壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『茗荷谷の猫』

2011年08月25日 | 読書(文芸、フィクションほか)

『茗荷谷の猫』(木内昇著)を読みました。以下、帯より。

新種の桜造りに心傾ける植木職人、乱歩に惹かれ、世間から逃れ続ける四十男、開戦前の浅草で新しい映画を夢見る青年――。幕末の江戸から昭和の東京を舞台に、百年の時を超えて名もなき9人の夢や挫折が交錯し、廻り合う。切なくも不思議な連作短編。

健坊だけが、「タッちゃん!」と嬉しそうに笑った。そのひとことで、すべての視線がタッちゃんに注がれることになった。
「俺の店で、なにしてんだ」
タッちゃんは確かに、そう言ったのだ。(「ぽけっとの、深く」より)

カッコいい。映画化の際は、タッちゃん役は、高倉健さん、あるいは鶴田浩二さんにぜひ務めてもらいたい。

連作短編であり、後の作品になるほど重なり合う部分が増え、重層的に響いてきます。独立した一編としても、後半の作品ほどすばらしいと感じました。

以下、気になった点を二つほど。
144ページ、「今月今夜ここで会って」。物語の筋は昼間だから、「今月今夜」はおかしいのでないか。
135ページ、「見た目より年を食ってる」。40男が「学生さん?お勤め?」と聞かれるほどの容姿なのだから、「見た目より若い」が適切なのでないか。

いずれにせよ、メチャクチャ面白い小説です。しばし物語の世界にわが身をたゆたわせたい方は、ぜひ。


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