夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

うっかり勘違いと仕組まれた勘違い。そして民主主義

2009年04月28日 | 言葉
 時代小説を読んでいたら、「寅の刻」がよく出て来る。午前4時を中心とした2時間で、人間の最も眠りの深い時間帯だと言う。だからこの時刻を狙って様々な犯罪が行われる。
 江戸時代、東京の私の住んでいる江東区の西半分の「深川」までは江戸の町だった。江戸の東南に当たり、深川の芸者は「辰巳芸者」と呼ばれて気っぷの良さが評判だったらしい。
 「寅」と「辰」に何の関係があるのか、と思うかも知れないが、どちらも時刻であり、方角である点が共通している。その「辰の刻」とは午前8時である。
 方角では南北を縦の軸とする360度で表現されている。
 時刻では、現在では、12時と6時を縦の軸とする360度で表現されている。午前12時と午後12時が同じ位置になっている。実はそこから私の勘違いが生まれている。
 時計で言えば、方角としての辰は「4」の所、時刻としての辰は「8」の所になる。同じ「辰」なのに大きく違う。それが不思議だった。
 だが、考えてみれば、私の考え方がいかにも杜撰だったのである。時刻を360度で表現していると思っていたのが大きな間違いだった。本当は午前が360度、午後が360度なのである。午前、午後の一日24時間を360度にすれば、0時と12時が縦の軸になる。それだと、「1」の所が2時で、「2=4時」「3=6時」「4=8時」になる。つまり、「辰の刻」は「4」で、それなら方角の「辰」と同じになる。

 非常につまらない事だが、こうした勘違いは結構多いと思う。このような「辰の方角」と「辰の刻」なら別にどうと言う事も無いのだが、社会的な事柄になると大きな問題になるはずだ。単なる勘違いならともかく、意識して勘違いをさせている事はあるだろう。「民主主義」とか「社会主義」などがその典型ではないのか。

・民主主義=人民が主権を持ち、自らの手で、自らのために政治を行う立場。
・社会主義=生産物・富を民主的に分配するため、生産手段を社会の共有とする制度。

 上は岩波国語辞典の説明だが、「社会主義」に出て来る「民主的に分配する」の「民主的」とは「民主主義の精神にかなっている」である。つまり、どちらも「民主主義の精神」が生きている。だから、その違いとは「民主主義=〈公平〉にはこだわらない」「社会主義=〈公平〉にこだわる」であるに過ぎない。富の分配の方式が大きく違うのだが、だからと言って、「民主主義=貧富の差があって良い」とはならない。出来る限り、貧富の差を小さくしたいと言うのが民主主義の根本のはずだ。
 そして、その「公平」が非常に難しい。何を以て「公平」と言うか、が非常に曖昧である。特に社会主義での「公平」が怪しい。中華人民共和国では驚くべき格差社会になっていると言う。「社会主義」とか「公平」とかは、そんな物なのである。
 だから、「自由民主党」であろうとも、「民主党」であろうとも、はたまた「社民党(社会民主党)」であろうとも、その実質は何ら変わる事がないのだ、と納得が行く。