【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

師匠と弟子

2022-05-01 09:03:21 | Weblog

 「出藍の誉れ」という言葉があるように、「師匠」が注目されるのは「師匠を越えるすごい弟子」がいた場合です。だけどそれって、「人を育てる苦労」にプラスして「自分の強力なライバル」を作ってしまうわけで、なんだか割が合わないような気がします。

【ただいま読書中】『絆 ──棋士たち 師弟の物語』野澤啓亘 著、 日本将棋連盟、2021年、1810円(税別)


 雑誌「将棋世界」2019年2月号〜20年6月号に連載された「師弟」に大幅に加筆されたものです。
 個人としての棋士は、なかなか本心を明かしません。記者がインタビューで苦労しているのは、私もテレビ画面でよく見かけます。ところが「師弟」を切り口にすると、棋士たちは驚くほど饒舌に自分について語り始めるのだそうです。
 本書に登場する「師弟」は「中田功/佐藤天彦」「畠山鎮/斎藤慎太郎」「木村一基/高野智史」「淡路仁茂/久保利明」「勝浦修/広瀬章人」「石田和雄/高見泰地」「桐山清澄/豊島将之」「杉本昌隆/藤井聡太」の8組ですが、扱われる棋士は16人ではありません。たとえば中田さんの師匠大山康晴も出てきます。中田さんは、自身の師匠も弟子も「名人」なのです。
 「師弟」が存在するのは、将棋界独特のユニークな制度です。でも特に「キマリ」があるわけではないので、単に形式だけの関係の師弟もあれば、まるで実の親子のような濃厚な関係の師弟もあるそうです。本書に登場する師弟も様々。ただ「将棋は人間が指すもの」であることが「師弟」を見ていてもよくわかります。「強い棋士」は、単に「将棋が強い子供がそのまま成長してなるもの」ではなさそうです。その過程でどんな人に出会い育てられ競い、そういった「人間関係」の中で強い棋士になっていくものなのでしょう。

 



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