同じ作品なのに、演者が変わっただけで(もちろん、観るタイミングや環境や体調 も左右する)感じ方が変わるなんて!
めちゃくちゃ良かった!
正直、全く期待してなかった。團子君と壱太郎君コンビが観れたらいいと思っていただけだったので、本当に本当にめちゃくちゃ良かった!
第一幕は全く眠たくならなかった!演舞場の時は、夜行バスの疲れもありほとんど寝てしまってたからね…。
第二幕も良かったし、第三幕は、さすがに間で芝居されると眠たくなるが…、
トータルでは、新橋演舞場で観た時よりも遥かに良かった。
演舞場の時は、ストーリー、スピード、スペクタクルが謳い文句のスーパー歌舞伎のはずなのに、スピード感がなかったんよね。間で芝居をしていたから余計眠たかったm(__)m
ストーリーも、ファザコンの主人公が父帝に裏切られ続ける物語に、神話?日本書紀?の物語なのに下世話過ぎて全く面白みを感じなかったんよね。
今回、團子君のヤマトタケルを観させもらって、
寝てたとはいえ2回目の鑑賞だったし、演舞場では感じなかったことや別の視点で観ることが出来たので、
決して下世話なストーリーでなかったことに気付かさせられた。
古き伝統も大事だけど、新しいことや試みをしていかないと国(歌舞伎)が衰退するかもしれない憂いをヤマトタケルに託し、そして、次期天皇の我が子ワカタケル(後世)に、その想いを引き継いでもらいたい想いが込められている脚本になっていることに全く気付かなかった。ぶっちゃけ、取って付けた感はあるが…。
なぜ新しい歌舞伎スタイルを取り入れようとしたのか、猿翁さんの想いがビンビン伝わってくる内容だった。
猿翁さんが残したスーパー歌舞伎は、ちゃんとちゃんと今も生きているし、ちゃんと引き継がれている。
ケレン味たっぷりだし、現代語だから歌舞伎初心者にはもってこい。
私も、歌舞伎お初また2回目が猿翁さんが三代目猿之助時代の「新・三国志」だった。めちゃくちゃ分かりやすくて迫力があって面白かった!
それはさておき、
團子君がヤマトタケルを演じ、中車さんが父帝を演じることで、実の親子だからこそのリアリティーがあった。
團子君のピュアさがヤマトタケルの父帝の愛を求める様とめちゃくちゃリンクしていて、めちゃくちゃリアルだった。
っていうより、中車さんのご子息だけあって、本当にお芝居が上手い!
お兄ちゃんとの演じ分けがマジでアッパレだった!
歌舞伎って、型を重要視して感情が置き去りにされることがあるけど、團子君は、型だけじゃなくちゃんと感情も大事にしているのが伝わってきた?まだまだ若いのに、代役公演の「不死鳥よ波濤を越えて」の時もそうだったけど、大舞台でもしっかり主役を張れる役者さんになっていて、
マジ、恐るべし!!
本当に本当に素晴らしいヤマトタケル像だった!
演舞場の時は、父親に愛されなくて可哀想な主人公の、マザコンならぬファザコン設定が正直受け入れられなかったが、
今回二回目を観させてもらって、
決してファザコン主人公の悲しい顛末の物語でも勧善懲悪ものでもないこと、天皇や皇族が善で敵が悪であるとも描いていないことに気付いた。
歌舞伎スタイルだと、赤顔であったり青色の隈があったらついつい悪役だと思って観てしまいますが、
よくよく台詞を聞いたら、むしろ朝廷側だって悪ではないのか的な台詞もあって、
必ずしも主人公が善だとは限らない。見方によって悪にもなる。
ヤマトタケルや朝廷は、敵国にとっては悪なのである。
そこもちゃんと台詞で伝えていた。
善人の役だから善人だとは限らない。他者にとっては悪人になりえる。
今までの歌舞伎の伝統では、勧善懲悪こそが正しい歌舞伎の表現だと思っていたけど、悪人にもちゃんと五分の魂があること、悪人にも正義あることをこの作品ではちゃんと伝えている。
歌が演じる熊襲弟タケルも、猿弥さん演じる山神も間違ったことは言ってない。むしろ、朝廷の行いは、熊襲にとっても山神にとっても悪行なのだ。
そもそも、正当な理由があっても兄殺しは重罪なんだよ。
神様を襲うなんてもっと重罪。
熊襲が、山神がヤマトタケルに何をした?朝廷を嫌うことが悪事か?
