【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

発達する理由

2021-12-01 07:01:09 | Weblog

 低気圧や台風が進路を進むにつれて「発達」することがあります。それが一番よくわかるのは中心気圧の低下。
 だけど不思議じゃないです? 低気圧や台風には中心に向けて空気が大量に吹き込んでいます(気圧が低い方に空気が流れるのは当然です)。それなのに中心気圧が下がるとは、中心に吹き込んできた大量の空気は、一体どこに行ってしまったのでしょう?

【ただいま読書中】『連星からみた宇宙 ──超新星からブラックホール、重力波まで』鳴沢真也 著、 講談社(ブルーバックスB2150)、2020年、1000円(税別)

 「連星」とは、二つの恒星(太陽系の太陽)が共通重心の回りを回っているもののことです。私たちが住む太陽系では恒星は一つだけですが、宇宙では連星が多く、夜空に光る「星」の実は半数が連星なのだそうです。地球から見て(太陽を除いて)最も明るいのは「シリウス」ですが、実はこれは連星です。おとめ座のスピカ、さそり座のアンタレスも連星です。北極星も連星、というか、これはなんと3重連星(3つの星で構成された連星)です。3で驚いてはいけません。4重連星や5重連星さえ宇宙には存在しているのだそうです。現時点でわかっている最大の連星は7重連星(さそり座ν(ニュー)星とカシオペア座AR星)。ただ、「一つの共通重心の回りを回る」のは2つまで。あとはその組み合わせ(連星の回りを別の星が回ると3重、連星の回りを連星が回ると4重、といった感じ)です。「一つの共通重心の回りを3つ以上の恒星が周回する」のも理論的にはあり得ますが、ちょっとしたことで不安定になりやすくすぐにその関係は壊れてしまいます。
 連星は肉眼では見えません。ガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡で宇宙を観測したのは1609年ですが、彼の死後、1650年に初の連星が報告されています(北斗七星の“柄"の端から2番目の「ミザール(おおぐま座ζ(ゼータ))」)。以後「2重連星」が次々報告されました。これらが「本当に連星」なのか「もっと向こうにある星がたまたまほぼ重なって見えているだけ」なのかについて激しい議論が交わされています。そして、二つの星がお互いの回りを公転していることが確認できたものは「実視連星」と呼ばれるようになりました。
 単体の星の質量を知るのは困難です。しかし連星でその公転が観測できたら、ケプラーの第三法則に万有引力の法則を組み合わせることでその総質量が計算でき、次に共通重心までの距離から二つの星の質量比が計算できます。つまり、それぞれの星の質量がわかるわけ。なんか手品みたいですね。さらに、質量がわかるとその星の寿命もわかるのです(質量が大きいほど寿命は短い)。
 さらに、ブラックホールの検出にも連星が役立っています。ブラックホールそのものを観測することはできませんが、それが連星になっていたら、連星や降着円盤の観測からブラックホールの存在をあぶり出すことが可能になるのです。また、重力波の検出が最初に行われたのは、2つの中性子星による連星の観測でした。重力波検出装置ではなくて一般相対性理論を使うという“間接的"な観測ではありましたが、実に見事な研究です。

 



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