おばちゃんと動かない虫

先日スーパーで恐ろしい光景を見た
レジに並んでると俺の前に、
６０代と思われるおばちゃんがいた

そしてレジの女性に袋付けますかと聞かれたんだが、
よく聞き取れなかったらしく、
あ？とキレ気味に聞き返した
この段階で意味不明だったんだが、
レジの女性が繰り返すと完全にキレてこう言い放った

何を言ってるか分かりません！

俺もビックリしたしレジの女性も驚いただろう
それはまさにこっちのセリフである
それでもレジの女性は黙々と作業を続けた

レジといえども接客業の大変さを思い知った次第である
人によっては瞬間的にキレるシチュエーションだろうが、
レジの女性はじっと飲み込み作業を続け礼を言った

もちろんそのおばちゃんにしてみれば、
もっとハッキリ言ってくれということだろう
というか最初からイラついてた感じだった

レジをやってると１日何人かは、
こういう客とぶつかるんだろうなと思うと、
本当にご苦労様と言いたくなった

以前このブログでも書いたが、
額が出たら硬貨を何十枚もぶちまけて、
数えてくれと言った客もいたし、
渡されたレジ袋が多かったのが気に入らなかったのか、
乱暴に返した客もいた

俺は改めてレジの人に感謝しつつ清算を終えた
ちなみに俺はいつも軽くお辞儀をして清算を終えてる
それはセミセルフレジでも同じである

せめて俺ぐらいは気分よく終わらせようという思いである、
というかそんなの関係なしに自然にお辞儀が出る
まあそんなの向こうは気にも留めてないだろうが、
昔俺の母親もレジをやっていたという話を聞いたんで、
他人事とは思えないのである

とにかく接客業の人には、
毎日ご苦労様ですと言いたい気分である
もちろん店員の中にも無礼な奴がいるのも事実だが、
やはり基本的には大変な仕事だろう

先日マンションの踊り場の壁に虫が張り付いていた
蛾の仲間っぽいが、そこその大きさだった
俺は別に何もすることなく通り過ぎたが、
翌日もその翌日も全く同じ状態だった

脱皮でもするんかなと思いつつ、
数日が過ぎたとき、その虫は下に落ちていた
つまり壁に足が引っかかっていただけで、
早い段階で既に死んでいたと思われる

どうりで全く動いてないわけだった
３階から２階へ行く踊り場なので、
基本それを見てるのは３人である
それと生活保護の部屋に来るヘルパーだ

それらも気付いていたはずである
それを見て何かを感じたのだろうか
俺は名前も知らない虫だが命の儚さというか、
何か切ない気分になった
下に落ちてる姿を見て、
そう遠くない将来の自分が重なったのかもしれない

そしてそのすぐ後に月に数回来る掃除の人が来た
自分の部屋の前を掃いてる音がするからすぐ分かる
そしてその日は出勤だったんで外に出た

あの虫はどうなってるんだろうと見たら、
その亡骸は消えていた
小さいゴミと一緒にほうきで塵取りに入れられたのだろう
そしてゴミ袋に入れられたわけである

もちろん俺も虫を殺すしゴキブリも何度か駆除してきたが、
命の終わりは何か切ないものである
自分の終わりが見えてきたせいかもしれないが、
何ともしんみりした気分になった出来事だった

俺も将来あの虫と同じ道をたどるわけである
やっぱりあの虫は将来の俺だったのかと思った次第である