いつ襲ってくるか分からないから、先手を打つことが善か正しい行いか?
昨今の戦争もしかり、話し合いはないんか?
なんで戦争をしないといけない事態に陥るん?
なぜ暴力で解決しようとする?無実の人間の命を取り引きに使う?
決して、自分たちの手を汚すことはしないのに!
一体何を求めてるん?
自国の利益か?命を犠牲にしてまでも、それが国民の利益に繋がることか?裏で私腹を肥やそうとしてないか?
タケルが父帝に愛を求める様は、ただのファザコンを意識した振る舞いではなく、何をするにも愛が必要であることを訴えていると私は解釈した。
愛があったら戦争なんてする必要はないねん。
愛国心で特攻させることは愛故か?愛と強制を一緒にしてないか?都合よく愛を強要してないか?
「オッペンハイマー」や「関心領域」を観たあとだけに余計、戦争の虚しさや人類愛の大切さを感じる作品だった。
あ、話が脱線しまくり…。ま、いつものことですが…。
團子君は、ほとんど出ずっぱりで、早替えや立ち回りもあり、汗が凄かった。これを1日2公演は本当に大変だと思った。
それにしても、素顔はまだまだ少年のように若さに満ち溢れているし、お父さんにもおじいちゃんにも似てるとは思ったことないのに、化粧したら、めちゃくちゃ猿翁さんとソックリで驚きを隠せない。
喋り方も猿翁さんに似せてきているのか、元々そうなのかは分からないが、猿翁さんを細くしただけでそれ以外は猿翁さんの分身にしか思えなかった。面影ありまくり!
こればかりは、どんなに素晴らしい与兵衛を演じた隼人氏でも表現できない。
猿翁さんの血筋ならではの凄みを味わわせてもらった。
本当に本当に素晴らしいヤマトタケル像だった。
中車さんの帝は、存在感が半端ない。親子共演は大正解やね!
そうそう、團子君は化粧した時だったが、中車さんは、素顔が猿翁さんに似てきたね。
壱太郎君の兄橘姫と弟橘姫の演じ分けもお見事だった。米吉君も良かったけど、やはり、貫禄が違う。声音や衣装だけでは演じ分けられない表現の巧みさがあった。
台詞は変わってないはずだけど、海のシーンでのヤマトタケルを助けんがための嘘のお芝居がお見事でしたね。本心と見せかけてそうじゃない演技にウルッときた。海に飛び込むシーンでは演舞場ではなかった衣装替えがありましたね。
歌の熊襲弟タケルもめちゃくちゃ良かった。演舞場では違う方が演じ、熊襲のシーンはほとんど寝ていたからねm(__)m
ヤマトタケルと名乗る理由が語られる重要なシーンだったので、熊襲弟タケルは兄タケルよりも゙美味しい役だったね。
もう1役のヘタルベは、ぶっちゃけ、演舞場の方が良かった。感情を全面に出していて良かったのに、今回は毎回二役だったからか感情を抑えてた印象。
タケヒコの福ちゃんは、演舞場の時よりめちゃ色気があってビックリ!ホンマ歌舞伎顔やな!化粧がめちゃくちゃ良い!
今回の松竹座の公演、御園座公演があったからか、尾張シーンでの嵐橘三郎さんの尾張弁?名古屋弁?がめちゃくちゃ愉快だった。奥さん役の笑也さんとの関係性もめちゃ和む。短い登場シーンなのが残念。
やはり、大阪公演だからか、新橋の時よりも笑いが多かったね。橘三郎さん、笑也さん、笑三郎さん、めちゃ攻めてきてたね。
演舞場の時は、チケットが余っていたのに、御園座も松竹座もまさかの完売。間違いなく博多座も即完売でしょう。
本当は、ヅカ友さんと観る予定にしていましたが、観たい日のチケットが完売だったので、一緒に観ることが出来なくなってしまいました。結局、ひとりで違う日に戻りチケットで観てきました。
本当に本当に戻りチケットゲット出来て本当にラッキーでした!
團子君、ほぼ毎日2回公演がありますが、お身体に気をつけて千秋楽まで頑張って下さい!