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「子午線の祀り」

2021-03-14 00:04:08 | 舞台
凄い!!

全然眠たくならなかった!←そっちかいっ!?

(笑)

ということで、

数年前までならば絶対に観ることなかった、

古典芸能のお勉強の中で源平合戦に関して資料集めしたことで学んだ源義経の裏の顔。平家が必ずしも悪者の集団とは言い切れない家族の絆。

まさにその延長線上にある木下順二の唯一の不朽の名作といわれる本作を観てきました。

歌舞伎の「義経千本桜」の渡海屋の段で有名な碇知盛こと平知盛を主人公にした物語。

木下氏が宇宙の視点で書いたという、まさにスピ的作品。

いやー、学生時代はマジ日本史興味ナシ人間だったのに、しかも国語力ゼロ、古典・古語なんて以ての外。

なのに、現代語より古語の台詞が多いのに、最後まで全く睡魔に襲われることなく観させて頂きました!ま、ぶっちゃけ歌舞伎の延長上ではあるんですが…。

平家が都落ちした後の、一ノ谷(須磨)から屋島(香川県)、そして壇ノ浦(山口県)へと義経率いる源氏軍と戦い、そして平家滅亡までを描いた物語。

資料集めした時に知った、勝つためならば手段は選ばず、ルール違反も辞さない義経の卑怯な戦いの数々もしっかり盛り込み、

知盛の良くも悪くも優柔不断さ、優しさも盛り込み、

天皇の証である三種の神器(清盛の妻の二位の尼と安徳天皇が三種の神器と共に海に身投げし、そのため神器の1つの草薙の剣だけが見つからず現在に至る。今現存する剣は、新しく採用されたもの)のエピソードも盛り込み、  

そしてなにより、

海上での戦いを得意としている平家が、潮の流れ、満ち引きを把握しているはずなのに、その潮の流れで、ではなく、イルカの大群が平家側に迫ってきたたも義経軍に負けてしまうという運命のイタズラ(まるで「マクベス」の帝王切開)を描きつつ、

この潮の流れによる勝敗こそ、自然の法則、つまり宇宙の法則に他ならず、

「平家物語」の序文の有名な台詞、『盛者必衰の理をあらわす』と微妙に異なるが、

平家は、強かったから滅びたわけじゃなく、最初から滅びる運命にあった。

どうあがいても、どう戦略を練っても、負ける運命にあったんよ。

ただ、木下氏が描きたかったのは、

宇宙の法則には逆らえないけど、だからといって自害する必要はなかったんじゃないのか?

そんなに見栄やプライドは大事か?

捕虜になってでも生きる選択肢はあったんじゃないのか?

私が大好きな英単語、alternative、二者択一の、の意味ではなく、別の方法で、の意味で使用。

死ぬ意外に別の考えもあったんじゃないのか?

と木下氏は問いかけたのではないかとワタクシは解釈しました。

美輪さんや江原さんがよく仰る、

宿命はかえられないが、運命は変えられる。

つまり、平家滅亡は宿命。生きるか自害するか、そこからの運命は自らの選択肢でいかようにでも変えられる。

「子午線の祀り」では、知盛の自害だけでなく、敵に寝返った者、自害しようとしたが捕まった者を描いているので、

運命の選択肢は、この作品のテーマであったと私は思ってます。

人生っさ、あの時あゝしとけば良かったと後悔することが多々あるじゃないですか?

でもね、

あゝしたことで学ぶこと、身に沁みて実感することもあるわけだから、後悔や失敗は決して悪いことではない。

起こってしまったことは元には戻らない。刻(とき)は常に真っ直ぐ進む。

何を学び、何を選択するか、運命はいくらでも変えられる。選択肢は1つじゃない。

このコロナ禍、本当に予期せぬことが畳み掛けてくる。自殺者も増えている。本当に自殺という選択肢しかなかったのか?そうじゃない選択肢はあったはず。

このコロナ禍だからこそ、上演する意味があった作品だと思いました。

野村萬斎さん(呼び捨てにしてました…すみません…)の演出、めちゃくちゃ良かったです!

まさに、宇宙の法則ならぬ、月の満ち欠けをモチーフにしたような舞台装置。上弦、下弦の月。船や陣地に見立てたりと、とっても効果的だったと思います。

なんというか、今この作品をナマの舞台で観る機会に出会えたこと、不思議な縁を感じます。

野田地図でも源平合戦をテーマにした作品も上演してくれたしね。

歌舞伎では、まだナマで碇知盛を観たことないので、

菊様と丑之助君で観たいです。あ、去年、菊様で義経千本桜やる予定だったのがオジャンになったね。

菊様、お願いしまするm(__)m

は、いいとして、

宝塚では、世間では、ヒーローとして描かれている義経を演じた成河君がマジ良かった!!

ワタクシ個人的には、資料集めの時から大嫌いになった義経ですが、

成河君が演じる義経像は、確かに卑怯な部分も描いていますが、義経は義経で兄頼朝に褒めらたい、助けになりたい一心での行動であったわけなので、正直憎めないとこはあった。

ここでは描かれていませんが、結果的には、義経は頼朝に追われる身になるので、義経もまた運命に左右される。

そりゃそうだろ、ルール違反する人間を放置できるか?いくら兄弟でも異母兄弟だし、最初からカワイイ弟とは頼朝だって思ってなかったと思う。

頼朝は、義経の母親に対しても、良く思ってなかったと思うよ。

っていうか、平清盛が、幼き頼朝と義経の命を奪わなかったがために、結果的には平家滅亡に至ったという運命も皮肉過ぎる。

源平合戦って、戦国時代と違って、まだ人間味を感じとれる戦だと思った。

あ、脱線しましたm(__)m

成河君の義経は、猿みたいな存在でしたね。怪我しないか心配になるくらい、至る所で飛び跳ねまくっていて、非常に身体能力を必要とする演出でした。

知能犯的かつ頭脳派な一面がある義経像でもありました。ここが頼朝に悪い意味で一目置かれてしまった所以かと思ったね。まさに目の上のたんこぶ的存在に感じ取れる義経像でした。素晴らしかったです。

っていうか、最近YouTubeで観た成河君の演劇オタクぶり発言に驚きました!とっても研究熱心なのも伝わったし、何より発言の仕方や内容が何処かの大学教授みたいだった。眼鏡を掛けていたので、最初成河君だとは気付かなかった程。本当に勉強熱心さが伝わってきたので尊敬しました!

若村麻由美さんの殺される運命から逃れられず、そして、知盛の運命の女性的存在の影身の内侍役。

この役こそまさにスピの象徴的存在で、決して運命を操る役でなく、あの世から知盛を見守る役。誰かの手助けをするのではなく、ただただ知盛にとって心の支えとなる存在。むしろ、影身の死が知盛を自害へと決断させたのかもしれない役柄に感じました。

村田雄浩さん演じる阿波民部重能は、知盛の味方なのかどうなのか最後まで不透明な役で、知盛を惑わす物語のキー的存在。息子は裏切って源氏側に就く。

息子を殺せるか?それとも知盛を裏切るか?最後まで魅力的というか美味しい役というか目が離せない役。彼の最後の決断こそ、この木下戯曲の核心だと思った。知盛と本当に対照的な役。

平家物語、源平合戦を題材に、運命と宿命をテーマにした素晴らしい作品でした。

元々の戯曲をフルで上演したら6時間に及ぶ内容を3時間に縮小しての上演。縮小して正解だと思うし、恐らく、木下氏の伝えたいメッセージは変わってないと思います。

さすがに6時間だと集中力が途切れると思う。