壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『ディアドクター』を見た

2009年11月30日 | 雑記
『ディアドクター』(西川美和監督)を見てきました。

とてもいい映画でした。社会性もあり、ファンタジーもあり、娯楽性もあり、楽しめました。

欲をいえば、終盤の数シーンが蛇足だったように感じました。駅のホームにたたずむ医者(笑福亭鶴瓶)と彼を追う刑事を、隣のホームからロングで狙う。列車が走り過ぎて、医者だけ消えている。ここでエンドにしても良かったのではと思いました。

ラスト、東京の病院に現れて、老婆(八千草薫)に「朝のスープです」と差し出す場面は、医者の神出鬼没ぶりを示すための演出なのでしょうか?

27日(金)、飯田橋のギンレイホールで、最終日の最終回、満席でした。

先日の「あるく みる きく」

2009年11月30日 | 雑記
前回の続きです。どのように考えればいいでしょうか? 次のようなマトリックスを作ればいいのではないでしょうか。

     ぼ|マ|め|て
質問1a  ○|×|-|-
質問1b  ×|○|-|-
設問1c ×|×|-|-
質問2a  -|○|×|-
質問2b  -|×|○|-
質問3  -|×|-|×

設問3より、マフラーとてぶくろは共に身につけていないと判断できます。よって、質問1b、2a、2bはあり得ません。

     ぼ|マ|め|て
質問1a  ○|×|-|-
設問1c  ×|×|-|-
質問3  -|×|-|×

■解答>「ぼうしとめがねの両方を身につけていましたか?」と尋ねる。

この場合、栄さんの答えが「はい」なら、身につけているのは「ぼうし、めがね」に特定できます。設問で「4品のいずれかを身につけています」と条件付けされていますから、栄さんの答えが「いいえ」ということ、つまり身につけているのは「ナシ」ということはありえません。

どうでしょう。この解答で良いでしょうか?


本日の「あるく みる きく」

2009年11月27日 | 雑記
今日、電車内で、ある中学受験予備校の中吊り広告を見ました。ある私立女子中学校の入試問題が、広告に使われていました。

■設問> しょう子さんは、ぼうし、マフラー、めがね、てぶくろの4品のいずれかを身につけています。そのしょう子さんに会った栄さんに質問し、彼女が何を身につけていたかを明らかにします。

質問1 しょう子さんは、ぼうしとマフラーの両方を身につけていましたか。
栄さんの答 「いいえ」
質問2 しょう子さんは、めがねかマフラーのどちらかは身につけていましたか。
栄さんの答 「はい」
質問3 しょう子さんは、てぶくろとマフラーの少なくともひとつは身につけていましたか。
栄さんの答 「いいえ」

■問題> さて問題です。あとひとつ、どのような質問をしたら、しょう子さんが身に着けていたものが全てはっきりしますか?

『偶然のチカラ』を読んだ。その(3)

2009年11月26日 | 読書
12345678910
○○○●○●●●●●

コイントスをして、表(○)が出るか、裏(●)が出るか。10回、実際にやってみると、このような結果でした。全10回の試行で、表4裏6です。100回やると、表40裏60になるでしょうか。そんなことはなくて、もう少し50対50に近づくでしょう。例えば53対47とか、54対46とかです。これが1000回、1万回、1億回となると限りなく半々に近づくのでしょうね。

とはいえ、結果は均一かというと、そうでない。それは、たかが10回の試行でも明らかです。表が3回連続し出て、後半には裏が5回も連続して出ています。波というか傾向というか、何らかの偏りがあります。

これは、何を物語っているか。何の作為もないコイントスという「偶然」にも、何らかの「必然」が紛れ込んでいるということを物語っているのではないでしょうか。

数日前の記事、「『偶然のチカラ』を読んだ。その(2)」でご提示したルーレットの設問に関して。
私は3)が良いと思います。ギャンブルに勝つのも3)を選ぶ人でしょう。ただし自分が渦中にいれば、熱くなりやすいタイプだから、冷静に3)を選べる自信はありませんが……。
こうした問題に正解は、たぶありません。その人が、信念を持って選べば、それが正解になるのです。でも、「何となく波があるな」「こっちかな」という“カン”も大切にしたいものです。

いつも、「あるく みる きく」をご愛読いただきまして、ありがとうございます。




『一澤信三郎帆布物語』を読んだ

2009年11月25日 | 読書
学生時代のことだから20年近く前。「一澤帆布」のカバンを持っている友だちがいて、「シャレたかばんだな」と思っていたんです。京都にあるカバンメーカーで、京都大山岳部のザックを作った過去もあると知りました。

「兄弟による骨肉の争い」「老舗の遺産相続騒動」……。一澤帆布の、こんな見出しの記事を目にしたのは数年前。どうなったのだろうかと心配しつつも、今に至っていたのですが……。こんな本を見つけ、つい手に取ってしまいました。『一澤信三郎帆布物語』(菅聖子著、朝日新聞新書)です。

相続をめぐるゴタゴタが起こる前に、先代の一澤信夫さんを取材し、その人柄に魅せられていた著者。親しく付き合う中で、騒動が勃発し、「事件を追うタイプの書き手ではない私」ではありますが、期せずして遺産相続のゴチャゴチャへも筆を進めます。

それにしても、先代、一澤信夫さんの帆布に関する博識ぶり。明治時代初期の写真に、村上水軍の紋章があるテントが写っていて……、といった一連の下りには驚きました。牛乳配達屋、バンドの楽譜入れ、戦中には軍需品(嚢、吊り床〈ハンモッグ〉、海軍浮力兵器〈浮き〉など)、京都大山岳部ら用の登山ザック、そして現代のかばん……。同じ帆布からも時代ごとに、いろいろなものが作られます。祖父、父が大工だった我が家にも、腰に巻く帆布製の釘入れがありました。「○○屋」などと金物店の屋号が染めてありました。あれも一澤帆布製だったのでしょうか。

製造直販の家族経営。マニュアルはなく、阿吽の呼吸で進んでいく仕事……。中小企業診断士の試験だと、「職人の暗黙知を形式知化する」「マニュアル化する」「需要に応えるため協力工場を探して量産体制を整える」というのがマルなのでしょうが、私は大反対。「今のままがいい」と思います。老舗だからこそ変えずに大切に守りたい部分です。

「そういえば信三郎帆布がオープンしたてのころ、毎日あっという間に品物が売り切れるのに、夕方になるとその日の分の、できたてホヤホヤのかばんが運び込まれていた。色や形が違う品種が少しずつ。その様子がまるでパン屋みたいで、製造直販や対面販売の底力に感動したものだ」。著者は、信三郎帆布の店先の様子をこう表現します。パン屋なら多くの人が買い物経験があるので、一澤信三郎帆布に来店経験のない人にも、その雰囲気が伝わります。女性の書き手ならではの表現だと感心しました。

巨大企業、日本コカ・コーラとはまた違った意味で、中小メーカーのマーケティングの面白さがあふれています。元気が出てくる本でした。