壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

ドットコム型

2009年12月28日 | 雑記
先日、エコノミストの集会に参加していると、日本の景気はV字回復するだの、L字型だだの、W型だのと学者たちが口々に雑談していました。

アルファベットは景気の波を指しています。V字は、カルロス・ゴーン社長率いる日産自動車の復活劇に見る通り、いったん業績が悪くなっても、トランポリンで弾むように以前の水準へと回復することです。L字は、景気が悪くなって、その悪い状態が続くこと。W型は、Vが二つつながったものです。

すると、あるエコノミストが、「いや、いまの景気はドットコム型だ」と割って入ったのです。それは何ですかと尋ねると、「WWWだ」との解説。一堂、大いにうなずいていました。

エコノミストとはいえ景気の見通しに自信がない。しかし立場上、「分からない」とは言えない。そんな苦しい立場を表した笑い話です。

波乱万丈も刺激があっていいのですが、40を過ぎると、安定の良さを身に染みて感じます。来年は良い年でありますように。

『人脈づくりの科学』を読んだ

2009年12月25日 | 読書
「人脈」という非常に抽象的な現象を、科学の視点から解明しようとした本を読みました。『人脈づくりの科学―「人と人の関係」に隠された力を探る』(安田雪著、日本経済新聞社)。非常に面白かったですです。著者の安田さんは、東京大学ものづくり経営研究センターCEO特任教授で、自ら人脈ベタと言っています。

「孤高を装うことで人間関係の乏しさを受容しつつ、人脈づくりの才能のなさにため息をつく。人々を引きつける天賦の才をうらやんだりもする。私自身は、明らかにこのタイプの人間である」と表明されています。でも、往々にして、こういう人は、自らをその逆と認識している、あるいは自覚しておらずとも第三者から見たらその逆に映る、ということがありますね。

●以下、要約、および引用。
パーソナルネットワークは、自然のままにしておくと密度が高くなっていく。(類は友を呼ぶ、というヤツですね)

おおよそネットワークには、ランダムネットワークと、スケールフリーネットワークがある。

スケールフリーネットワークは、ある人を介しないと、別の人と知り合いになれないというネットワーク。たとえば、地方の空港からは、羽田(成田)(←これがハブです)を経由しないと、海外の空港へ行けない。たとえば社交界。ハブ役の仲介がなければ首を突っ込めません。

ランダムネットワークとは、多くの人と相互に知り合い、という人同士のネットワーク。たくさんの地方空港から、それぞれ海外の多くの空港との間にランダムに飛行機を運航が運航されている状態。たとえば小中学校のクラス。みんながお互いを相互に知り合っています。

どちらのネットワークも、無差別攻撃に対しては頑強である。ただしスケールフリーネットワークはハブが無くなると、一挙にネットワークが崩壊する。いわゆる組織のキーパーソンです。

人間関係において、構造同値になってはいけない。(余人をもって代え難い人になれ、ハブの役割を果たす人になれ、ということですね)

性的なつながりは、あきらかにスケールフリーネットワークとされる(職業娼婦がハブになる、ということでしょうか?)。エイズが広がった時、希少なワクチンをどう使うか。一方は、ハブの人にワクチンを打つべき、一方は、不運にも罹患してしまった人のために備蓄しておくべき。学者の間で論争があったそうです。

「スモールワールド」。友だちの友だちの友だちというふうに人間関係を広げて行くと、わずか6人で、世界の裏まで行くそうです。世界は6人でつながっている?

「見えざる大学」。人工知能の研究者について、非常に実証的な実験をされていました。人工知能の学界の300人ほどの学者について、「共同プロジェクトの参加者」「共著者」「同じ研究室への所属経験」という3点について調べると、いくつかのグループに分けられたそうです。そして、ハブ的役割を果たす研究者が誰かも、明らかに浮き彫りになりました。

人脈は、放っておくと(自然に任せると)、優先的選択に支配されて、固まっていく。つまり、価値観の似たもの同士、一緒にいて居心地がいいもの同士が集まり、かたまる。だからこそ人間関係を自然にゆだねてはいけない、となります。

結論には、3点、書かれていました。
1)遠くの人との関係を大切にせよ(年1回や数年に1回しか会わない疎遠な人とのつながりを、毎日会っている人との関係同様に、大切にせよ。ウイークタイズです)。
2)異なる社会圏の人々との関わりを大事にせよ(ハブの役割を担え)。ただし、異なる社会圏とつながるのだから文化的摩擦が生じます。寛容でなければ務まりません。
3)つながりを自然に任せず、微調整しよう。

ただ、つながりに何を求めるか、も重要です。家族や友人であれば、「つながっている」こと、それによって安らぎが得られること、それ自体が目的です。ビジネス上の相手であれば、何らかの価を生まれること、でしょうか。

いずれにせよ、勇気を持って一歩を踏み出すことが大切なのだと思います。今日の帰りは、いつもの赤ちょうちんでなく、初めての店に入ってみよ。