【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

スマホの警報音

2021-08-15 15:44:57 | Weblog

 特別警報の時のスマホの大騒ぎは、何回聞いても慣れることができません。まあ、慣れては困るのですが。
 ところで、特別警報が解除されたときには、「解除されたよ」と静かに通知してくれませんか? 永遠に特別警報態勢のわけはないのですから。

【ただいま読書中】『神のダイスを見上げて』知念実希人 著、 光文社、2018年、1300円(税別)

 有名な「神はダイスを振らない」(アインシュタイン)がまず紹介され、そして「神が振るダイス」(地球に急接近している巨大小惑星「ダイス」、表面がもろくて剥がれ続けているため軌道が確定できず、あと5日で地球に衝突する(そして人類を絶滅させる)か地球のすぐそばを「巨大な天体ショー」として通過するだけか、がわかる)が空の一画に見えることも描写されます。5日後は「裁きの刻(とき)」。しかし主人公の高校生亨にとって、地球や全人類のことよりも、姉が殺されたことの方が重大事でした。彼女は亨にとって唯一の家族、「世界」そのものだったのです。「人類絶滅(の可能性)」を目前にして混乱した社会では、真っ当なお葬式もできず、姉の骨壺に亨は誓います。復讐を。
 でも、誰に対して?
 『地上最後の刑事』『カウントダウン・シティ』『世界の終わりの七日間』(ベン・H. ウィンタース)では小惑星衝突によって人類が滅亡する「終末」を目前にしながら、地道に「自分の職責」を果たそうとする元刑事の姿がハードボイルドの形式を借りて静かに描かれていました。「終末目前」「捜査」という点では、本書も似ています。ただこちらは、主人公が高校生で、しかも「終末」があくまで「確定していない可能性」という点が大きく違います。なんというか、ハードボイルドではなくて生煮え感が出てくるのですが、でも青春小説としてはこの生煮え感が重要でしょう。未熟で考えが足りない人間の行き当たりばったり感が、物語の切迫感や焦燥感を盛り上げてくれますから。
 姉が大学で怪しげな(「ダイス」を「神からの人類へのメッセージ」と信じる)サークルに所属していた、と知った亨は、その手がかりを追います。しかし、逆に彼を狙う謎の人物(たち)が……
 「真犯人」を突き止める謎解きとしては、それほど難しいものではありません。手がかりを著者は小出しにしてくれますが、その小出し小出しの隙間にこちらには考える時間がたっぷり与えられましたから。ただ、「虚飾の日常」がはぎ取られた「非常時」を舞台としていますが、「青春小説」としての真っ当な骨格がしっかり構成されていて、そちらの方で私は楽しめました。

 



コメントを投稿