『北朝鮮に消えた友と私の物語』(萩原遼著)を読みました。
大阪の定時制高校時代の友人、ユン・ウオニル。済州島出身の在日韓国人である彼が、北朝鮮による帰国運動で北に帰っていった。著者は、長じて共産党の日刊紙「赤旗」に就職、ピョンヤン特派員となり、高校時代の友を訪ねる。それがスパイ活動ととられ、強制退去されてしまう……。
また著者は、大阪の高校卒後、大阪外語大朝鮮語科に入学前の浪人中、東京・新宿の在日朝鮮人のグループにハングルを教わる。その先生が金南仁で、彼は済州島の4・3闘争を生き抜き、日本に出国してきていた……。
物語はタイトル通り、著者がユンを訪ねる話が主軸。ですが、金南仁が10代で経験した4・3闘争の激烈さ、北朝鮮の収容所の悲惨さなどの事実もスゴイ。改めて驚きを感じました。
本書を読んで、なぜ南の済州島の出身の人が、また、亭主が在日朝鮮・韓国人だからといって日本人妻が、北に帰国するのか? そんな長く疑問だったことも氷解しました。
世の中のことは、ウラのウラはオモテ。そう単純に、かつ論理的に考えていましたが、そうとは限らない。ウラのウラが、さらに深いウラだったり、ウラかオモテか分からなかったり。スパイの恐ろしさも学びました。
いずれにせよ、個人の自由と尊厳を踏みにじることは許せない。そんな国家や組織というのは何か? 憤りを感じました。
私はつっかえつっかえ読み、それでも理解できない部分がありました。読了には、ある程度の日朝の近代史の知識が必要と思われます。