人間が経済システムに従属することなく、人間に従属する経済システムを作ろう。そんな趣旨の本を読みました。『人間回復の経済学』(神野直彦著、岩波新書)です。
ブッシュ大統領時代にアメリカで猛威をふるい、日本にも飛び火した新古典主義経済学。筆者は、この理論は、人間を「経済合理的な行動をする動物(ホモ・エコノミクス)」と仮定してこそ成り立つ試験管の中の論理だとバッサリ。
人間は、現実には知恵あるホモ・サピエンスです。
「経済人仮説は、複雑な存在である現実の人間から多くの側面を捨象して純化させた、理論的仮説だったはずである。(ニュートンが)物体の落下の法則を導き出すために、真空状態を想定したようなものである。もちろん、現実には空気が存在するために、物体は真空状態と同様に同じ速度で落下することはない。
そうした(純粋に)理論的な仮説であるにもかかわらず、それが(なぜか)行動の基準として主張されていく(後略)」(カッコ内はわたしの補足)。
東日本大震災で被災された方に、多くの義援金が集まっています。経済人仮説では説明できない行動です。売名行為(広告費)という考え方も成り立ちますが、それは強者の巨灯が目立つということに過ぎない。なんの広告効果も期待できない「貧者の一灯」がどんどん集まっています。
近ごろは、何を読んでも震災に関連づけてしまいます。