【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

木登り

2018-02-05 22:09:46 | Weblog

 私は子供時代に「好きな木」が家の近所に一本ありました。登って枝に茂った葉っぱに隠れると、そこは想像力が働く限り何にでもなったのです。大人になってから久しぶりに行ったときには、なんだかみすぼらしい木になり下がっていて、それから数年後に行ったら、そのへんはスーパーの駐車場となってしまって木は一本も生えていませんでした。「みすぼらしい木」でも、あのとき登っておけば良かったなあ。

【ただいま読書中】『かぎっ子たちの公園』エリック・アレン 著、 清水真砂子 訳、 台日本図書、1972年(82年9刷)

 ロンドンの一角の公園、切り倒されたまま放置されている大木は少年三人少女一人の4人組に愛されていましたが、それが片付けられようとしています。コンクリート製の機関車が置かれる、と言うのですが、演説台にも見張り塔にも何にでもなる木の方が子供たち(少なくとも4人組)には好ましいものでした。
 そこで彼らは木の保存運動のために立ち上がります。立ち上がったのはいいのですが、さて、どこに行ってなにをしたものか。
 子供たちは思いつくまま走り回り、一人はとうとう国会議事堂にまで潜り込んでしまいます。別の子はテレビ局の人間と知り合いに。となると「権力」によってトラブルは一挙解決か、とはなりません。「決定事項は決定事項」「子供には発言権はない」で話はずんずん進んで行きます。
 しかし……ここで話は実に意外な展開に。
 本書の子供たちが「木」に何を求めていたのか、子供時代に木登りをしてその木が「ロケット」だったり「砦」だったりした私には、少しわかるような気がします。あの時の想像力と記憶は、かけらとなってはいますが、まだ残っていますから。そして、子供たちの行動や心の動きが、さりげない筆致でしかし実に生き生きと描かれているので、ロンドンの子供ではなくて自分の子供時代までもが本書に描き取られているような気分になってしまいました。




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