【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

美人

2011-04-21 18:43:32 | Weblog

 昔:夜目遠目傘の内、見返り美人、バックシャン
 今:プチ整形、マスク美人、スキー場、ネットでの発言が魅力的な人
 さて、他には?

【ただいま読書中】『白雪姫、殺したのはあなた ──ワンス・アポン・ア・クライム』エドワード・D・ホック 他著、 加賀山卓朗 他訳、 原書房、1999年、1800円(税別)

目次:
「白雪姫と11人のこびとたち」(エドワード・D・ホック)、「ダウンタウンのヘンゼルとグレーテル」(ジャネット・ドーソン)、「狼の場合」(ビル・クライダー)、「七人の……?」(ジョーン・ヘス)、「“千匹皮”をフェイクで」(ダグ・アリン)、「白鳥の歌」(ジョン・ラッツ)、「ラプンツェルの檻」(ジェイン・ハッダム)、「いさましいちびの衣裳デザイナー」(レス・ロバーツ)、「かしこいハンス」(ジョン・L・ブリーン)、「シンデレラ殺し」(クリスティン・キャスリン・ラッシュ)、「ブレーメンのジャズカルテット」(ピーター・クラウザー)、「狼と狐は霧のなかから」(エド・ゴーマン)
 最初の「白雪姫と11人のこびとたち」の見事なこと。グリムの骨格を見事に生かしています。しかし、単なるパロディーとか翻案ものではありません。物語の舞台を現代アメリカに持ってきたことと、登場する「こびとたち」が11人いること、それがどちらもこの物語には「必要条件」であることが、最後の1行になってすぱっとわかります。いや、見事です。
 ストリートチルドレンとなった“ヘンゼルとグレーテル”は、“魔女”に食われそうになりますし、「赤ずきんちゃん」を目の前にした狼男は青春の悩みを抱えています。いさましいちびの衣裳デザイナーは……わははははは。もう一つオマケに、わははははは。なおこれはもちろん「いさましいちびのトースター」ではなくて「勇ましいちびの仕立て屋」が原典です。「王子様と結婚してそれからいつまでも幸せに暮らしました」はずのシンデレラは、二人の子を産みそして夫婦間が不仲になってしまいます。そして…… あああ、苦い話です。でも、私はこの短編がとても気に入りました。語り口ににじみ出る苦さと人生に対する徒労感が、とても良い味を出しています。
 「グリム」の中には残酷さが同居しています。それをただ「残酷だ残酷だ」と言い立てるのではなく、そのエッセンスの一部を取り出して別の形の作品に蒸留することで「グリムの楽しさ」までも別の形で感じることができるようにしてあるこのアンソロジー、本好きにはたまらないものであることは請け合いです。



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