女とは良いものだぞと友誘い
未だ生きているかと友が訪れる
生きるのは良いものと気付く三日前
後三日酔うて泣く者、笑う者
雨降って今日一日を生きのびる
諸共と思えばいとしこのしらみ
アメリカと戦う奴がジャズを聞き
人形を抱いて寝ている奴もあり
特攻隊 神よ神よとおだてられ
慌て者小便したいままで逝き
万歳がこの世の声の出しをさめ
あの野郎、行きやがったと目に涙
父母恋し彼女恋しと雲に告げ
上記は、神風特別攻撃隊第三御楯隊にいた、4人の隊員の川柳です。及川肇(盛岡高等工業)、遠山善雄(米沢高等工業)、福知貴(東京薬専)、伊熊二郎(日大)。
出撃待機中に、遺書代わりに川柳を数多く作り合っていたのです。
「私はこれら特攻隊員の川柳を、松田征士さんの発掘で知ったとき、しばし言葉を失った。昭和の戦争というものがどれほど非情なものであったことか。魂の告発がここにある。」(以上「東京人」(2012年4月号)半藤一利氏より)
本土最南端の陸軍特攻基地、鹿児島県の知覧からは、436名が飛び立ちました。
海に出て木枯し帰るところなし(山口誓子)
●以下は余談。
今年8月、NHKの戦争特番で、マンガを描く兵隊をクローズアップしていました。なかなかいい番組でした。特攻戦士の川柳というのも、ドキュメントのいい素材になるかもしれません。企画、買ってくれませんか?
昭和11年、二・二六事件が勃発します。「しかし、当時厳戒令が敷かれていたので、新聞はこの大事件について一切書けなかった。世の中には鬱屈した空気がたまりにたまっているところに起こったのが、例の阿部定事件。(中略)新聞はもう鬱憤ばらしに書きに書きたてる。」(引用、同上より)。そうなんですか。2・26事件と阿部定事件は、同時代なんですね。
そのネタは、新聞が書きたてるのか、読者が求めるのか。
厳戒令が敷かれているわけでもないだろうに、原発再稼働をめぐる首相官邸前デモについて、ほとんど無視とも言える報道の少なさ。まるで2・26事件直後のよう(当時を知りませんが)。いま有名人のスキャンダルでも起これば、一気に祭り上げられそうですね。沖縄密約事件を描いた『運命の人』を見ても分かるように、下半身ネタで一気に風の向きが変わるのは、その通りですからね。
誘導に惑わされず、誰が、何のために、どうしたがっているのか、を見つめ続けることが大切です。