壁際椿事の「あるくみるきく」

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『咸臨丸、サンフランシスコにて』を読んだ

2011年07月01日 | 読書(文芸、フィクションほか)

『咸臨丸、サンフランシスコにて』(植松三十里著)、および併録の『咸臨丸のかたりべ』を読みました。同作の原題は『桑港にて』で、第27回歴史文学賞を受賞。それを改稿したのが同作です。『咸臨丸のかたりべ』は書き下ろしです。

咸臨丸というと、太平洋を初めて横断した日本籍の蒸気船。幕臣、勝海舟を船長に、通訳としてジョン万次郎、後に慶応義塾を創始する福沢諭吉らが乗り込んだ船として有名です。しかし物語は、乗員130名中、90人もの水夫に焦点が当てられます(人数は記憶によるので、事実と異なるかも)。ま、豊臣秀吉でなく、大阪城を作った大工さんにスポットを当てたようなものです。

【以下、カバーより引用】
安政7年、条約批准のため遣米使節団が江戸湾を出航した。勝海舟が船長を務める咸臨丸には、瀬戸内の塩飽衆・吉松たち日本人水夫が乗り組むが、悪天候に悩まされ、病気も蔓延する。アメリカ人水夫との対立、士官・中浜万次郎への反発など不穏な空気の中、果敢に太平洋横断に挑んだ彼らを思わぬ運命が待ち受けていた。

植松さんの小説は、(1)歴史に埋もれた人を掘り起こしている(2)歴史的背景を知らなくても読める、(3)史実の記述と物語の部分のメリハリがついている、(4)悪者が登場しないという特徴があります。

現に本作でも、士官である勝や万次郎、アメリカ人水夫が、水夫と対立しますが、悪く描かれていません。むしろ、勝の吉松へ言った「じゃあ、お前が残るかい」や、万次郎の「不平を言うても始まらん。海の男は死を覚悟しているもんや」など、登場シーンは少なくとも深い言葉が散りばめられています。

面白いところでは、岩波書店の『科学』という雑誌に、佐賀藩の日本初の反射炉にまつわる物語を書かれています。(日本初は、伊豆の韮山でないんです)。『残彫二人』も面白そうです。ぜひ。





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