【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

引き分けの代償

2014-02-07 07:20:55 | Weblog

 ソチ五輪をどうしても見たかったのか、それともプーチン大領との会談をどうしてもやりたかったのか、安倍首相がロシアを訪問するそうです。プーチン大統領はかつて「北方領土」に関して「引き分け」という興味深い発言をしています。どちらかが一方的に「勝ち」を得るのではなくてサッカーのように両方が「勝ち点」を得る、という意味かな、と私は思っているのですが……すると、日本が「北方領土」を得るのだとしたら、ロシアは何をその代わりに得る、ということになるのでしょう? たとえば、沖縄の米軍基地のように北方領土に日本の負担でロシア軍基地?

【ただいま読書中】『ひとりブタ ──談志と生きた二十五年』立川生志 著、 河出書房新社、2013年、1700円(税別)

 著者の落語を聞いたのは、たぶん1回だけ。異常に長い長い二つ目生活のあとの真打ち昇進直後で「史上最強の二つ目、とはもう言えなくなった」なんて枕から話が始まったような記憶があります。「立川流」では、落語ができるだけでは駄目で、踊りと、あとはなんだったかな、楽器だったか歌だったか、師匠(談志)の基準をクリアしないと昇進ができない、という話もありましたっけ。
 本書は、著者が2年の会社勤めをやめて、談志のところに弟子入りを頼みに行くところから始まります。そこで意外に思うのは、談志が単に恐いだけの偏屈親父ではないこと。いや、恐いことは恐いのですが。
 3年目に二つ目になる許可が出ますが、太鼓が下手だったために取り消し。著者は凹みます。師匠のところに寄りつかずに、パチンコ屋に入り浸ったり、レギュラー番組を持ったり。だけど落語の修業だけは続けていました。そこで描かれる非日常的な日常生活の奇妙きてれつさときたら、とても人間の生活とは思えませんが、落語の観点から見たら「ネタの宝庫」です。
 上納金倍付け騒動などもあって、著者はたくましくなります。「とびきり図太いひとりブタ」に。さらにすごいことを言います。談志の不条理さ、弱い人間性、そういった「談志の毒」を飲みほし談志の芸と恋をすること、それが談志を愛することだ、と。
 お笑いには「自虐ネタ」というジャンルがあります。その点では本書は「自虐ネタ」のオンパレードと言ってもいいでしょう。ただその「虐」が半端ではない。そしてそれを受け止める著者は、「自虐」をちゃんと「落語フィルター」に通しています。これまた半端な人間にはできない態度です。ここまで人は強く優しくなれるのか、と私は心が大きく動いてしまいます。
 それにしても、東京での真打披露興行が五夜連続とは、そしてそこに出演してくれた人たちの豪華さときたら…… 
 そうそう、著者が「談志の落語で好きなもの」を二つあげますが、その内の一つ「居残り佐平次」に関しては私も他の落語家よりも談志が語る噺が好きです。著者と意見が一致して、ちょっと(いや、相当)嬉しいな。



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