【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

水洗トイレから下水へ

2019-08-27 07:15:26 | Weblog

 先日の続きで今日は下水道の本です。

【ただいま読書中】『トコトンやさしい下水道の本』高堂彰二 著、 日刊工業新聞社、2012年(18年6刷)、1400円(税別)

 江戸時代に下水を流れるのは、雨水と生活排水でした。屎尿は汲み取りトイレから田畑へ運ばれていました。近代日本での下水道の始まりは、明治十六年(1883)神田下水(レンガ積み)です。都市部での下水の必要性はずっと言われていましたが、戦前の東京区部ではやっと10%。明治二十一年に「東京市区改正条例」(日本で最初の都市計画法)がありましたが、財政難を理由に上水道事業が優先されました。東京オリンピックでやっと気運が高まり、昭和四十五年の公害国会で弾みが付いて普及率が上がりました。
 日本初の下水処理施設は、大正十一年の三河島汚水処分場(現在の三河島水再生センター)ここで、それまでの「放流」から「処理」へと下水のあり方が変わっていきました。
 下水道の「上流」は「水を使うところ」ですが、もう一つ重要なのが雨水の処理です。「分流式下水」では、「汚水は処理場へ」「雨水は直接河川や海へ」ですが、「合流式」は「全部処理場送り」です。しかし大雨の時には処理場が“溺れて"しまうため、オーバーフローさせて汚水も雨水も直接河川や海へ流すことになっています。薄めているから大丈夫、という発想なのでしょうが、汚水を直接環境に流すのはよろしくないですよねえ。
 大震災の時、命やインフラや水や物資にはすぐ頭が回りますが、トイレは忘れられがちです。しかし、トイレが使えないと悲劇が起きます。一般に避難所では100人に一つトイレが必要、とされています。さて、お近くの避難所、トイレは(断水があっても)大丈夫ですか?
 家庭から出た汚水は、排水管を流れますが、その太さや勾配にはそれぞれ規定があります。トラップは一箇所。また、宅地内で所々に「宅地ます」が設けられ、点検や清掃ができるようになっています。確認してみたら、我が家では雨水と汚水とで別々の配管になっていました。
 雨水は、放流されるだけではなくて、途中で土中に浸透させる場合もあります。べったりと舗装と建築に覆われている都市部の土はからからに乾いているでしょうから、水を喜ぶかもしれません。
 処理場では、沈殿と活性汚泥法で汚水は浄化されます。私は半世紀前にこの方法を習いましたが、特に進歩はないようですね。なお、最終産物の汚泥の活用法として、バイオマスやバイオガスとしての利用がこれから進む予定だそうです。せっかくの「資源」なのですから、使わなければもったいないですよね。というか、屎尿を堆肥として活用していた江戸人に21世紀人が負けてはいけないでしょう。
 下水の未来についてもいろいろ書いてありますが、私が注目したのはマイクロ水力発電です。恒常的な水流があるのですから、これが活用できたら都市の生活はもっと快適になるかもしれません。電力会社は嫌がるかもしれませんが。




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