壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

数字のマジック

2015年06月06日 | しらべる

以下は、2015年5月28日の東京新聞より(漢数字は算用数字に改めてます)。

インド洋、イラク派遣 自衛官54人自殺

防衛省は27日の衆院平和安全法制特別委員会で、アフガン戦争とイラク戦争に関連し、特別措置法に基づいてインド洋やイラクに派遣された自衛官のうち、54人が自殺していたことを明らかにした。防衛省によると、インド洋が海上自衛隊25人で、イラクが陸上自衛隊21人、航空自衛隊8人の計29人。
同省は「自殺はさまざまな要因が複合的に影響して発生するので、派遣任務と自殺の因果関係を特定するのは困難」としている。
共産党の志位和夫委員長の質問に、同省の真部朗・人事教育局長が答えた。
自衛隊の海外派遣をめぐっては、米中枢同時テロ後の2001年10月、2年間の時限立法としてテロ対策特別措置法が成立した。政府は海自隊員延べ約1万3000人をインド洋に派遣。同年12月から一時的な中断を挟んだ10年1月まで、対テロ作戦に従事する外国艦艇に無償で燃料や水を提供する活動を行った。
また04年1月からは、イラク特措法に基づき、陸自隊員延べ約5500人をイラクに派遣。南部サマワで給水活動や医療指導などを実施し、06年7月に撤収した。空自は04年3月から活動を始め、09年2月に完全撤収。延べ約3500人を派遣し、クウェートを拠点に陸自への支援輸送などを行った。
(引用終わり)

この記事だけだと、自殺者が「特別に」多いのか少ないのか、分かりませんよね。計算してみました。

   派遣人員 自死者 派遣期間  
陸自 5500人  21人  2004年1月~06年7月(2年6カ月≒2.5年)
海自 1万3000人 25人  2001年12月~10年1月(8年1カ月≒8年)
空自 3500人  8人   2004年3月~09年2月(4年11カ月≒5年)

陸自の年間の自殺率 21÷5500÷2.5(×100%)=0.1572
海自の年間の自殺率 25÷1万3000÷8(×100%)=0.024038
空自の年間の自殺率 8÷3500÷5(×100%)=0.04571

人口1000人当たりの自殺者は、それぞれ
陸自が1.5人、海自が0.24人、空自が0.46人となる計算です。

日本の自殺者は、よくニュースで「自殺者3万人超、○年連続」「3万人を切った」等と報じられます。

3万÷1億2000万(×100%)=0.025
人口1000人当たり0.25人です。


これだけ見ると、海自の自殺率は、日本人の平均的な自殺率とほぼ同じ。
空自で2倍弱、陸自はやや多くて6倍強です。

記事を読んだとき、「悲惨な戦場を目の当たりにし、ストレスを受け、それが原因で自殺者が多いんだろう」「平均的な自殺率の10倍くらいかな」と想像もしたんですが、こうして計算してみると、それほど数字は高くないようです。

かといって、戦場派遣される自衛隊員の心的負担の問題が軽視されてよいとは言えませんが、ね。

数字を見るときは、母数をハッキリさせたり、類似の他者や過去と比較したりすることが大切ですね。