壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『雇用融解』を読んだ

2009年07月31日 | 読書
三重県亀山市大岡寺町。シャープ亀山工場から車でほんの2~3分。総戸数74戸。A棟からG棟まで連なる共同住宅の名は「スカイハイツ」。
この中庭の駐車場に並ぶ車のナンバープレートは、名古屋、宮城、なにわ……。ブラジル人を中心とした日系南米人の、この共同住宅の住民は、生産調整のたびに自動車や電機メーカーの下請工場を渡り歩き、日本各地を転々とせざるをえない。(流用、一部略に伴い改編)

『雇用融解 これが新しい「日本型雇用」なのか』(風間直樹著、東洋経済新報社)を読みました。偽装請負をはじめ、派遣、パート、アルバイトなど、流動化する日本の雇用の現場を歩いた週刊誌(東洋経済)記者のルポです。

驚きました。「雇用調整のたびに転々と」というところ。それほど簡単に移動させてしまうんですね。たとえば左遷で地方へ飛ばす、という人事異動でも、もう少し因果を含めて納得してもらってから、という段階を踏むと思うのですが、これではまるで工作機械をA工場からB工場へ移す、といったニュアンス。モノ扱いです。

バイク便のライダーも、その多くが個人の請負事業者だと知りました。請負は、会社と雇用関係にないから、会社としては社会保険の負担がかからないし、かりに交通事故を起こしても労災になりません。

(以下流用)迅速がウリのバイク便だけに、会社は「急ぎの客です」「×時までに要到着です」とライダーをせかす。ベテランライダーは急ぐリスクが分かっているので、うまく“いなす”が、「新人は無知で会社の命令だと無理して飛ばして交通違反やケガも起こりやすい」(40代、ライダー)。それで免許停止、取消しとなっても自己責任で契約は終了。事故発生時には~~(同書より)

労働ビックバンを叫び、自由化を訴えていた人たちがいました。「労使は対等だ。言いたいことがあれば言えばいい。報酬に不満なら引き受けなければいいじゃないか」。これが彼らの論拠です。果たして、本当に労使は対等になったのでしょうか?

部活の指導など、学校現場の労働強化も指摘されていました。手弁当で行うクラブ活動の指導で、部活中のケガなどに対し保護者が教師と学校を訴える事態が増えているのです。
「管理職(校長)ともなると、在職中に訴訟沙汰を抱えることは当然のことのようになっている。共済会が販売する月額800円の掛け捨ての教師用訴訟費用保険が売れに売れている事態にある」(同書より)のだとか。

本当に、衝撃、驚きの連続でした。

ワイガヤ

2009年07月29日 | 川柳
景気低迷で、元気がない会社が多いようです。
今朝、子どもと一緒に区立図書館に行ってきました。新規入庫の紹介棚に、本田宗一郎の伝記が置いてありました。ホンダには、ワイワイガヤガヤ議論しながらモノ作りをする姿勢を、「ワイヤガ」と称する文化があります。他力本願はダメでしょうが、自力を鍛え、ワイガヤしているうち、景気はよくなる。そう信じたいものです。

ワイガヤといえばカッコのつく事務所
ワイガヤといえば聞こえのよい事務所

ホンダだから、ワイガヤが評価されるのか。ワイガヤしているから、ホンダのようになれるのか――。ただ単にワイガヤしているだけではダメですね。中身の伴ったワイガヤでないと。

ワイガヤが眠る活力 触発す

どのような逆境にもワイガヤを主導できる人は、すぐれたリーダーですね。

サッカーに遅れ取ること十五年
(2019年、ラグビーのワールドカップが日本で開催)

自民党が自党のマニフェストを、民主党のマニフェスト公表後に、発表することを称し、「あと出しジャンケン」と言われています。

与党なら やりますよりも やりました (数日前の朝日新聞の投句)


もみじマーク

2009年07月27日 | 川柳
70歳以上のドライバー(運転手)が、クルマへの表示を「努力義務」とされている「もみじマーク」。1997年に公募で決まったマークですが、濡れ落ち葉みたい、涙のよう、と当の高齢ドライバーから評判が悪く、再び公募されることになりました。

新緑の若葉のころがなつかしい
東西の両横綱の若葉もみじ
親世代 おつかれさまという若葉
煌々と今なお光るもみじかな
凛として光る姿のもみじかな
高齢者もっと持て持て自信をば
高齢の心のすき突くもみじかな
もみじ路の 心のすき突く雨だれ形
もみじ路の心 逆撫でする雨だれ
アラセブがもみじいやだと駄々をこね (アラウンド・セブンティー)
過去わかば いまもみじなり 四十年
日本丸牽引したのは若葉の頃
新緑の若葉 実をなし落ちるまで

自推は、ラスト3句です。若葉ももみじも、自分に自信をもって欲しいものですね。


『コーポレート・ファイナンス』を読んだ

2009年07月27日 | 読書
大学生が、学園祭で、モツ鍋屋を出店する。鍋釜や食材などの初期経費は100万円。1000人の学生が1000円ずつ出資(自己資本)して経営した場合は……。
盛況なので、紙皿や食材を追加発注した。必要経費10万円は、金利10%で銀行借入(他人資本)した。

『すらすら読めて奥までわかる コーポレート・ファイナンス』(内田交謹著、創成社)を読みました。冒頭のモツ鍋屋のようなたとえ話で、非常に分かりやすくコーポレート・ファイナンス(企業財務)を説いた本です。

中小企業診断士の資格試験に必要で、財務会計を一通り学んだ私ですが、「奥までわかる」のサブタイトル通り、新しい発見もいっぱいありました! たとえば、これまで「割引配当モデルの公式の分母は期待収益率」と覚えていましたが、実は「期待収益率=安全利子率+リスクプレミアム」なのだ、と知りました。CAPMの公式、「個別証券の期待収益率=安全利子率+β(市場ポートフォリオ+安全利子率)」の右辺とピタリ重なります。

著者は、北九州市立大学の先生。モツ鍋の例も、九州ならではですね。ふだん社会経験の浅い20歳前後の学生と接しているだけに、いかに「彼らに理解できる本を作るか」に心を砕いてらっしゃるのが、手に取るように伝わってきました。

分かりやすさが一番! の本です。財務会計を学びたいと考えられる方は、オーソドックスな参考書を読む前に、まずこの本の一読をお勧めします。