「鯨は頭がよいから、食べてはいけない」と主張する人がいましたが、もしも牛や豚や羊に知能があることがわかったら、そういった人はどうするのでしょう。「頭が悪い動物は食べても良い」と言うとか?
【ただいま読書中】『鳥頭なんて誰が言った? ──動物の「知能」にかんする大いなる誤解』エマニュエル・プイドバ 著、 松永りえ 訳、 早川書房、2019年、1900円(税別)
著者は子供時代には「イヴ・コパン(「ルーシーの膝」の人)」に、学生の時には「ジェーン・グドール(チンパンジーに個性があり道具を使うことをフィールドワークで発見した人)」になりたいと思っていました。そして著者は「ルーシー(オウストラロピテクス)はどのようなフィールドでどのような生き方をしていたのだろう」という疑問を解明したくなります。そのことについて博士論文を書きながら(指導教授は、イヴ・コパン!)著者は「霊長類以外の動物はどんな“知的能力”を持っているのだろう」と疑問を拡張していきます。
木の実を割るのに石を“道具”として用いるサルは複数知られています(例:ブラジルのノドジロオマキザル、コートジボワールやギニアのチンパンジー)。ボノボは「石器」を製作します。すると、地球の歴史で「最初に石器を作った」のは、ヒトではなくてオウストラロピテクスや大型サルの祖先、あるいは小型サル類の可能性があります。
道具を使う動物は、サルだけではありません。ヒグマは石を使って首を掻いているのを目撃されているし、アジア象は棒を使って様々なことをしています。鳥類も多彩な道具使用をしています。笑っちゃうのは、身体を乾かすのにタオルを使っていたカナダヅル。カレドニアガラスは穴の中のミミズを引っかけるための道具を自作します。手も大脳皮質もないのに、どうしてこんなことができるのでしょう。
ルイジアナのワニはシラサギの繁殖期にそのコロニーのそばで、小枝を口にくわえてじっとしていて、シラサギが巣作りのためにその小枝を取ろうとした瞬間襲いかかっていたそうです。その他の水中生物もいろいろな道具を使っていることが具体例で示されます。
かつて「ヒトは道具を使うところが他の動物と違う」と言っていたのが、やがて「道具を作る」さらに「道具を作る道具を作る」と「ヒトの優位性」は少しずつ“後退”しています。というか「ヒトは他の動物より優位にある」とわざわざ言わなければならない理由って、何でしたっけ?
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