主演女優賞はノミネート留まりやな。ま、最優秀獲得するとは思うけど…。

わたくしの個人的意見は、どんな賞でも、作品が良くないと意味がないと思ってます。作品と役者とスタッフがお互いを引き立てあうことで、相乗効果で良い作品が生まれるのが理想で、本作に関しては、りえちゃんの“美しき横領犯”だけが先走りして、原作のメッセージ性と全然違うメッセージ性が描かれていて私は気に入らない。

原作は、横山秀夫さんの「半落ち」みたいな作風ではあったけども、主人公の梨花と縁のある人物の目線を通して、梨花の人間性を浮き彫りにするといったアプローチではなく、既に逃亡犯として指名手配されている梨花を通して、自分自身を内観していく展開になっている。

もちろん梨花の内面も描いている。横領の手口は読んでいてドキドキするものがあったし、何より梨花の人間性は、りえちゃん演じる梨花とはほとんど違う。

原作の梨花は小さい頃から母性愛に溢れた人。母性愛を持った人物だから、ラストの梨花をついつい応援したくなる。

今まで梨花は誰かのために生きてきた。尽くすことが彼女の生き甲斐。悪事に手を染めることも梨花にとっては理不尽だけど無償の愛に近い。ラストの逃亡は、今度は自分のために生きていく決意と覚悟を感じました。

ただ、原作において残念だったのは、犯罪発覚後の旦那と光太の後日談が全く描かれてなかったこと。どんな内容であれこれを描いていたら、スッキリ読み終えられていたと思う。そこが物足りなかった。それ以外は、早く次の展開が知りたい!と思いながらあっという間に読んでしまいました。

で、映画に話を戻すと、50%は原作通りだけど、残り50%は全くオリジナルな展開になっていた。

映画の梨花は確信犯。同情する部分がほとんどなかった。犯罪に手を染めて何が悪い!?みたいなイメージ。綺麗な横領犯だから許される部分はあるにはあったけど、人間としてはダメ女。自分の欲求を満たすためだけに横領を繰り返してる感じだった。何が自由だ!?と思ってしまった。

しかも、作風が、横領は良くない!不倫は良くない!女性同士の見栄とプライドの諍いみたいな描かれ方をしていて、原作と全然違うんよね。

はっきり書くと、犯罪は良くない、不倫は良くない、カード地獄は恐ろしい、なんて誰もが分かっていること。それを、説教じみて描いていたのが頂けない。

原作の梨花のように、横領に手を染めた理由も、とても共鳴出来る部分があった。

映画の梨花は、夫に対する不満がより不倫の深みへと導いた描き方になっていて、横領までの道のりは確かに筋は通っていた。ただ、原作の梨花の母性愛が映画では偽りに描かれていて、本当の愛でも無償の愛でもないんだよ。そこが、原作に対するリスペクトのなさを感じて仕方なかった。

更にぶっちゃけ書くと、夫も光太も最低に描かれていた。原作の光太も結局は最低だったけど、梨花の母性をくすぐるタイプであったと思うし、犯罪後も梨花が光太を守りたい気持ちには共感できた。

旦那も、映画みたいに決して嫌味な人間ではないだけに、原作を読んだときは、旦那と光太の‘それから’も読みたくなった。でも、映画の旦那と光太には全く興味がなくなった。田辺さんと池松君の演技は文句ないけど、役柄が気に入らない。

原作に登場しない、銀行のお局的存在の小林さんと、若手銀行員の大島さんが、映画ではキーパーソン的役柄で、小林さんは道徳観の象徴的人物に対し、大島さんは現代の計算高い小娘ぶりを象徴した人物で、この二人の対照的な生き方は上手く描写されていた。

特に大島さんの自然かつギャップのある人物像はお見事でした。日本アカデミー賞ノミネートはアリですね。

小林さんは、世の中の道徳や秩序の大切さを訴える役割を担っていて、演技としては全く悪くはない。ただ、作品全体としては、この道徳観の押し売りというか、梨花を追い詰める役柄が、ついつい誰でも犯罪は良くないってことぐらい知ってるんだよ!って言い返したくなるんよね。ここに原作に対するリスペクトのなさを感じるんだよ。

はっきり言って、何が正しい、間違っているなんかより、他人(友達や知人)を通して自身自身を内観し学んでいく作業こそがめちゃくちゃ大事だと思うんよね。

犯罪は良くないなんて本当に当たり前なんだよ。そんなことより、これからの人生をどう生きていくか、ちゃんと覚悟して生きていくことの方がもっと大事なわけ。原作では極端に描いているけど、どんな環境においても生き抜く勇気と覚悟が、きっと角田さんが描く梨花の象徴だと思っているから、「八日目の蝉」同様、絶望と紙一重の希望が原作にはある。

映画に関しては、なんであそこ逃げるねん!?って思った。ああいう描き方で逃亡はないやろ!?とても不自然なラストでした。全く共感なし。

りえちゃん演じる梨花は綺麗。綺麗過ぎる。何を着ても綺麗だから、あんまり地味な生活から裕福になったギャップがない。せめて、素っぴんで出て、少しずつ小綺麗になっていく様を描いてくれたら良かったかもね。元々が美人さんだからギャップがないの残念。なので、りえちゃんの日本アカデミー賞ノミネートはアリアリですが、私なら最優秀獲得はない。作品が良ければ問題ないけど、これに限っては作品が良くない。今のところ、「私の男」の二階堂ふみちゃんが私の中っは最有力やな。

池松君の段々小生意気になる様は良かった。お金で人は変わる。原作と違って夢がない描き方は頂けない。
その点、大島さんのキャラはギャップのある役柄だったので本当に自然な演技で良かった。女優としての才能はまだ分からないけど、この役は良かった。

めちゃくちゃ問題発生してますが、感じたままを書くのが私のモットーなので気を悪くされたらごめんないm(__)m

今日のまとめ:やはり、中島哲也監督の原作をリスペクトした上での遊び心がある作品が好き。

昔は原作を無視した脚色の映画が多かった。特に一番腹が立ったのが「OUT」。ドラマと舞台が良かっただけに残念な仕上がりでした。なんでも意表を突けばいいと思ったら大間違い。

そうそう、角田さんって、オウム事件を取り入れるよね。そのこだわり好き(笑)
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