甲さんと乙さんがトラブルになって、最後に甲さんが「ごめんねごめんね」と言ったら乙さんが激高して「『ごめんねごめんね』とはなにごとだ!」。
これを文章で読んだら、乙さんの方がワルモノに見えますね。だけど甲さんが、漫才のU字工事の口調で「ごめんねごめんね」と言ったのだったら、それは甲さんの方がワルモノ、と言えるでしょう。文字だけではなかなか「本当のこと」はわからないものです。
【ただいま読書中】『秋本治SF短篇集』秋本治 作、集英社、2011年、419円(税別)
目次:「R.P.G.」「N少女いずみ」「時は……」「KAKIMARU」「SUCCEED」
「こち亀」で知られた著者の、「それ以外」の短編でSF風味のものを集めたものだそうです。
もっとも、SF風味ではあってもSFと言えるのは……「SUCCEED」くらいかな。これは読んでいて「おお」と言ってしまいました。豊かな自然の中で平和に暮らしている村の近くにダムが造られ、それによって村の生活は変わっていくのですが……という、どこがSFなんだ?というオープニングと話の進展ですが、伏線があちこちにしっかり張ってあって、ちゃんとSFに、それも二段落ちになっています。なかなか。
SFというより懐かしい雰囲気を味わえるのが、「R.P.G.」や「N少女いずみ」。作品発表当時の、Windows95が話題になっていた時代の雰囲気がぷんぷんです。あの頃には、「コンピューターウイルス」とか「フリーソフト」とかいう「ことば」だけで、一つの雰囲気(異化作用)が作れましたっけ。
そういえば、それよりさらに10年前には「ワープロの誤変換」をネタに一つの小説を作り上げた人もいました(誰だったかは忘れましたが)。今だったらなかなか考えられないことですけれどね。
私は「こち亀」は、連載初期の頃にちょこっと読んだだけで、熱狂的なファンというわけではありませんが、あのちょっと説明的なのに世間のテンポとはちょっとずれた口調が気にはなっていました。
ところで私はどうしてこの本を読むことになったのでしょう? 図書館に行って「予約の本をお願いします」と言ったらこれも一緒に出てきたのですから、私が予約したのは間違いないのですが、何を思って予約したのか覚えていないのです。う~む、こうなったらこんどは「山上たつひこ」の作品を読むべきかな?(秋本治は最初「山止たつひこ」のペンネームで書いていました)
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