【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

破傷風

2011-04-17 19:17:42 | Weblog

 被災地で、瓦礫の片付けをしていて負傷し、それが原因で破傷風になる人が何人も出ているそうです(「がれき撤去で破傷風感染 宮城県が注意呼び掛け」(4月13日河北新報http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110413-00000012-khk-l04))。土の中にはまず間違いなく破傷風菌がいるので、とにかく怪我をしないように気をつけるのが一番ですが、まだ電気も通っていないような地域では、破傷風の抗血清は十分あるのかも気になります。

【ただいま読書中】『東京大空襲 ──あの日を生き抜いたナースたちの証言』日本テレビ、2008年、1143円(税別)

 2008年に日本テレビが制作したドラマ「東京大空襲」の元となった証言集と、ドラマのあらすじやメイキングです。
 今年の1月6日の読書日記に書いた『碧素・日本ペニシリン物語』にも、東京大空襲がちらりと登場しました。“使える”医師や看護婦はほとんど戦地に送られた状況で、残された医療者が空襲下で苦闘する話(大空襲下で編成された救護班は、陸軍軍医学校の医師14名、看護婦20名、トラック7台でした。それで帝都全域をカバーしろ、ということ)でしたが、本書では看護婦の体験に焦点が絞られています。空襲による重症の熱傷や外傷などに対して赤チンを塗る、化膿した傷に対しては湧いてくるウジ虫をピンセットで取る、破傷風には麻薬(抗血清はもうほとんどありませんでした)、その程度の「治療」しかできない状態だったところへ、大空襲だったのです。(慶應義塾大学病院では、敷地一坪に一発の割合で焼夷弾の筒があとで見つかったそうです)
  しかし、あたりが燃えていて、でもまだ上で爆音が聞こえる状態で、腸チフスの入院患者を避難させようと看護婦が担架で運んでいるところに戦闘機の機銃掃射を受けた、という体験談には、ぞーっとします(弾は左胸と左腕の間を抜けて、腕の内側に火傷を残したそうです)。戦闘機としては、日本機が上がってこないので全然お仕事がないからせめて地上を撃っておこうジャップを少しでも減らすのは世界平和のためだ、だったのでしょうが、撃たれる方はたまりません。そもそも非戦闘員を撃つのは国際法違反ではありませんでしたっけ?
 ドラマに出演した岸恵子は戦後の映画「君の名は」で「スター」になりましたが、子供の時に横浜空襲を体験していたんですね。大人に放り込まれた防空壕から脱出して公園の松の木によじ登って助かっているそうです(その防空壕は全滅)。
 先日読んだ『死よりも悪い運命』(カート・ヴォネガット)には、ドレスデン空襲がいかに悲惨だったかの話が登場します。で、欧米人にとって「ドレスデン」は悲惨な事件であると同時に「恥」なのですが、それは「白人が白人を爆撃した」からだと彼らが考えているのではないか、というフシがあの本からは感じられます。だとしたら「白人が黄色い猿を大量に殺した」ことは、別に「恥」でもなんでもないことなのでしょうね。




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